このブログではその時々に起こったことを、技術経験、コンサルティング経験など過去の経験を踏まえた切り口で書いています。例えば、歴代総理や大臣の答弁の仕方は、プレゼンテーションの教育をしてきた経験からその情けなさを書きました。また、連携をとらなければならない既存システムが巨大&多数あるマイナンバのような制度を推進するために必要なプロジェクトマネジメント、具体策などについても言及してきました。水俣病問題の際、熊本大学医学部の実験結果で窮地に陥った政府を救った東工大教授のような御用学者の弊害についても書いてきました。しかし、一般常識しか持ち合わせない刑事事件のような未経験な分野については、的確なコメントができないので書かないできましたが・・・東京高裁で再審となった袴田事件で、差し戻しを受けた静岡地裁で検察が再度死刑を求刑したことを受け、今日は目先を変えて冤罪事件についてのブログにします。

 

袴田事件は57年前ですが、検察とか警察による真犯人ではない人を犯人と決めつけ、決めつけるための自白の強要供述誘導は元より、証拠捏造/証拠隠滅/証拠すり替えまでやってしまう事件はしばしば起きています。その典型である、松本サリン事件/志布志事件/厚生官僚村木事件の3つを検察・警察によるでっち上げ事件として紹介します。

 

松本サリン事件(警察のメンツ事件)

オウム真理教がやった長野地方裁判所松本支部田町宿舎を狙ってサリンを撒いたのが松本サリン事件。7人(後遺症で1名亡くなったので計8人)が死亡し、144人が被害を受けました。犯人にでっち上げられて逮捕されたのが近くに住む第一通報者の河野さん。河野さんを疑い、家宅捜査をした結果、複数の農薬を発見しました。事件当時、煙を見たという近隣住民の話まで捏造した警察でしたが、専門家から発見された農薬ではサリンは作れないとされてしまいました。立場がなくなった警察は、河野さんがサリンが作れる成分を含む農薬を隠しているのではないかとして執拗に攻め立てたました。しかし、河野さんは優秀な弁護士の支援もあって『やっていないものを、やったとは言えない』として突っぱねました。メンツにかけて河野さんを犯人に仕立て上げなければならない警察は、事件当日『不審なトラックを見た』とするオウム真理教に通じる目撃情報を黙殺し、事件発生直後、捜査員の一人が『裁判所官舎を狙ったものではないか』と推測したにも拘わらず聞き入れることなく、無理を重ねて河野さんに自白を強要し続けました。メディアも警察から意図的にリークされてくる情報をそのまま報道、河野さんを犯人扱いする風潮を作り上げたのは記憶に新しいことです。その後、地下鉄サリン事件が起き、オウム真理教信者が実行犯であることが分かりましたが、長野県県警は遺憾の意を表明しただけで、謝罪を拒みました。警察組織というものは謝罪をしてはいけない暗黙の決まりがあるのではないかと思わせますが、意固地な警察に対し、その時の国家公安委員長だった野中広務は、河野さん宅を訪れて直接謝罪をしたのは立派です。『やったと言えば、過酷な取り調べから逃れられる』として警察の長時間に及ぶ自白強要に根負けしなかった河野さんのような方は珍しいかもしれません。

 

志布志事件(警察によるでっち上げ事件)

鹿児島県議会議員選挙で当選した議員の陣営が、鹿児島県曽於郡志布志町(現志布志市)の集落で、住民に焼酎や現金を配ったとして、議員やその家族と住民らが公職選挙法違反容疑で逮捕された事件がありました。鹿児島県警察捜査第二課・統一地方選公選法違反取締本部が、自白の強要や、数か月から1年以上にわたる異例の長期勾留と、違法な取り調べを行ったあからさまな自白強要が行われたことで有名な事件です。当選議員側の関係者が行ったとする買収行為を捏造するために、警察に呼んだうえ、買収をしたとされる関係者の両足を持ち『お前をそんな息子に育てた覚えはない』、『こんな男に娘を嫁にやった覚えはない』、『早く正直な爺ちゃんになって』などと書いた紙を踏み付けさせるという踏み絵ならぬ踏み字を強要。また、買収に応じたという疑いを持たれた女性を近くの交番に呼び出し、『認めれば逮捕はしない』として交番の窓を開け、女性を窓際に立たせて焼酎2本と現金を受け取ったことを認める旨を表通りに向かって『私がやりました』と絶叫することを強要戦前戦中ならともかく、これが2003年の日本で行われたのかと驚くというか呆れます。物証がなかったり、買収金額が変わったりで警察・検察の証拠が乏しく、有罪になることはありませんでした。踏み絵(踏み字)や、絶叫させるという前時代的なことを考え付き、且つ実行してしまった鹿児島県警(志布志警察)は何をしたかったのでしょう?捜査を指揮した警部と当選した議員とは違う議員を支援していた地元の有力者が事前に捜査に入る前に会っていたことがすっぱ抜かれましたが、この地元有力者と20年来の親交がある警部が、何らかの依頼を受けて勇み足で強引に捜査を始めたのかもしれません。事件をでっち上げた警察関係者は刑事告訴され、特別公務員暴行陵虐罪で在宅起訴されました。事件を主導した警部は裁判で、懲役10ヶ月、執行猶予3年の有罪判決が下されましたが、これは警察のメンツ故の事件以前に、完全に捏造の呆れた事件でした。

 

厚生官僚村木事件(検察のでっち上げ事件)

障害者団体が厚労省の担当課が発行した障害者団体証明を利用し、障害者団体向けの郵便料金の割引制度を悪用し、約100億円単位の不正減免を受けていたことが発覚した事件がありました。障害者団体などの関係者が法人税法違反・郵便法違反・虚偽有印公文書作成の罪に問われた障害者郵便制度を悪用した事件です。有罪となったのは当時の厚労省担当課の係長だけではなく、上司だった村木厚子女史が共犯として起訴されました。共犯であることをでっち上げるために検察がとったのは・・・

①取り調べメモを破棄

②証拠物件であるフロッピーディスクの内容を改ざん、

③証拠のでっち上げる

という信じられない手段でした。検事は『私の仕事はあなたの供述を変えさせることです』といって予め書かれたシナリオに沿ったでっち上げた証拠を認めさせるよう迫ったり、『全く身に覚えがない』と容疑を否定し続ける村木女史に、メモすら取らずに『なぜあなただけ記憶が違うのか』、『否認していると刑が重くなる』と自白を迫ったことが法廷で明らかにされました。彼女が驚いたのは、『村木に指示されてやった』、『村木に❝よろしくお願いね❞と頼まれた』など、ありもしないことが書かれていた部下らの供述調書ですが、これも予め書かれたシナリオに沿って作られたウソの供述調書だったわけです。結局、捜査をしていた大阪地検特捜部の担当検事を証拠隠滅の疑いで逮捕。また、彼から証拠隠滅の報告を受けたにも拘わらず、これを隠ぺい、犯人隠匿をした疑いで大阪地検特捜部長、副部長も逮捕され、さらに管轄上級庁である大阪高等検察庁検事長が陳謝する事態になった2010年に判決が出た冤罪事件でした。もちろん、村木厚子氏は無罪


大多数の検察、警察関係者はそうではないのですが・・・こういうことが起きる可能性があることを知っていて損はないでしょう。

 

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