読売オンラインニュースにこんな記事がありました。

日本の市町村の数は、2024/10/1の時点で、市が792、特別区(東京都区部)が23、町が743、村が183、計1741。1800とはどこから持ってきたのか? 四捨五入なら1700だが・・・それはともかく、自治体業務のシステムを共通化しようというものです。総務省のホームページに自治体が行う業務(事務作業)が載っていました。

全国の市町村で同じ業務が行われているはずだし、業務の性質からしてそうでなければならないはずです。同じ業務なら、同じ機能を持ったシステムを一つ作って自治体に配布して使わせれば済むこと。素人でも分かることですが、それが今頃システム共通化をしようというのです。

 

私は、都庁の管理職教育や納入されるシステムの導入検討委員を務めたことがありますが、自治体の歴史を少し調べました。自治体という行政の体制ができたのは、地方自治制度として府藩県三治の制が定められたのが慶応4年明治21年になると、市制・町村制が公布され、本格的な地方制度が創設されました。戦後の昭和22年に新しい憲法と共に地方自治法改定交付され、地方自治体は現行の体制を整えました。ということからすれば77年は経っているということです。77年もの時間があったのに、どうして統一(共有)できなかったのでしょう?統括する自治省(当時)、今の総務省が、我が事と捉えて取り組んでこなかった故の問題だと思います。77年もあれば、ゼロ以前の個別システムの乱立状態からスタートでも十分出来上がっていたことでしょう。政治家は、金にならないので真剣に取り組まなかった?いやいやそうではありません!小渕恵三が総理大臣だった1999年、情報化、高齢化・環境対策などを柱にしたミレニアム・プロジェクトがありました。このうち、情報化政策がe-Japan、電子自治体構想として打ち出された経緯があり、この時にも情報技術(当時はITとは言っていなかった)を使って行政の効率的な運用を図ろうとしていました。しかし、具体的な成果はなく胡散霧消。いつもの看板を掲げ、予算をつけ、何かをやったふりをするというパターンでした。それが、またまたSociety5.0とかスマートシティ、自治体DXなどという呼称で喧しくなってきました。で、再掲すると・・・

こんな感じでやるという計画らしいです。

 

1741の自治体が統一した機能、画面レイアウト、画面遷移、メッセージを含む操作性からなるシステムを使えば、自治体間の情報交換、連携もスムーズになるし、住民サービスは向上し、役所スタッフの負荷軽減に直結することは素人でも分かります。例えば、引っ越しの際に生じる転出元転出先への諸手続きを考えれば容易に理解できるでしょう。そして何より、1741自治体がバラバラにやるよりシステム導入、運用、保守の経費が格段に減ることは自明です。ということは、税金の無駄遣いを減らすことができ、その分を住民サービス向上に回すことができるということになります。しかし現実は・・・

これが実態です。自治体システム統一道険しというタイトルに、やはりと思う人は多いでしょう。もっとも、そう思う(思える)の人は、情報システムの仕様作成の際に行われる業務分析をやったことがある方だけですが!

 

政府は、マイナンバ制度を活用したデジタル社会の構築を目指し、実現に向けて国と地方を通じたデジタル基盤の構築を課題に挙げていますが、2021/5に作った政府が描く工程表は、2022年夏までにシステムの標準規格の仕様書を作ることになっていました。しかし記事によると、関東地方の中核自治体の担当者は『25年度末までの移行は精神論』だと悲観的。また、東日本のシステム開発を担当するSIerは、新しいシステムへの切り替えに『一つの自治体で通常は1年半要する』と言っているし、先の関東地方の中核自治体の担当者は『システム導入基幹は実質3年。全国の自治体が2025年度末に向けて動き出すと、IT事業者の人的資源が足りない』と指摘しています。100以上の自治体に基幹系システムを収めている九州のSIerの担当者によれば、システムの入れ替え作業は、自治体とのやり取りに時間がかかるため、今迄は年に5自治体程度に抑えて来たと証言。自治体との打ち合わせ時間を短縮すると市町村側がシステムを正しく理解できず、間違った使い方、操作をして混乱を招くと言っています。答申した有識者の皆さんは、実際に泥をかぶったシステム構築をした経験がないのでしょうね。


多分、岸田さんが目玉にしたい今回も予算をつけても頓挫することは間違いないでしょう。そもそも、予算を付ければ解決すると思っているところが、間違っています。77年間に積もり積もった汚泥を浚渫する作業から入るべきでしょう。手間がかかり過ぎてやる気になれないでしょうが、誰か進言する側近はいないのか?

 

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