ブログのネタ探しをしている私にとって、ブログを書くきっかけになる配信されてくる様々なニュースはありがたい存在です。もちろん、それは私の経験してきた知見から論評できるものに限ります。今日は、統計リテラシーのない上司ほど惑わされる3つの誤解なるものが舞い込んできました。書いたのはいわゆる実務経験のないコンサルタント。なんでも、ビジネスパーソンの知的生産性向上をライフワークにしているそうです。例によってコ~すべき、ア~すべきというご神託を並べますが、具体的で実行可能な解を示せないのが彼らの常です。統計リテラシーのない上司ほど惑わされる3つの誤解を解説するという今日のブログのテーマにします。

 

彼は3つの誤解と、どこが誤解かを説明しています。

誤解1 ツールが結果を出してくれる

    ⇒ツールが勝手に期待するアウトプットを出してくれると思っている人が多い

誤解2 データは多いほうが良いに決まってる

    ⇒データが“宝の山”になるためには、課題解決のための筋道が出来上がっていることが前提。

             それがないうちは、膨大なデータは宝の山ではなく“ごみの山”

誤解3 統計の知識は不可欠

   ⇒そんなことはありません。ビジネスで使う最低限の知識で十分

 

読み手としてどのような皆さんを想定して挙げているのか分かりませんが、彼が誤解としているのが間違いであることを説明します。

 

《誤解1の間違い》

何が問題で、どんな結果を欲しいのかの条件をあたえなければ、いくら優れた機能を持つツールがあっても期待する結果は出てこないというもの。当たり前すぎていますが、このコンサルタント、その程度のことが分からない方々を相手にしているのならともかく、そうではない皆さんを相手にしてきているはずなので、この説明は陳腐です。切れる鋸や鉋があっても、それで何を作るのかが分かっていなければ無用の長物だし、使いこなせる腕を持った大工がいなければなりません。木工用のNC旋盤があり、それを使えばベテラン大工同様な仕上がりになるかもしれませんが、そのNC旋盤に加工データを与えなければ何もできません。要するに、問題意識を持っているか、具体的な課題を抱えているか、解決したと思って模索しているかが問われるということです。

 

《誤解2の間違い》

記事のタイトルには統計リテラシという言葉が使われていて、『データは多いほうが良いに決まってる』という上司は、リテラシを持ち合わせていないという主張ですが、それは評論家であるあなたの間違い!大数の法則を持ち出すまでもなく、前提条件として統計に関する基礎的な知識を持っている皆さんなら『データは多いほうが良いに決まっている』と言うのは当然です。この上司は統計リテラシがないとされていますが、常識を持っています。誤解ではありません。何を知りたいか、どんな傾向があるかを知りたいために、あるいはどんな因果関係があるかを知りたいために統計分析をしようとする目的がある皆さんにとっては、データが多いことに越したことはありません。もちろん、季節変動などの外乱要因を外すことはいうまでもありません。過去の延長線上で語れない事象が起きた場合の外乱要因も考慮しなければなりません。過去にはニクソンショック、石油ショック、湾岸戦争、リーマンショックがあり、最近ではロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのパレスチナ殲滅作戦があります。

 

《誤解3の間違い》

統計の知識は不可欠ですよね?に対して、『そんなことはありません』とは随分大胆なことを仰るコンサルタントですねぇ~!でも、次に『ビジネスで使う最低限の知識で十分』とのこと。やはり必要なんです。『そんなことはありません』と言って安心させて、読ませようとする作戦かもしれませんが、このコンサルタントが相手にしているのは、経験と勘で経営していた時代の皆さんではないでしょうか?統計分析の専門家が登場するまでもなく、義務教育で習った統計の知識で十分なことは多々あります。OSの設計に転属する前に在籍した事業所では、冷凍空調に関する技術計算の他に、品質管理の統計計算をしていましたが、この時要求された統計の知識はせいぜい標準偏差、分散、相関分析程度であり、高校のレベルで問題ありませんでした。

より専門的知識が要求されたのは、石油ショックの際に先行指標を見つけるよう指示があった時に使った多変量解析でしたが、OSの設計に回り、その後コンサル稼業に転職した以降、高度な統計知識が必要になったことはありません。小売業(ディスカウントストア)のコンサルをしていた際、POS情報の分析、売れた商品の相関分析、特売の効果分析なども行いましたが、高度な統計知識を使うことはありませんでした。実際に業務の第一線でそうなので、経営層はなお更のこと難しい統計知識は不要です。経営層に必要なのは、統計のHowtoではなく、統計的な物の見方(What、Why)です。傾向、その傾向が一時的なものなのか、今後も続く可能性があるのか、あるとしたらどの位の割合で影響してくるのか等につき、思いをはせるというか、どうなっているのか?を気にすることができれば問題ありません。具体的な処理は、それを専門とする部署に任せればいいわけです。

 

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