経済産業省のDX推進ガイドラインに、以下のような記載があります。
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あらゆる産業において、新たなデジタル技術を利用してこれまでにないビジネスモデルを展開する新規参入者が登場し、ゲームチェンジが起きつつある。こうした中で、各企業は、競争力維持・強化のために、DXをスピーディーに進めていくことが求められている。
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算出根拠は分かりませんが、仮にDXが進まなければ、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるという警告もあります。ビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用したビジネスモデルの変革が各企業に求められているとのことですが、DX環境構築のために必要なことが下図に示されています。

この図をよく見ましょう・・・言葉は新しくなっているものの、どこかで聞いたような話だと感じませんか?そうです、それは1990年前後にブームとなった経営戦略とそれを情報システム面で支えるSIS(戦略情報システム)のことです。そのためにはCIOという情報システムを統括する役員が必要となるとされていました。各社はCIOの役割を理解したうえで、それを担う能力を備えた人選をすることなく、総務部長、経理部長などに兼任させたりする付け焼き刃的CIOを選任しました。当時は情報システム構築、運用を司っていた部門は、総務部や経理部に所属していた事務管理課が担当していたこともあるので、取りあえずは良いだろうということだったようです。

 

経営戦略を支えるSISを構築するには、指針、ポリシ-となるシステム整備規範(ISA)が必要でした。1990年前後だったことから、汎用機で行くのかオープン系でいくのか、パソコンをどこまで使うのか、集中なのか分散なのかなどのアーキテクチャから自始まり、機能、情報がcreate one time use many timesで基幹業務から周辺業務まで処理できるような統合情報システムを、優先順位、予算、構築時期など考慮して整備する計画がISA。これを策定しないまま、五月雨的に部門システムをコンピュータに載せるという出たと勝負のシステム開発&運用を続けていけば、円滑な情報活用ができない凹凸、過不足のあるシステム群ができあがってしまい一気通貫な統合情報システムにはなり得ません

 

全ての人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるという獏としていて具体性が把握できないDXという概念を、視野狭く近視眼的に捉え、デジタルテクノロジーを駆使して企業経営や業務プロセスそのものを根本的に改善していくような取り組みのことを指すとして、付和雷同なシステム開発論に置き換えた日本の施策、あまりに目先に捉われていないかと感じるのは私一人ではないでしょう。これだけなら、前述のようにISA、SIS、CIOが取り沙汰されていた30年前のことをキチンとやっていれば済んだはずです。もちろん、自治体、企業のみならず、国としてのシステム整備も含みます。

 

政府、経産省の官僚は、視野狭窄にならず近視眼的に観ることなく、まずは統合情報システムの構築の構築を国はじめ、業界各社に浸透させるべきでしょう。もちろん、その前にお役所仕事に代表される無理無駄を排除し、生産性を上げるための業務改革・改善を指導すべきです。民間企業は生き残るために、DXという言葉に踊らされずに、しかるべきCIOを立て、何十年も前からその必要性が叫ばれている統合情報システムの構築を計画的に進めるべきです。

 

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