1980年後半から1990年初めにかけ、バブル景気を反映してかメインフレームの黄金期でした。メインフレームと言っても知らない人が多数を占める今ですが、大型冷蔵庫のような大きさの箱(コンピュータ)が空調の効いた専用の部屋(電算室)に何台も置かれいた大型コンピュータのことです。

002 大型汎用機はどれも同じなの? | オープンメディアITブログ

空調は大量の熱を発生するメインフレームコンピュータを冷やすために必須な設備でしたが、高性能なほど発生する熱量が多く、空冷ではなく水冷が使われることもありました。それほど熱の対策が重要だったのが、当時のコンピュータ。運用するのは、専門教育を受けた要員からなる情報システム部門でした。

 

最初に手を付けたのが給与計算のような大量一括処理が得意なコンピュータ向けの業務でしたが、そのうち人手を費やしていた生産管理、それをサポートする部品展開、在庫管理、発注管理、出荷管理業務がシステムに載せられてきました。効果の出やすい業務だったのが製造業の生産現場だったからです。自動製図機など、周辺機器の充実と共に、次に目が行ったのが設計部門でした。製図版、T定規、三角定規、コンパスなどを使っていた設計業務を、画面上で行うCAD(Computer aided design)の登場です。

T square ruler スケッチ用T定規-日々是水彩くどうさとし Watercolor

 

CADの結果得られた製造に必要な加工情報を工作機械に送り、実際の製品の加工を行う(製造する)CAM(Computer aided Manufacturing)も登場しました。この二つを併せてCADAM(キャダム)と称していたのが、1985年くらいのことです。コンピュータの性能向上、周辺機器の充実から、実際に物を作らず(試作せず)にコンピュータ上でシミュレーションするというCAE(Computer aided enginering)がでてきました。CAEという言葉がまだない1974年、自動製図機を使ってよりきれいに研磨できる機械の構造を数式化してシミュレーションをしたことがありますが、これが自動製図機ではなく画面になり、シミュレーション結果を得るまでの時間も大幅に短縮されました。

 

CAD、CAM、CAEと来ましたが、これらを統合した概念としてCIMComputer Integrated Manufacturing)が登場しましたが、個々の業務のシステム化ではなく、最初に大きな方針があり、その方針を具現化する個別システムがあるという統合情報システムの概念がでてきました。これは、当時言われていた経営戦略を支援するためのシステム=戦略情報システムを整備するための目標でもありました。包含関係で言えば、個別システム(CAD、CAM、CAECIM 戦略情報システム 統合情報システムということになるでしょう。最初にコンセプト(全体構想、設計)あり!です。設計図なしに家を建て始めることはできませんが、情報システムに関しては台所を作り、トイレを作り、風呂場を作るという作業が先になっていたと思います。

 

包含関係で示した最上流は統合情報システムという概念ですが、これが当該組織に於ける全体を俯瞰した情報システムです。最終的に統合情報システムが完成するよう予算、時間、優先度を勘案しながら、それを構成する要素としての個別システムを整備してゆくことになりますが、これが取りも直さず今でいうところのDXを実現することになるわけです。オッとDXの前にERP(Enterprise Resource Planning)がブームになったことがありました。企業の持つ資金や人材、設備、資材、情報など様々な資源を統合的に管理・配分し、業務の効率化や経営の全体最適を目指し、そのために必要な機能を持った情報システム群のパッケージという位置づけでした。これも、大きな括りで言えば、統合情報システムのコンセプトに包含されます。

 

派閥力学が効き、消去法で首相になった感のある岸田さんが目玉としている政策の一つだからでしょうか、付和雷同にDXが連呼されています。しかし今まで述べ来たことを読み、理解していただいた読者の皆さんは、統合情報システムという概念と同じだということが分かると思います。医療DX、自治体DX、何とかDXなど、全ての業界業種にDXを付けて騒いでいますが、統合情報システムのコンセプトを理解して、計画的にシステム整備をしてきた企業、組織にとっては、DXブームに踊らされることなく、迎合する必要もなく、冷静に対処しているはずです。

 

※質問はosugisama@gmail.comにどうぞ。
※リブログを除き、本ブログ内容の無断流用を禁じます。