情報システム、コンサルに長年携わってきたので、英語もしくは短縮形の英語(英字?)には慣れている方ですが、最近のカタカナ語の氾濫には、ちょっとついていけません。今日はカタカナ語を取り上げます。

 

キャリア、スキル、ノウハウなど、もはや日本語化してしまい、知識、経験、技術などと言い換える方が不自然になってしまっている言葉もあります。なんだかその方がスマートな気がするせいもありますが、かっこ良く見せるという面もあると思われます。ケースバイケースも似たようなものですが、これを普段使っている場合によるという意味で使うと英米人には伝わりません。彼らネイティブには、It depends on~というべきでしょう。オッと、ネイティブと言ってしまいました。その言葉を母国語とする人たちという意味で使っていますが、これも日本語化してしまった英語単語の一つです。しかしクレーム同様、かなり浸透している言葉ではあります。

 

苦言、苦情、文句という意味で使っているこのクレーム(claim)、要求する/主張するという意味で、苦言、苦情という意味で使うには、complaintを使わなければなりません。claimを苦言、苦情、文句という意味で使っていると、空港などの手荷物を引き取る場所をいうbaggage claimの意味が分からないでしょう。この場合のclaimは、機内も持ち込めずに預けておいた荷物を渡してもらう返還を請求をする場所という意味になります。日本ならクレームをつけると言う日本語になっているので通じますが外国ではclaimではなくcomplaintを使わないと意図が伝わりません。

 

この他、アジェンダ/アライアンス/フィードバック/アサイン/ベンチマークなどもコンピュータ業界のみならず、一般化して使われていますが、新しくリリースされるOSの性能評価をしていたことがある私は、ベンチマークテスト用に極端にI/O回数の多いジョブ、I/Oを発行せずCPUだけを使うジョブ(CPU利用率100%ジョブ)、スタートしてすぐ終了するスタートストップジョブなど何種類かの評価用標準ジョブ(ベンチマークジョブ)を作ったことがあります。40年以上前でしたが、当時株の指標にもこのベンチマークという言葉が使われているとはつゆ知らず、ベンチマーク、ベンチマークと連呼していました・・・あまりにも一般化したこれらはともかく、マター(matter)、イシュー(issure)、マスト(must)となると、一般的な会話の中ではあまり使ってこなかったこともあり、話しているのを聞くとしっくりきません。もちろん、相手がその言葉を使ってきた時には意味を理解して会話しないと『この人・・・』と思われてしまうかもしれません。逆に、こちらが無意識に使っていて、会話をしている中で相手がその言葉を理解していないのではないかと感じた場合には、相手のプライドに配慮しながら言い方を変える(変えられる)用語のスキルが必要になります。

 

言葉には情報伝達の他に、その言葉を使うことで『自分は何者なのか』を示す機能(慶応井上教授談)があるとされています。情報システム関連の言葉を使えば、その方面の仕事をしているのではないかと思いますが、それです。また、より専門的なアチラ語を使うことで、その方面での一定レベル以上の知識を有していることをアピールすることもできます。手術のことをオペといったり、オーベン、ポリクリ、ラウンドと言ったり、手術室のことをオペ場といったすると、この人医療関係者ではないか?と思われたりします。10年ほど前、家内が入院した際に、病院コンサル経験を踏まえた言葉、言い回しをしたことがありますが、家内が看護師、理学療法士に『ご主人は医療系の方ですか』と聞かれたそうです。これは、井上先生の説明のとおりです。


言葉は連帯を生み、その業界、集団の人しか知らない言葉を使うことで仲間意識が生まれることもあることは、読者の皆さんも経験していることと思います。その結果、短時間に人間関係が築けたり、仕事が捗ったり、時間の節約になることがありますが、昔ながらの言葉ではなく、カタカナ語を使うことでイマ風という点でも無形な共有感ができあがるのかもしれません。反面、知ったかぶりと思われることもあるます。そう思われないよう『コンピュータの世界でいうところの~』、『医療の世界では~と言っていますが』などの断りを入れてから使うと、相手にあらぬ誤解を与えるリスクを軽減できます。また、相手が使っている言葉を知らないと阻害、排除、仲間はずれにされていると感じてしまう人がいることにも配慮して使った方が無難です。

なお、自治体の窓口では、高齢者への配慮もそうですが、安易に使うのは避け、できるだけカタカナ語を避け、日本語で表現した方が無難だと思います。自治体は老若男女を問わず、全ての人が意味を理解できるような言葉を使うべきだからです。

カタカナ語が氾濫していますが、使う際にはその言葉を理解できる相手であるかを考えて使うこと、『誰に向けた言葉かを意識する』ことが重要だと思います。

 

明日から三連休です。本ブログもお休みします。

 

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