ブログのprofileにも書いてありますが、私がシステム構築のコンサルティングの際には、現場を教育することに重きを置きます。業務を熟知する彼らにデザインレビューに参加してもらったり、仕様を作ってもらうためにはそれが必要だからです。従来、それらの仕事は、SIer/SEの仕事でした。それが彼らの存在価値でしたが、残念ながらまともなシステムを作れるSIer、SEがいなくなってしまいました。それは、顧客をヒアリングして仕様を纏め0ベースで開発するスクラッチで開発する機会が少なくなり、出来合いの業務パッケージを適用するだけの謂わばプレハブ大工のようなパッケージSEというレゴブロック的なSEになってしまったからではないかと思います。基本的な品質の検証もできないようです。そもそもデザインレビューをやっているのでしょうか?その前に、デザインレビューというステップがあることを知っているのかという素朴な疑問を感じます。やっていないし、やっているとしてもセレモニー的なものになっているからこそ、あちこちで問題を起こしているのではないかと思います。つい最近では、政府が躍起になって進めているマイナンバー利用のシステムで不具合があり、申請者ではない別人の住民票がプリントされてしまうという前代未聞の現象が起きてしまいました。

日本を代表するSIerの一角、開発元の富士通japanの説明によれば、処理が集中すると誤動作するバグがあったとのことですが、どうすればそのような現象になるのか想像もつきません。CPU、メモリ、デバイス、回線など様々なリソースを利用するタスクが競合すれば処理が遅くなる、レスポンスが遅くなるということはありますが、リクエストした人ではない別人の住民票がリクエストした人の端末(この場合はコンビニのコピー機)に印字されるという事象はおきません。2万円分のポイントにつられて約8千万人(2023/2末)がマイナンバカードを取得したことを考えれば、アクセスが集中することは予想でき、集中しても問題ないかのテストをしたはずです。

 

そのテストがおざなりだったということが想像できますが、正に今のSIer、SEのレベルが、皆さんに分かってしまったということです。このようなSIerに丸投げするのは止め、ユーザ側でできるところは自らやろうというのが、長年システム構築とその対象となる業務の分析と整理整頓をやってきた私の考えです。その具体例は過去のブログで幾つか紹介してきましたが、基本リテラシ、BPRとそれを行うための意識改革仕様の妥当性を検証し、品質を保証するためのデザインレビューが必須のプロセスで、それを確実に実行するための知識、経験が求められます。

 

4種類ある基本リテラシ®のうち、誤解なく/分かりやすく意見を伝えるドキュメント作成能力は基本中の基本なので、作業報告、議事録作成などを通して徹底して教育しました。業務そのものは、日頃仕事をしていて熟知していますが、現状肯定の仕事の仕方になっている可能性があり、無理無駄も長年の慣れで何とも思わなくなっているはずです。これはBPRの必要性と具体的なやり方OJTで説明して理解し、できるようになってもらいました。

 

彼らが作った画面仕様を関係者を集めてその必然性につき議論(デザインレビュー)した結果、彼らが作った22画面のうち2画面を活かし、新たな画面を2つ追加して4画面に集約したことがありますが、その時の手順は以下のとおりです。

・作ったメンバに、どの業務、作業を纏めたのかを説明してもらう

・どうしてその画面レイアウト、入出力項目、画面遷移にするのかの説明を聞く

・その際、入出力項目の所在(部門、業務、作業)を明らかにする

・画面遷移、レイアウトは作業の連続性を考慮しているかをレビューする

・全体の流れを把握したうえでレビューする

・生かす画面、廃棄する画面をレビューする

・新たな画面に吸収される画面を見つける

この時、画面の取捨選択の判断はどこを評価して決めるのかを参加者全員で共有します。何か問題と感じたこと、疑問に思ったことを書きだしてホワイトボードに張り付けるという方法も取りました。これは分かり易いデザインレビューの一つです。コンビニからマイナンバカードを使って住民票を受け取る際のイベント毎にトレースし、リクエストした端末に確実にアウトプットすることを確認するというデザインレビューをしていれば、今回のような初歩的という致命的なミスは防げたはずです。

画面をプリントして遷移に沿ってホワイトボードに張り付け、操作、作業の連続性をレビューする方法もあります。

このようなデザインレビューをすることで議論の仕方を習得し、出て来た意見を網羅し、結論に至った経緯を議事録にまとめてプロジェクトメンバ全員に配信することで、デザインレビューに参加していないメンバも、各部門で議論されていることを理解して情報の共有を図ると共に、レビューでの目の付け所を習得できるようにしました。

 

富士通japanは、この様な地道なことをやったのでしょうか?コンビニの端末(インテリジェントコピー機)から行政サービスのリクエストがあった時のプロセスのトレースを、BPRを含めリクエスト元の管理についてデザインレビューをしていれば、別人の住民票が印刷されて出てくることはなかったでしょう。

 

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