ある病院が、院内のシステムを充実させるために『システム開発経験(目安2年以上)』として募集。それに応募した〇〇さんは、『社内SEとして解析、基本設計、詳細設計などの業務を担当してきた』と記載した業務経歴書を提出、面接を経て採用されシステム開発室に配属されました。しかし全然仕事ができず、試用期間終了と同時に辞めてもらったそうです。〇〇さんは、これを不服として裁判に持ち込んだというニュースが飛び込んできました。

結論を先に言えば裁判所は『解雇しても構わない』とのこと。お試しのニュアンスがある試用期間でも、終了後に自由に解雇することはできないという法的な問題があるようですが、それはともかく、一般常識から言っても看板に偽りありなのでアウトなのは当然でしょう。そもそも、『社内SEとして解析、基本設計、詳細設計などの業務を担当しきた』とした業務経歴書を提出した当人は恥ずかしくないのか?と思うのが普通です。もっとも、面接の際に評価できなかった採用する側にも問題があります。しかし、自治体、病院などにはSEとしての能力を評価できるだけの人がいないのが実情で、そこを突かれたのかもしれません。どの様な仕事をさせてみた結果なのか分かりませんが、試用期間は3ヵ月もあったので、

〇期待した以上

〇期待したとおり

〇期待に応えることはできなかったがまぁまぁ

〇不合格

〇話にならない(論外)

などの評価はできると思います。システム部門があるくらいの病院だし、病院業務をシステムに載せて効率を上げたいという意識を持った経営陣がいることを考えると、この人物は『経歴の虚偽記載』と評価されても仕方がなかったでしょう。

 

あちこちでDXDXと騒がれ、開発要員が足りず、2025年の崖とか壁とか呼ばれている状況なので、売り手市場なのはわかりますが、こういう箸にも棒にも掛からない人物が、仕事をやらせたら分かってしまう業務経歴書を出し『入社してやる!』的な姿勢で偉そうに入って来ることは十分考えられます。

 

思い起こせばバブル真っ盛りの頃、大手SIベンダは人手が不足し、外注から人を派遣してもらってしのいでいた時期がありました。外注(協力会社)は人集めに奔走し、1、2週間の粗製乱造の教育をしてから派遣してきましたが、はっきり言って戦力になる人材は皆無でした。手取り足取り教えつつアシスタントとして使えるレベルにまで引き上げますが、前職を聞いてみると、なんと板前という人まででてきて驚いたことを記憶しています。無責任な派遣元にはあきれるばかりでしたが、猫の手も借りたい当時はそれがまかり通っていました。

 

今回の件は、そこまでひどくなかったようですが、働き始めておよそ1か月半後、能力が不足しているとの理由で、3か月の試用期間が終了した後は本採用しないと通告。能力が不足していると判断した理由は以下のとおりでした。

 

①業務に関する研修等を行ってきたが、当院が求めるレベルに達する見込みがない

②提出された業務経歴書に虚偽の疑いがある

③この状況では、信頼関係を築くのが難しい

④しかし、試用期間終了まではJavaの課題を与えるなど、研修の形で勤務させる

 

これに対し、納得できなかった○○さんは、メールで『これは事実上の解雇通知であると存じます。ついては本日を最終出社として、以後、試用期間終了までの給与を規定どおり支給していただきたい』と伝えたそうです。そして・・・

 

①○○さんはメールした翌週(月曜)に出勤

②仕事をすることなく、私物を持って帰ろうとした

③上司は『このまま帰ると無断欠勤になる』と伝えた

④○○さんはこれを無視して退社

⑤上司は以下のメールをしました。

 ー 試用期間終了までは、就労の義務があり、無断欠勤している状況となる

 - 欠勤なので給与は支払わない

 - Javaの研修機会も与えているので自身のスキルアップのためにも出勤した方がいい

⑥○○さんは、以下の返信

 - 無断欠勤ではない

 - 承服しかねる  

⑦これを踏まえ、病院は○○さんを『7日間の出勤停止の懲戒処分』とした

⑧○○さんは、解雇無効/出勤停止処分無効/賃金を払えとして提訴

⑨裁判所は『解雇も出勤停止処分もOK』と判断

 

雇用契約などの難しい法的な解釈は分かりませんが、裁判所は当然の判断をしたと思います。それにしても○○さんの強気の背景は何か分かりません。穿った見方をすると、

〇最初から嫌がらせをするつもりで応募

〇能力不相応なプライドがある

〇メンツを保つために強くでた

のかもしれませんが、実際に仕事をやらせればすぐわかってしまうのに業務経歴に事実と異なることを書いたことも、能力不相応なプライドのなせる業かもしれません。私も、そうのような業務経歴書を見たこともあり、見破った経験があります。診療情報管理士という誰でも取得できる民間団体認定の資格を持っている人に会ったこともありますが、業務も技術も中途半端でした。どちらかがプロでなければなりません。人材不足にかこつけてこの様な皆さんが応募して来ることに注意しましょう。

 

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