某社でOSの開発、SEへの技術支援をしたあと、コンサル業界へ。様々な業界業種を経験しましたが、いずれも現場に入って業務分析/改革/改善を行い、それを踏まえたシステム整備をやってきました。なかでも病院は約12年間もやってきましたが、どこからも補助がない民間病院と経営が厳しくなれば税金で補助が来る公立病院とでは、経営陣の姿勢に違いがあるのではないかと思っています。経営姿勢ではなく経営能力かもしれません。公立病院は、いわゆる親方日の丸体質、費用対効果、償却などに目が行かず、要る物は要るんだ的発想!無理無駄を省き、知恵を働かせ、工夫をする努力が足りない・・・というか気にしていないのでしょう。誰かが面倒をみてくれると思っているに違いありません。

 

先日、甲府市の市議会で、市立病院の赤字体質が問題になったというニュースがありました。今日はこれを取り上げます。

市議会で赤字の垂れ流しを指摘され、経営改革はあるのかと問われたようですが、ホームページを見ると、甲府市立病院では過去に幾つもの改革プランを策定してきたようです。

幾つか拝見しましたが『作ってみました』というだけで、具体性がなく能書きに終始し、実行可能解がありません。しかし、経営改革の意識をあるのかと問われれば『この通り、やっています』と示すことはできます。自ら作ったのか、外部有識者とライタに丸投げしたのか分かりませんが、この作成頻度を見ると空疎な中身が透けて見えます。そもそも、次の改革プランには、前回の反省が反映されていなければなりませんが、その部分の記述(言及)が見られません。日々新たなりという言葉がありますが、無反省な日々新たなりでは困ります。

 

以前、日経電子版にこんなものがありました。

まさに、この通りになっているのが甲府市民病院です。


公立病院のこの体質は、昔から言われてきたにも拘わらず依然として解決できていない古くて新しい問題です。経営には携わらなかったものの、長年病院の業務改革改善とそれを踏まえたシステム構築のコンサルをやってきた経験からすると、病院にはいわゆる経営計画というものがないのではないか?という疑問があります。公立病院のように税金からの補てんが望めない民間病院では、経営計画とは言わないまでも、収支の見通しをつける程度の計画はあるはずで、それがないと破綻してしまいます。少し経営計画について考えてみましょう。

 

経営計画とは、売上げなど業績の到達目標を設定し、それを実現するために、現有する有形無形なリソース(人、物、金、情報、技術、ノウハウ)を使って如何にして計画を実現するかの行動プラン、スケジュールのことです。その様な経営計画を持っている医療機関はあるでしょうか?インターネットでチェックすると、経営計画を作っている病院がたくさんヒットしました。


よく見ると自治体立病院(公立病院)ばかりです。基本的に赤字の経営計画をたてることはないので、この経営計画を作って実行しているところの収支は黒字になっているはずです。しかし、社団法人日本病院会/全国公私病院連盟作成の病院運営実態分析調査の概要をみると、自治体立の病院は、調査した320病院中、赤字病院が292病院(91.2%)もあります。赤字は自治体が補填(税金)しています。実際、都下のある市の市立市民病院(240億もかけて新病院建設)では、市から年間約18億円の補填を行っていると市のシステム課長をしていた教え子から聞いたことがあります。経営計画があるのにコレです。経営計画は有名無実、形骸化していることがわかります。『経営計画があるかないか』と問えば、ある/作っています/持っています!となりますが、中身がない品揃的な位置づけであり、如何にして黒字にするかという意識が見えない紙切れ的な計画であることがわかります。

 

前述の18億の赤字補填をしている市民病院の体制表を見せてもらったことがありますが、医師が委員長の経営改革委員会なるものがありました。赤字補填が恒常的に行われる中で、破綻の恐怖を感じることがない院内スタッフからなる経営改革委員会自らの痛みを伴う改革ができるはずがなく、できないと思う方が自然です。そもそも自分の財布からお金が出る感覚がなく且つ雇用されている側の勤務医がトップを務める経営委員会では、機能するはずがなく、有名無実もいいところです。経営感覚もあるとは思えない自治体の役人が机上で作った計画も同じです。管理職教育をしていた都庁の幹部からメールをもらったことがありますが、自ら稼いでいないから!と明確に言っていました。自覚していることがよく分かります。

では、外部のコンサルティングを専門に行う会社に任せれば良いのでしょうか?実際に病院を経営したことがない方々が、僅かな観察とヒアリングで得た情報を元に机上で作った経営計画・・・直感的に使えないと思います。自治体立病院が経営計画を作っているというのは、実は外部に任せて作ってもらったのではないか?計画はあるものの91.2%の自治体立病院が赤字なのだから、あながちゲスの勘ぐりとは言えないでしょう。だいぶ前の数字ですが、民間病院を交えた黒字、赤字病院の割合の推移は以下のとおりです。

経営計画では黒字化、黒字拡大のための施策が盛り込まれますが、往々にしてありきたりな諸経費削減、人員削減、外部への業務委託など即物的で単純なことしか書かれていないのが現状です。では、どうするか?

実はBPRクリック)を行うことで目に見えた効果が現れます。BPRを取り違えている皆さんもいますが、根拠のない思いつきの施策ではBPRすることはできないし、上の顔色をうかがっていてできません。また、現場には今の仕事の仕方になった背景、経緯も知ったうえで新しいプロセスを提案していることを理解してもらわなければなりません。上意下達、問答無用では面従腹背となり、定着しないことを、現場経験の少ない机上の空論コンサルタントは知らないようです。

 

大企業出身のコンサルタントはその傾向にありがちですが、本人はできると思い込んでいるのが自覚のないというか残念なところあり、信じた顧客にとっては迷惑な話です。業務全体を俯瞰し、どうしてこの様なことをしているのか?と思うヶ所を、そうなった背景から調べていくとパラダイムシフトした業務(作業)パスが見つかります。それが、回りまわって経営に寄与することになります。もちろん、経営トップの意識改革は必須です。そのトップが裸の王様然としているとできないのが、この意識改革!これは過去の経験から言えることです。

 

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