このブログでは、ブームになってきたもの、今ブームになっているものを実務経験に基づいて評価してきました。古くはOA、FA、SA、SIS、ISA、その後マルチベンダ、クラウド、働き方改革、ビッグデータ、データサイエンティスト、AI、生産性向上、DXなどがそれに該当します。ブームが去ると、検証せずに、次のブームに乗り換えるという繰り返しです。乗せられやすいのは、軸が定まらず、確固たる方針を持っていないことが大きな要因(国民性?)ですが、煽る専門誌、メディアも問題です。メインフレーム時代は、それなりの記事を書く記者がいましたが、今や専門誌の記者かと思う記事を多数見受けます。センセーショナルなタイトルにしないと目を引かないし、惹きつけておいて表面的な理解の稚拙記事を見せる。誘蛾灯に吸い寄せられる蛾のように、タイトルに惹かれて読む読者も中身を評価できるほどの知識、経験がないので、分かった気になる低レベルのwinwin。斯くして付和雷同にブームに乗せられてしまいます。DXがその典型で、成功事例、成功要因などというタイトルの記事が頻繁に配信されてきます。今日も製造DXの4つの成功要因というタイトルの記事を見つけました。そこには、成功要因とやらが書いてありました。

 

ワナを避けるために
成功要因(1):悩みから始めるDX
成功要因(2):人間業を超えるDX
製造業の特性を生かすには
成功要因(3):柔軟なDX
成功要因(4):草の根DX

 

実務を知らない頭でっかちの評論家らしい切り口ですが、製造業各社は1990年前後に取り沙汰されたISAを定め、統合情報システムを指向し、戦略情報システムを構築するよう計画的に動いてきたのでしょうか?CIOは機能していたのでしょうか?名ばかりのお飾りCIOになっていなかったでしょうか?

 

1990年前後には、既にCAD、CAM、CAE、それらを統合したCIMComputer Integrated Manufacturing)という概念があり、具体的な成功事例が出ていました。ベースとなるハードウェアがメインフレーム中心から、サーバ、パソコンをネットワークで結ぶ構成に変わってきましたが、CAD、CAM、CAE、それらを統合したCIMが、製造業における統合情報システムの肝であり、間接部門のBPRとそれを踏まえた電子化(情報システム)を併せれば、今でいうDXに他ならないことを経営層、CIOは理解しているのでしょうか?CAD、CAM、CAE、それらを統合したCIMの概念を理解し、計画的に整備して来た製造業種の企業は、DXDX、DX化に乗り遅れるな等と慌てなくても、既にやってきたことなので、

などと、監督官庁が旗を振っても、『DX、今はそう言うのか』と平然としていられることでしょう。そもそも官僚の中でも優秀な方とされたはずの経産省の官僚が、過去には2000年問題、ソフトウェアクライシスなどと騒ぎ、2025年の崖と言い出し、DXDXとお題目を唱えています。しかし、彼らは喉元過ぎれば熱さを忘れるの伝で、過ぎてしまうと反省なく、またぞろ次の目玉を捜しだしては、危機感を煽り、仕事をしているフリをしています。

 

製造業の皆さん、踊らされずにISAを作り、全員で意識を統一してから統合情報システム構築を目指してください。CIOはその具体的な指揮をとり、CEOに必然性を説明し、予算処置をしてもらいましょう。そして情報システムだけに目を向けるのではなく、基本に戻りましょう。そうです、製造現場の整理/整頓/清掃/清潔/躾の5Sです。

整理⇒不要なものを処分する

②整頓⇒必要なものを使いやすい場所に置く

③清掃⇒きれいに掃除して点検を行うこと

④清潔⇒清潔な状態を維持すること

⑤しつけ⇒①~④が自然に行われるようにすること
精神論的かもしれませんが、この基本動作が強制されることなく、フォローする必要もなく、自然に行われる職場の雰囲気が醸成されてくれば、QCサークルに代表される小集団活動も活性化し、無理無駄を省いた仕事の仕方が現場から提案されるようになるはずです。

とかく、製造現場を忘れた情報システム開発が行われ、現場はトップダウンで『これを使え』とされるのが現状です。そうではなく、ボトムアップ(インサイドアウト)でこそ、ブームの乗った一過性の線香花火で終わらない地に足のついた全社的な運動になり、継続的な改善改革が行われるはずです。それは取りも直さず、統合情報システム(今風で言えばDX)を構築する原動力になるでしょう。

 

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