先日、こんなものが舞い込んできました。

無定見にDXブームに乗り、統一なく属人性満載で粗製乱造されたもの(システム、ツール)が溢れ、収拾がつかなくなる懸念にようやく気が付いてきたのかもしれません。いわゆる野良アプリですが、これはOAブームの際、EUC(End User Computing)、EUD(End User Developing)が叫ばれていた時にもありました。当時はパソコン黎明期であったこともあり、晴海の会場で開かれた当時のビジネスショウ、データショウはOA一色だったことを思い出します。EUC、EUDをサポートするツールが多く出典されていましたが、斯くいう私も開発したCASEツールのプロトタイプの説明員として参加していました。この時は、コンピュータの素人でもちょっとした業務をコンピュータに載せることができるということに知恵を絞っていましたが、これはDXブームの今、叫ばれているローコード、ノーコードツールと同じことです。で、OAブームが去るとあちこちにメンテされなくなり、使われなくなったシステム(とは呼べないが)の残骸(野良アプリ)が残されました。

 

どうしてそうなった?それは統一したシステム整備方針なく属人的な方法で、思いついた時思いついた順に身の回り目の届く範囲内の業務(作業)をコンピュータ、パソコンに載せてしまったからです。従って、作った人しか仕様が分からず、本人が異動していなくなるとメンテできなくなってしまうということです。仕様が分からないので、業務内容の改変があった際に追随できず、使えない!そして野良アプリとなってしまうわけです。

 

上掲のニュースは、その様になってしまう属人性を排除するためのツールの紹介ですが、これはツールで解決する問題ではなく、CIOの様な立場の人が、CEOと連携してISA(information system architecture)を作り、それを社内、組織内で徹底することで解決しなければならないことです。今、ISAと言っても分からない人の方が多いでしょうが、声高にSIS(戦略情報システム)が叫ばれていた1980年代後半~1990年前半は、この方針に基づいて整然とシステムを作ろうという機運がありました。

 

浮ついたDXブームに踊らされないためにも、ISAについて理解を深めてをおくことはとても重要です。大所高所な概念から細かな部分まで様々なレベルでのISAがありますが、簡単に紹介します。

《大》
・経営に寄与する情報システムとは何かを定義する
・外部ベンダに委託するか自社でまかなうか
・自社でまかなうとした場合、どこまでにするか(企画/設計/開発/教育/保守)
・外部ベンダに委託する場合、ベンダを固定するか、マルチベンダにするか

・最終形の絵を描く(相互に連携のとれた統合情報システム)

《中》
・パッケージの採用か、スクラッチ開発か

・開発支援ツールの利用可否、利用範囲

・開発支援ツールの選択

・仕様書の書式統一

・業務改廃変更時の仕様書、コードとの同期方法

・デザインレビューの方法

・オンプレミスか、クラウドか
・ソフトウェア(ネットワーク、データーベースetc)
・ハードウェア(サーバ、パソコンetc)
・OA、PA用ソフト(文書、プレゼン、表計算、メール、グループウェア、ブラウザetc)
《小》
・メールの形式(社内、社外)
・文書はA型かB型か
・縦書きか横書きか(文書種類毎に設定するか)
・1行辺りの文字数
・1頁当の行数
・文字のフォント、サイズ
・項番の振り方
・画面のレイアウト(色、ボタンの配置、メッセージの出し方、応答方法etc)

軽重問わず、順不動で挙げるとおおよそ以上のとおりです。


企業、自治体、医療機関などの組織は、ブームに乗らず、また思いつきや必要になった都度導入するのではなく、経営中枢とシステム企画部門は指針であるISAを最初に作るべき!これに沿って整然とした情報システム整備を目指すべきでしょう。監査法人時代の経験では、上場企業でもこれを定めていないところがありました。基幹システム再構築の相談に乗った企業でもそうでしたが、この企業には基幹システムの定義も含め最初にISAを作ることを勧めました。このことにより、属人性を排除した統一のとれた情報システム群が整備され、最終的に企業活動全体をサポートする統合情報システムが完成します。

※質問はosugisama@gmail.comにどうぞ!

※リブログを除き、本ブログの無断転載、流用を禁じます。