情報工学部門の技術士の資格を得たのは、田中真紀子氏が科学技術庁の大臣だった1994年。新興ディスカウント会社の業務コンサル、システム化推進が一段落し、少し時間的な余裕ができたので技術領域資格の最上位と目された技術士の資格を取った方が、これからのコンサル稼業に役に立つと思った次第です。新聞の広告でみた日本能率協会がやっている講座に申し込みました。受講料13万は当時としてはいささか高いと思いましたが、技術士が取れるならと思って受講することにしました。送られてきたのが800字詰めの原稿用紙何冊かと、受験読本でした。課題を与えられて回答し、添削して返してもらうというスタイルでしたが、最初の添削で『こりゃダメだ』と思いました。どうしてそう思ったのか?

 

それは、『線を引いて?付ける』だけという私が期待していた添削とはかけ離れたものだったからです。『線を引かれた部分がおかしいよ』という意味だとは分かりますが、禅問答のような取り留めのなさを感じました。本来、どこがどうおかしいのか/どうしたら良いのかのコメント/より良い書き方を示すなど、具体的な指針が示されていなければ添削にはなりません。赤ペン先生の添削を見れば添削の意味が分かると思います。

子供と大人の違い?そうではなく、添削の基本姿勢の問題です。事務局に問い合わせると『線を引いて、そこがおかしいと気づかせ、自分でどこがおかしいかを考えさせる』というやり方とのこと。体の良い手抜きで、多くの添削をみるには『線を引いて?付ける』しかできないのかもしれません。受験講座ではないものの、大学での講義やクライアントでの業務分析・改革・改善、それを踏まえたシステム開発の過程で人材育成をしてきた経験をしてきましたが、提出されレポートへのコメントや添削は丁寧を心がけてきました。研修生やクライアントからは赤ペン先生と呼ばれていましたが、数十名のプロジェクトを率いてきた時に、彼らの作った仕様書へのコメントは以下のようにしていました。

能率協会の添削方法は受講先の方針と分かり、思ったものではなかったので、それ以来回答を送らないようにしました。13万を捨てることになりましたが、回答用紙の書式が分かったことは不幸中の幸いでした。これを使い、日経コンピュータの特集記事などを題材に、それまでに培った経験、知識を以て回答用紙に書き込み、読み返して修正するという方法で自習しました。これは本番で大いに役に立ちました。もっとも、これを始めたのは試験の当月のお盆休みからでした。

そんな付け焼き刃で合格できたのはまぐれではないか、山が当たったのではないかという見方もありますが、そうではありません。いやしくも技術士を受験する意欲を持った人は、受験分野に関する十分な知識と豊富な実戦経験の持ち主なはずです。足りないとしたら、設問の狙いを捉えた回答を適切な文章構成、言い回し、表現できる力でしょう。与えられた設問に対して適切な回答を書くことができないと、知っていても経験があっても合格することはできません。私に受験指導を依頼してきたキャノンの部長は正にこれでしたが、これは時間をかけ適宜アドバイスを受けながら力をつけるしかありません(彼はめでたく合格しました)。私の場合、受験月のお盆休みから始めましたが、一言で言えば上述のような書く訓練でした。付け焼き刃ではないか?と思われる方がいるかもしれませんが、技術士を受験しようと思う方は、日々の仕事が合格に必要な受験勉強だと思ってください。お盆休みを利用して朝から晩まで何十冊とある日経コンピュータから特集記事を切り抜いて一冊にし、これを設問と見なし、回答時間を決め、がむしゃらに書くわけです。

 

というやり方をしてきましたが、先日、こんなメールが舞い込みました。これは情報工学部門ではありませんが、同じです。

課題が郵送されてきて、回答したものを郵送し、添削(とは思わないが)した結果が郵送されてくるという昔と違い、今はWeb上でのやり取りになるようです。しかし、3日間で22万、1日では約16万・・・合格保証が欲しいくらいです!落ちたら返金してもらえるというなら良いですが、それはないでしょう。

受験セミナの案内は、他にも多数あり、毎日来るIT情報メールの中に時々混じっていますが、技術士に相応しい十分な知識経験があり、且つそれを文章で書き表すことでき、分かりやすく話すことができる能力がある方が、念のために最後の仕上げに利用するという使い方なら納得できます・・・しかし、この費用に見合うか?という印象です。

 

そうそう、もう一つのポイントす。普段パソコンで文書作成をしているので、鉛筆で書くことに慣れておくことも必要になりますが、これが一番大変でした。書き直しが効かないし、挿入もできないし、一度書いた文脈を変更するには大量の消しゴム作業が必要で、事実上できないことを念頭に置かないといけません。首尾よく合格することを祈っています。質問歓迎します!

 

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