業務をシステムに載せると、そのシステムがカバーする業務がコンピュータの処理に置き換わり、作業品質を落とさずに減員できたり、残業時間が減ったり、余った要員を忙しい部門に再配置できるという期待があります。昭和40年代後半から50年代後半にかけた大型汎用コンピュータを使った情報システム黎明期には、確かにそのような目に見える量的効果がありました。その時代の研究発表、事例発表では、
・何人減った
・残業が何時間減った
という量的効果が声高に言われたものです。しかし、そのような効果が得られたのは、
・ルール(処理手順、判断)が決まっている
・大量/一括/繰り返し
という、コンピュータが最も得意とし、疲れを感じ、退屈し、注意力が散漫になる人間には向かない単調な作業を、大量に/長時間/繰り返す業務がシステム化の対象だったからだと言えましょう。

 

しかし、今までの仕事の仕方を見直さないまま電子的に処理するという単純な発想で効果が出る範囲の業務は、製造業をはじめとして、他の業界業種ではやり尽くされている感があります。一方、自治体や医療分野には依然として見直すべきことが残っているのが現状です。原因の最たるものは変革を嫌い前例踏襲を好む体質ですが、もう一つの要因は、住民を相手にする自治体、患者を相手にする医療業務は基本的に人対人の対面作業というものです。すなわち、物理的な解決が可能な大量一括繰り返し処理の対象にならない作業が多いことが挙げられます。しかし自治体、医療機関共に、仕事の内容的に
・大量一括繰り返し処理の対象になりにくい
・千差万別の人間を相手にする微妙な仕事
なので、他業種業界でやられている効率向上、生産性向上という作業の対象にはそぐわないとして、積極的には取り組まないよう様子(姿勢)が見て取れます。意識無意識を問わず、生命財産をあずかる特殊な立場、世界であるという考え方があると思われます。他業種のように無理無駄を廃し、業務を整理整頓して生産性向上を図るという発想が希薄な面が見受けられるのは、そのせいかもしれません。

 

しかし、いまや自治体、病院といえども、住民・患者満足度(CS)、職員満足度(ES)を向上させながら経営効率向上を図らなければならない状況にあることは論を待ちません。自治体、医療業界は特殊な世界であり、製造業のような改善改革の対象にはならないという意識をパラダイムシフトしなければなりません。仕事のし方の見直し(BPR)、適宜適切な情報システムの導入を適宜、積極的に行い、効率向上、生産性向上にチャレンジすべきでしょう。なお、予算処置が必要なシステム化を後回しにしたBPRは可能です。そもそもBPRはシステム化を前提(必然)としてはいません。お金をかけなくても業務の効率化、生産性向上が図れます。予算処置が難しいことを盾にして改革改善が進まないとしたら、これで論破できます。オランダの自治体の例ですが、レポートによれば、得られた効果を構成する要素は、BPR(業務改革、改善)によるものが8割、システムに載せることによる効果が2割とのことです。

発想を転換し、お役所仕事と揶揄される仕事の仕方を変えれば(BPRすれば)、システム化をしなくても現状よりも8割も生産性が向上するというものです。この例は自治体ですが、医療機関でも、患者のQOL(生活の質)、QOV(見え方の質)に直接かかわる仕事なので今まで踏襲してきたやり方で!という旧態依然とした発想を払しょくすれば、システム化を伴わないBPRだけの作業は可能です。もちろん、BPRを行う場合には、自治体、医療機関共に、特権意識、特殊意識を払しょくした意識改革が必要です。BPRの効果を実感したあと、システム化が必要と判断し、時間も予算も人員が確保できたら取り掛かってください。それからでも決して決して遅くはありません。むしろ、BPRが済んでいればシステム化は難しくありません。

 

※質問はosugisama@gmail.comにどうぞ!

※リブログを除き、本ブログの無断転載、流用を禁じます。