1/25から家族の手術のためブログを休んでいましたが、容体が落ち着いたので、今日から再開します。よろしくお願いします。

 

今日は少し目先を変えて、脳科学者の中野信子女史がいう意志決定者につき、コメントします。この方は、メディアに登場する頻度が高いのでご存じの方が多いと思います(私は彼女の“努力不要論”を読みました)。中野女史が朝日新聞に書いた仕事力と題して書かれたコラムも読む機会がありましたが、その中にみんなで考えて結論を出すよりも、一人の意志決定者の指示に従って行動した方が効率が良いという主旨の記述がありました。多数より一人の意志決定の方がスピードの点でも効率の点でも有利!ということです。

 

一人の意志決定者が素早い判断をして有効な策を講じることで、烏合の衆による小田原評定を回避できるという言い方もできます。これは正論ですが、その意志決定者が問題です。歴史をみると暴君として有名な皇帝ネロはじめ、毛沢東、スターリン、ヒトラー、フセイン、カダフィ、金日成などが意志決定者であった国民は悲惨でした。今は、『昔はロシアの土地だった』という一方的な理由でウクライナに侵攻したプーチン、少数民族を虐殺し鄧小平が決めた一国二制度の香港を武力で制圧し、台湾を狙う習近平、国民を家畜のように扱う金正恩あたりでしょうか。パレスチナ国民を虐殺(ジェノサイド)するネタニエフも該当するかもしれません。

 

民間企業でも、当時破竹の勢いのダイエーが破綻したのも創業者である中内㓛なる独断専横な意志決定者のなせるワザではないかと思います。彼の施策が成功していた時代は、将来を今の延長線上で見通せた時代でしたが、変化が激しく様々なパラメタを考慮して総合的に判断しなければならない時代になったことに本人が気が付かない、取巻きが気が付いても具申できない雰囲気があたのでしょう。中内功が言った言葉に『私が言うと議論にならず、結論になってしまう』というものがありますが、言い得て妙な表現だと思います。もっとも、それを自覚していたらもっと胸襟を開いて風通しを良くすべきでした。今の日本電産の永守社長は、中内さんを参考にすべきだと思います。個人の眼力だけでは見通しが効くような時代ではないということを自覚することは、独裁的なトップにはなかなかできませんが、それをやらないと大組織を維持できなくなってしまうことに早く気が付いて欲しいものです。

 

一方、スティーブジョブズ、ビルゲイツなど、今なお成長を続ける企業の創業者も意志決定者です。電気自動車で圧倒的なシェアを誇るテスラ創業者一人、イーロン・マスクも同じですが、鶴の一声で方針、施策、予算を決められる者の采配が、良い方に向くか悪い方に傾くかは、当該企業の業種、組織の規模、人材(参謀)、時代の趨勢、環境の変化など運不運があるのは論を待ちません。

 

もっと基本的なことがあります。それは、いかに優れた意志決定者であっても、常に正しい判断をするとは限らないということです。誤った判断をしそうになった時にアドバイスしてくれる参謀がいて、それを聞き入れる度量がある意志決定者であれば問題はありません。しかし、プライドの高い意志決定者の逆鱗にふれることをいとわず直言する参謀は見当たらず、聞き入れる度量どころか「この偉大な私に苦言を呈するとは無礼千万」と思う意思決定者がほとんどなのが実情です。

 

意志決定者が自戒する習慣をつけること、できれば信頼できる参謀を見つけることではないかと思いますが、長年観察しているといずれも難しいことが分ります。連戦連勝の結果が過剰な自信につながり、何かにありつきたい周囲(腰巾着)もこれを助長してしまう傾向にあるからです。耳に痛いことを言う参謀は北朝鮮では死を意味しますが、一般企業では閑職に追いやられることは想像に難くありません。


誰が猫の首に鈴をつけるか?命、進退を賭けてご注進をするか・・・現実的には誰もつけられないでしょう。創業者一族が仕切る中小企業、民間病院はその様な環境にあるのが実態ではないかと思います。結局・・・物言えば唇寒し秋の空、中野女史のコラムを読んだ感想です。

 

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