SDGsの目標の一つに、環境に悪影響を及ぼさないクリーンなエネルギーを使おうという取り組みがあります。再生可能エネルギー(Renewable Energy)のことですが、再生可能エネルギの定義は、太陽、地球物理学的・生物学的な源に由来し、利用する以上の速度で自然によって補充され、自然界に常に存在するエネルギー全般を指すとされています。利用する以上かどうかは分かりませんが、自然によって補充されるという点では無尽蔵に降り注ぐ太陽光を使った発電は、再生可能エネルギーの典型です。地熱発電も、地球内部のマグマという自然によって供給され続けるので再生可能エネルギーです。潮流、風力による発電も同じ理由で、再生可能エネルギーです。火力発電は、石油や石炭、天然ガスといった有限な資源を使うという点で、いくら燃焼効率をあげようと、CO2削減策を講じようと、再生可能エネルギーにはなりません。電気事業連合会のホームページに、資源エネルギー庁の電源別の発電量の推移が載っていました。よく見ると福島原発事故の影響か、2011年~2013年までのグラフがありませんが、それまでの原発による発電は30%前後もありました。


東日本大震災で全電源停止し、冷却手段を失ったまま核分裂反応をし続けた福島原発が高温に耐えきれずに爆発したのは2011/3でした。

都合の悪いことは起きないという安全神話が崩れた瞬間でしたが、2014年は原発による発電は0となっています。しかし、その後徐々に上がってきて2021年は7%まで回復、岸田首相は再稼働する原発を増やすと宣言しています。

その理由は、休止中の原発設備を使えば新たな投資なしにCO2を出さない電力が得られ、SDGs、脱炭素社会の実現に向けた対応策となるということのようです。CO2を出さない代わりに放射能を出すことを忘れているようですが、福島原発で痛い目に遭った日本なのに十分な反省がないように見受けます。

 

そもそも原発の安全性については、国会でも議論があり当時の安倍首相(第一次安倍内閣)は、世界に冠たる安全性を持つ我が国の原発が壊滅的な事故を起こすことはなく、冷却用の電源は幾重にも確保されているという説明をしていました。しかし、全電源を喪失あり得ないとされた炉心溶融まで引き起こしてしまったのは、衆知のことです。しかも、爆発した原子炉の後始末には19兆円でも足りない状況。予算以前に安全に後始末する技術的は方法が見つかっていないという絶望的な現状があります。

 

日本には、SDGs、脱炭素社会の実現に向けて世界第3位の地熱というエネルギー源があります。また周りを海に囲まれ、山も多く風も強いため、潮流発電、風力発電も有望、太陽光発電パネルも以前は世界一の生産量を誇った実績もあります。地震大国の日本には、原発を主要電源とする政策は合わないことを示した東日本大震災と福島原発事故が政策立案の教訓にならないのはどうしてでしょう?原子炉からでるプルトニュームを使って原爆を作りたいというバカげた野望でもあるのでしょうか?

 

情けない政治家しかいない日本に対し、ドイツは違いました。福島原発事故を見て、万全の策を講じても万が一の際になにが起こるかを理解したドイツのメルケル首相は、ドイツの電力確保に原発を入れないことを決断しました。そしてその政策を採ってから12年後の2023/4に最後の原発3基を停止し、脱原発を実現しました。ドイツの電源別発電量の推移を調べると・・・以下のとおりです。

これを電源種類別の比率を示したグラフは以下のとおりで、原発による供給電力は2023年には1.4%まで減少しています。

そして遂に、完全停止に至りました。

福島原発事故がきっかけになったのか?というとそうでもないようです。2000年に29.4%だった原発比率が、福島事故は起きる前の2010年には22.2%に下がってきているのは、既に地球温暖化が議論されていたことを反映し、エネルギ―政策の見直しを始めていたのかもしれません。それが、2011年の福島原発事故で原発に完全に見切りをつける判断をし、2023/4まで13年かけて全廃にこぎつけました。この間の原発による発電量を補ってきたのが、再生可能エネルギーであることも上のグラフから読み取れます。それにしても再生可能エネルギーによる電力供給の比率が、2000年に6.6%、2010年に16.6%、2015年に29.2%、2020年に44.4%、そして2023年には52.0%の伸びを達成したドイツ政府というかメルケル首相の有言実行ぶりには驚きます。日本の政治家にメルケル首相のような人物が現れて欲しいものですが、二世三世議員がのさばっている現状では・・・

 

政府は、再生可能エネルギーの主要電源化を掲げてきましたが、具体的な施策なしに時間だけが経過し、停止中の原発再稼働という安直な方針を打ち出しました。ひょっとしたら、世界の潮流に合わせて再生可能エネルギーの主要電源化を掲げ、体面を取り繕って見せ、最初から原発再稼働方針だったのかもしれません。確固たる方針を立て、それを実現する実行可能な計画を立て、着実に成果を出してきたドイツ、ドイツの政治家とそれを支持する国民を羨ましく思います。

 

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