私は経験を踏まえて毎日ブログを書いていますが、IT系サイト、医療系サイトなどからのニュースをブログのネタにすることがあります。今回、あり得ない医療ミスが配信されてきました。担当医の指示を受けた研修医が患者本人でない別人のカルテを参照して処方ミス。患者が、施行しようとした看護師に主治医の指示とは違うと言っても、看護師は(研修医が)処方した画面を確認し、そのまま施行。このため、患者が低血糖状態に陥ってしまったというものです。

 

経緯を少し詳しく挙げます。

①患者は、糖尿病合併妊娠(2型糖尿病合併妊娠

②分娩前は、インスリンリスプロとレベミル注し、血糖コントロール中

③糖尿病内科医は、分娩終了後はインスリン中止を指示

④その旨、カルテに記載

⑤患者にも説明

⑥産婦人科医は、患者持参薬(インスリンなど)の服用を研修医に指示

⑦研修医はインスリン投与の入力方法がわからず、その方法を産婦人科医に質問

当該患者の糖尿病内科のカルテを参照し、投与量と表記方法を確認するよう回答

研修医は当該患者ではなく、他の誰かの糖尿病患者のカルテを参照するものと認識

⑩研修医は、別の患者のインスリン投与の指示を参照し、投与量と表記方法を確認

⑪研修医は、分娩前と同一量のリスプロおよびレベミル注の投与指示を電子カルテで入力

⑫看護師は、電子カルテを参照し、指示内容を確認。

⑬夕食前にインスリン投与を患者に説明

⑬患者は、糖尿病内科医からインスリン投与をしなくていいと言われている旨を看護師に伝えた

⑭看護師は、電子カルテ上の指示(⑪)を別看護師と共に再確認

⑮患者に説明のうえ、インスリン投与施行

患者は、気分不快出現
⑰患者の自己判断で血糖測定を実施したところ64mg/dL(
低血糖状態

持参薬のブドウ糖を摂取し、低血糖症状から回復(88mg/dL)

看護師は指示されている通り朝食前のインスリン投与施行

昼食前血糖値が44mg/dLと低値になってしまった⇒産婦人科医報告

㉑電子カルテのインスリン指示が間違い発覚

㉒インスリン投与中止

㉓昼食を摂取し、低血糖症状は解消された

 

幸いにも、障害残存の可能性なしとされていますが、別患者のカルテを見て処方してしまうとんでもない研修医はともかく、糖尿病内科医は指示した相手が研修医であり、且つ電子カルテ上での処方入力方法が分からずに聞いてくるほどだったのにフォローをしなかったのは指導者として不親切。また、主治医である産婦人科医は持ち患が糖尿病合併妊娠であることを気にしていれば、糖尿病内科医がインスリン停止をしてことを電子カルテで確認すべきでした。持ち患カルテに主治医である自分以外の者がアクセスした場合には、その旨を知らせる機能(ポップアップメッセージ)があればbetter。なお、糖尿病内科医から『分娩後はインスリン投与を中止』と聞いているという患者の訴えを聞いた看護師は電子カルテだけではなく、患者の言っていることと指示内容が異なっていることを疑問に思い、糖尿病内科医に確認すべきでした。更に言えば、インスリンの処方をした医師が研修医だったことが分かるはずなので、患者の主張と異なっている場合には、念のため糖尿病内科医に確認すべきでした。『~すべき』では早晩忘れてしまうので、これをサポートするシステムの機能は以下のとおりです。

関係する他の科の医師から持ち患に関する指示があった場合、主治医がそれを確認するために、主治医がエントリしている画面に『患者名:〇〇様に××科◎◎医師からの書き込みがあります』というメッセージがポップアップして表示されるようにします。今は忙しくて見られないということを考慮して、応答には『後で』を選択できるようにします。もちろん、後でと言って忘れてしまうことを考え、当該患者のカルテを見るまではメッセージを表示し続けるという機能です。

 

研修医、主治医、関係医、看護師、それぞれの立場で改善点が必要になったこの病院の再発防止策は以下のとおりです(原文のまま)。

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患者から指示違いの訴えを聴取した際には、立ち止まって内容を確認し、指示の妥当性について疑問が生じた場合は医師や別の看護師にも再確認することを周知した。

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『立ち止まって内容を確認』などという精神論を持ち出すようでは、時間の経過と共に緊張感が薄れ、再発の危険性が増してしまうでしょう。以前のクライアントで患者間違えがあった際の再発防止策を見る機会がありましたが、こんな感じでした。

実効性のない『忙しい時ほど、よく確認しましょう』には笑ってしまいますが、大なり小なりこの程度の常套句で終わってしまうのではないでしょうか。私が、これを解決するために用意した機能は、RFIDによる患者識別です。

 

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