小林製薬の紅麹サプリが腎臓にダメージを与え、死亡者も出た事件が発生しました。この事件をきっかけに、気軽に飲んでいる機能性食品と表示されているサプリメントは問題ないのか疑心暗鬼が生じています。小林製薬の紅麹サプリは、大阪公立大代謝内科の庄司教授が2018年に書いたプラセボも含めて効果の検証を行った論文を根拠としているもので、有意な効果はあり有害事象は起きなかったと事件後の取材に答えていて自信はあるようです。しかし一般的に、機能を検証したという書類や論文を添えて申請するだけで信憑性の審査もされずに、機能性表示食品との表示が許可される食品は一定の確率で普遍性を持った効果を得られるのでしょうか?

 

紅麹サプリは、上述のように然るべき研究者が発表した論文を根拠にしていますが、審査をしないことを隠れ蓑にした怪しげな効果をうたったサプリメントもありそうです。二重盲検のような厳密な裏付けを行い、多数の被験者を募って10年近くもかけて行う治験を経て認証される薬ではないので、どこまでを検証すれば良いのか分かりませんが、効果の検証をアンケートで行っているものは専門的な見地から言えば、疑った方が無難だというのが、私の見解です。アンケートではなく、口コミとか評判をアピールするところも同じです。

 

高齢化社会になり、足・腰・膝にガタが来ている方々が増えていますが、この市場に向けたサプリメントが多数でています。家内が大学病院の整形外科で股関節置換の手術を受け、リハビリに通院していますが、担当の整形外科医にこの様な効能をうたったサプリメントは効くのでしょうかとうかがったところ、『患部に注射したり、湿布薬を貼るなどなら分かるが、飲んだものが膝などの効いて欲しい特定の部位に到達して効くという機序が分からない』と即答。我が意を得たりでした。

 

彼らのホームページをみると、何万人もの人が効果を実感しているとか、効いている感じがすると言い、リピート率も80%以上”などとアピールしています。みんながそうなら試してみようかとなり、半額程度で試せるキャンペーンに誘われて期待を以て飲み始めます。そこで、『良いでしょう、効くでしょう』などと聞かれると何だか効いた気がしてきます。これはプラセボ効果と言われるものかもしれません。プラセボ効果とは、効果のない薬(偽薬)を最先端の特効薬と患者に信じ込ませて使うと治ってしまうことがある気のせい効果です。上述の整形外科医が言った論理的なことではなく、発売元のアンケートには、実際に飲んでみて効く、効いている気がする、スタスタ歩けるようになった、散歩が楽しみという人が多数いて、効いている裏付けとしてリピート率が高いなどという情報を得て、同じものを飲んでいる自分も❝効いてくるはずだ⇒効いてきた気がする⇒効果を実感した❞ということになっているのかもしれません。まさに、プラセボ効果です。しかし、プラセボでも何でも効果を実感できるようになれば成功です。その結果、どうなるでしょう・・・そうです、止めると元の痛みが出てくるのでないかとなり、そのサプリメントを飲み続けることになるわけです。結果、サプリメントを製造販売する会社は安定した売り上げを確保できるという寸法です。もちろん、winwinな関係で満足し合っているなら結構ですが、催眠商法的なサプリメントには十分注意した方が無難です。

 

もう一つの注意事項です。
クライアントだった全国有数の眼科病院での出来事でした。電子カルテを含む統合情報システムを開発していた関係で、頻繁に病院に滞在していました。ある時、緑内障の権威である大学教授の診察日にたまたま居合わせたことがあります。検討中の仕様を画面に表示させて外来婦長と検討をしていたところ、先生が通りかかり『いや~こんなことがあるんですねぇ~』とのこと。話を聞いてみたら、緑内障の患者に様々な検査結果を踏まえて処方している薬が効ない、お薬手帳を見ても他科で処方されている薬との相性も問題ない・・・どうしてなのか思案。ふと思い立ち、患者に『何かサプリメントを飲んでいますか?』と聞いたところ、脳の活性化に良い、認知症予防に効くという触れ込みのイチョウの葉エキスを飲んでいるとのこと。それが原因で効果が出ていないのかと思い、患者にしばらくの間、イチョウの葉エキスを止めて欲しいと要請。一ヶ月後の翌月の検査で、先生が処方した薬の効果が出ていたとのこと。

 

先生が患者に

『イチョウの葉エキスが効きを阻害している可能性があるから止めて』と言ったのか、

『処方した薬の効果を高めるために止めて』と言ったのか、はたまた

『処方した薬の効果を確認するので、一旦止めて欲しい』と言ったのかは不明ですが、緑内障の権威者である先生がそう言うならということで『イチョウの葉エキスを止めると緑内障の症状に改善が見られるかもしれない』という期待が、ある意味でプラセボ効果になったか、権威ある人からの指示に従うと良いことがあるに違いないというピグマリオン効果が出てのか分かりませんが、その患者の緑内障症状は改善されたということです。

 

以上、安易にサプリメントを飲まないことの理由を紹介しました。参考になれば幸いです。

 

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