業務の改善改革をするには、まず業務の分析が必要ですが、既存の教科書的な手法ではなく、自分なりに工夫して実践してきた方法を紹介します。

 

ディスカウント会社、自治体、ソフト開発ベンダ、病院など様々な業界業種で業務改善改革とそれを踏まえたシステム整備をしてきましたが、共通しているものに業務プロセスの分析方法があります。この方法については、大手コンサルティングファームからページ数の多い立派な装丁の解説本が出ていて、私も持っています。しかしこの本を読んでも、考え方は分かるものの、具体的にどこからどのように取り組んで行くのか、手を付けていけばよいのかを理解することは難しいと思います。その本には、様々なレベルの業界業種、顧客を相手に泥をかぶった経験から得られた実戦ノウハウが書かれていないからです。

 

ある大学で都庁管理職を教えている時、BPRの話をすることがありました。BPR(Business Process Re-engineering)についてはこのブログでも幾度となく取り上げていますが、それは何をするにも必須な最も基本的な作業/理解だからで、私が最も力を入れてきたことだからです。講義では大仰な解説本を使わず、手作りのテキストを使いましたが、このテキストはクライアントの人材育成にも使いました。

その中の一部分を業務改善改革に必要なプロセスの杉式簡便見直し法として紹介します。

 

ある仕事が5つのプロセスによって成り立っているものとします。

それぞれのプロセスにつき、以下の調査をします。

①何を処理するプロセスか?
②絶対必要か?
③なければ、何が(誰が)どう困るか?
④困る場合があるとすれば、その頻度は?
⑤前後のプロセスで重複している機能はないか?
⑥前後の、あるいは他のプロセスを改善することで吸収できないか?

必要性を突き詰めて行く場合、「なければ困る理由は何でしょう」が良い質問になります。

・以前からやっていた
・慣れている
・必要の是非を考えたことがない
・教えてもらったとおりやっているだけ

という回答があれば、削除、あるいは前後のプロセスを改良することで吸収可能になる可能性があります。絶対必要とされていたプロセス4につき、その必要性を突き詰めていくと、なくも作業品質には影響がないことが判明すると、以下のとおりとなります。

次に、プロセス1の 仕事のやり方を改善・改革することでプロセス2でやっていた仕事を吸収できることが分ると、次のようになります。

以上のBPRの結果、5プロセスが新プロセスを含む3プロセスに削減されることになります。

この様に、業務を見直し、整理整頓するだけで随分スッキリしたプロセスになることが分ります。ポイントは上述の質問群です。実際にこの質問により、必要とされたものを不要と判断したことはたくさんあります。仮に必要性が分ったとしても、質問④の頻度を考慮し、サービスからドロップすることがあります。年数回あるかないかのものはこの対象になります。システム化が必要な場合には、この状態にしてから取りかかります。

 

余談ですが、この説明方法を断りなく、そのまま流用していた教授がいたのには驚きました。学生から同じ図と説明がある言われ、その先生のテキストを見たら・・・横書きにしてあるものを縦書きにしてだけで、あとは全く同じでしたが、丸写しをした時、学者としての良心は咎めなかったのかと思います。それを共通の知り合いである横浜市立大のN教授に見せたら絶句していましたが、現場を知らず、机上で頭を捻りながら考える先生には、この様な簡便法は思いつかなかったのでしょう。一言、皮肉を言ってやろうかと思いましたが、お世話になったこともあるのでそのままにしておきました。

 

MBAや昔取ったきねづかの評論家たちが机上から現場を見るのではなく、一に現場二に現場です。現場をつぶさに観察し、現場と仲良くなり、忌憚なく意見交換できるようになって初めて本音が聞ける信頼関係ができます。そうしなければ業務改革改善に必要なポイントが見つかりません。もちろん、Howto本に書かれているようなことをやっても業務改革改善はできないし、そもそもその筆者は泥をかぶり、地に這いつくばった経験があるのか疑問に思うことがしばしばあります。読む方も、受け売りはいけません。成功要因はなにかのフィルターを通して読み、実行可能解か否かを判断する知識経験が求められます。自分なりの方法を見出す努力が必要です。

 

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