次々と好景気が続いた昔、どんな言われ方をしていたのでしょう。1964年に開かれた東京オリンピック需要での一時的な好景気もありましたが、記憶している景気の名称を挙げると以下のとおりです。

①神武景気(1954/12~1957/6)

②岩戸景気(1958/7~1961/12)

③いざなぎ景気(1965/11~1970/7)

④バブル景気(1986/12~1991/2)

 

この好景気と転職とどのような関係があるのかと思われる方もいると思いますが、この好景気を反映してより待遇の良い企業へ転職する・・・などとは考えず、定年まで勤め上げ、退職金と年金をもらって恙なく余生を送るという安定志向が主流でした。先が読める時代だったのかもしれません。

 

しかし・・・1980年代前半から後半にかけて、様々な求人雑誌が創刊され、TVのCMが出てくるようになりました。

創刊が相次いだ背景には、我々一介のサラリーマンには分からないニーズ(マーケット)を感知した皆さんがいたのでしょう。この時代、私はSEへの技術支援をしていましたが、北京駐在持に知り合った商社マンからの紹介ということで、ヘッドハンタから会社に電話がかかってきたり、自宅に手紙が来て、転職を勧められました。全くその気はなかったものの、好奇心を刺激されて会ったことがあります。会社近くの喫茶店で会いましたが、仕事の内容/待遇など、なかなか魅力的なものがありました。共通しているのは、業務経歴者書が欲しい、転職希望の友人がいたら教えて欲しいというものでした。もちろん断りましたが、ヘッドハンタとしての弾を仕入れたかったのでしょう。定年まで同じ会社にいるという発想が崩れ始めた頃だったかもしれませんが、当時は名の通った会社に入り、そこの社員でいることがステータスの時代で、結婚するときの有利な条件の一つでもあったこともあり、転職には家族、親の強い反対があった時代でした。

 

時は移り、今や転職を勧めたり煽るCMを多数見かける時代になりました。

こんなキャッチフレーズに煽てられて転職し、転職先での居心地が悪くなると、また転職をするという安易な職業観の持ち主も出現していますが、全国紙にこんなタイトルの特集が組まれる時代になりました。

記事を読むと、リクルートの新人・若手早期離職に関する実態調査によれば、『会社を辞めたいと思ったことがある』と回答した者が、58.8%いるとのこと。もはや、定年まで勤め上げるという考えは古くなってしまったのかもしれません。『年功序列で順番が回ってくるのを待って何十年も働くのはバカバカしい。若いうちに稼げるスキルを身につけたい』というなるほどと思う理由を挙げる向きもあります。

 

しかし、稼げるスキルとは具体的に何かを明確にし、それを身に着けるために何を何時までにしようとしているのか、時間的予算的に耐えられるか、継続的に努力できるかについて考えているのかどうかが気になります。無責任な情報が飛び交うSNS全盛の時代、これらの情報をみて同感したり、背中を押されたりして地に足がつかず右往左往する浮草のような根無し草達が増えないことを願います。悪い意味での転石苔むさず(A rolling stone gathers no moss).という言葉を理解して欲しいものです。

就職専門誌は、一昔前の、❝今の会社が嫌で転職したい(逃げたい?)❞というネガティブな転職動機ではなく、今は、❝自己実現のため❞に転職するという人が増えていると分析しているようですが、自己実現という言葉を正しく理解しているのかどうか気になります。自己実現とは内面的欲求社会生活において実現したいという考え方で、物質的欲求が満たされたあとに発せられる欲求と定義されていますが、この自己実現という言葉を現実逃避のために安易に使う若者が多くなっているのではないかと感じることが多々あります。

 

石の上にも三年という格言があり、ベストセラになったノートルダム女子大の渡辺和子学長の書いた置かれた場所で咲きなさい

大きな文字で読みやすい 置かれた場所で咲きなさい

と言う本もありましたが、含蓄のある言葉です。しかし、どこで咲くかは自分で決めるという、自己実現を図ろうとする人もいます。この気概こそ咲くために必要なものではないでしょうか。目標を持ってその実現のために転職をするのは大変結構ですが、水もない痩せた土地に置かれないよう(行かないよう)な選択眼が必要です。今の時代だけではなく昔からそうですが、瞬間的な待遇、見せかけの待遇に目を奪われない、甘言を心地よいと感じないだけの自分の能力、可能性を知る自己評価眼が求められます。

 

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