ストックしてあるブログ用のネタを入れてあるフォルダをツラツラ眺めていたら、こんなものがありました。

2011年のものでしたが、長年の経験から全く同感するものです。今は更に正しい日本語を書けない人(SE)が多くなったと実感しているので、今日のブログに取り上げることにしました。

 

書いたのはシステム構築の実務経験はないものの、業界をよく知っていると思われる日経コンピュータ編集委員でしたが、実態を憂いたものと思います。実際、SNSなどを見ているとまともな文章が書ける人は少ないことを実感しますが、13年も前からそれを取り上げるほどのレベルだったことが分かります。そもそも、SEは顧客のニーズを聞き出すヒアリング力があり、それを文章にまとめるドキュメント力がないと務まりません。更にいえば、プレゼンテーション、ネゴシエーションの力も必要になります。つまり基本リテラシ®(商標登録済み)が必要な職種です。こんな紹介がされていました。

生産性向上の名の下で0ベースでシステム開発するスクラッチ開発ではなく、お仕着せの業務パッケージを当てはめるシステム導入が主流になってからというもの、上述のような本来備えるべきSEの力は目に見えて落ちてきました。家を建てる大工に例えれば、ノコギリ、カンナ、ノミ、曲尺などの道具を使いこなし、刃も自分で砥げる大工が材木の性質を知って家を建てる本物の大工ではなく、機能毎に部品化されたパネルを組み合わせ、ボルトナットで締めて家を建てるプレハブ大工になったのと同じ現象です。

SEはプレハブ住宅を建てる職人と同じなってしまいました。システムを作る肝心の仕様書を作る必要がなくなれば、ヒアリングもドキュメントの力も要求されません。結果として能力は磨かれず、磨く機会もなくプレハブSEになってしまいました。もはやSystem Engineerとは呼べる能力を持ち合わせていません。残念なことですが、System Engineerと呼ばれていた時に要求されていた仕事はを再掲すると・・・

業務パッケージを当てはめる時代になると、こういう能力はあまり必要とされません。なにしろ業務パッケージという出来合いをボルトナットでつなぎとめるプレハブSEなのだから!私は、このようなSEに仕様を取りまとめることなどできないので、第一線にいて業務を知り尽くしている現場の皆さんに基本リテラシ教育を行って現場SEとした方が手っ取り早いと考え、実施してきました。

その結果、仕様書を書けるようになりましたが、例えば、外来の看護師が作った手術の決まった患者に書いてもらう手術承諾書はこんな感じです。

何をしたいのか、するべきなのかを一番知っているのは、日頃業務に携わっている自分達であるという自覚と、それを文書化する(仕様書を書く)文章を始めとする表現力があれば、力の落ちたSEに頼むよりはるかに正確に、ポイントを突いた仕様書が出来上がります。

あるところで現場発システム開発の講演を頼まれましたが、質問がでました。『どうして専門家であるSEに任せずに、現場を教育して現場SEにしようと考えたのか』・・・それは既に説明してきたように、まともなヒアリング能力なく、文章も書けない今時のSEには任せられないから!と即答しました。

なお、基本リテラシとは、国税庁の税務大学校で教えている時にそれまで講義していたヒアリング、ドキュメンテーション、プレゼンテーション、ネゴシエーションを総称して基本リテラシと呼ぶことにしたもので、商標登録もしました。

自分の考えを人に伝える方法には、会話と共に文書があります。会話は相手がその場にいるので、誤解なく伝えられたかとか、相手の理解度、反応に応じて話し方を変えることができますが、文章の場合には、それができずいわゆる独り歩きをしてしまいます。正しく理解されていない場合でも、傍にいないので確認のしようがなく、訂正や補足説明ができません。文書は人のいないプレゼンテーションなので、誤解されない表現しなければなりません。ましてや仕様書は誤解のないよう正確に分かりやすく記述されていなければならず、そうでなければ必要な機能を実装したシステムはできません。それを多数の事例を見聞きして来た日経BP編集委員は感じ取ったので、この記事を書いたのでしょう。

文章、とても大事です。

 

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