専門も知識経験も違う複数の人が集まり、上下関係に無関係&遠慮することなく、みんなでアイデアを出し合い、互いに刺激し合い、その場で創造的な発想を生むことを目的としているのがブレーンストーミングと言われ、皆さんよくご存じの方法です。上意下達、前例踏襲が普通の歴史と伝統を誇る大組織、特に官僚組織では望むべくもない、アイデアの出し方、創造的なソリューションの出し方です。ブレーンストーミングは、セレモニーではなく本気で業務の改革・改善を行う際には必須の発想法ですが、過去のしがらみにとらわれないことが求められるブレーンストーミングですが、BPRには必須の発想です。何十年もの間に培われた今の仕事の仕方に捉われず、リセットし、機能を落とさずあるいは向上させた無理無駄を省いたプロセスにするというBPRを行う際には有形無形な抵抗を受けます。この時、頑強な抵抗をするのが、それまで場を仕切ってきたベテランという名の頭の固い頑固な牢名主。幾つかのコンサルティング現場で遭遇しました。

 

このようなベテランが、面従腹背で改革勢力を押さえつけシーンを実際に経験しました。例えば、国鉄民営化直後のJR、病院、自治体です。この様な人物がブレーンストーミングの場にいると意見が出ずらく、出ても後で『なんであんなことを言ったのか』などと叱責されることもあり、ブレーンストーミングになりませんでした。長年仕事をしてきたなかで、自分が作ったルール仕事の仕方にケチをつけられるという感覚が芽生えるのでしょうが、この種の皆さんを正攻法で説得することは難しく、事実上不可能です。『分かりました』と言いつつ面従腹背になるのが過去の経験です。時代は変わったという意識は、自分の居場所が無くなったと同じ感覚ではないかと推測しますが、多分当たっています。国鉄民営化直後のJRのシステム再構築に伴う現状分析を行っている際、気が付いた点をシステムの取り纏め者に確認しますが、この時この方が発した『私は、来年定年を迎えます。できればそれまでは、あまり変えないで欲しい』という言葉は今でも記憶しています。この感覚を持つトップが仕切ってきた部門なので、部下たちも推して知るべし、改革しても一過性で終わってしまうと危惧したことはいうまでもありません。業務改革の前に意識改革を徹底しなければならないことを痛感した瞬間でした。

 

そのJRですが、ファイルフォーマットを見せてもらい調査をしましたが、部門のことを機関と呼んだり、部署と言ったりしていていたのは最たるケースでしたが、データディクショナリを作らず、その時必要になったものに名前を付けて使ってしまうというシステムを作る際の基本動作(素養)を持たない人たちがシステム部門にいたのには驚きました。

長い間に培われた仕事の仕方を一朝一夕には変えられませんが、巨大組織だった国鉄という大きな井戸のなかで生まれ育った仕事の仕方、考え方は、変えることなく引き継がれていたのでしょう。その番人がベテランだったということです。これは省庁や自治体も同じです。もっとも、この組織は数年毎に担当部署が変わる人事ローテーションが組まれているので、定着まで時間を要する業務改革、作業手順変更がやりにくいという問題があります。議会の承認が必要になるものがあれば、尚更です。なお、キャリア組ではなく、ローテーションに入っていないノンキャリア層は長年その現場にいるので、細部に亘って業務を知り尽くし、隠然たる力を持っていることが多く、往々にして彼らが牢名主と化していることもあります。病院のように今風で言えばジョブ型になっている職能集団の集合では、文字通り牢名主がいて隠然たる采配をふるっています。実際に遭遇しましたが、実に手強い相手でした。医事会計システムが導入されて外来では処置点数をを記入する必要がなくなったにも拘わらず、点数表をカルテにくっつけ、点数を記入させるという二重手間を強要していたのには驚きました。

この女性、私の前では『分かりました』と言っていましたが・・・面従腹背の際たる人物だったので、今でも記憶しています。まだまだ事例はたくさんありますが、この様な泥臭い経験をしていない現場を知らないコンサルタントは、教科書のようなことをいうでしょうが、意識改革、業務改革をする際の障害になるのは、現場の牢名主と思って間違いないでしょう。経営層の協力を得て懐柔しつつ推し進めるしかありませんが、本質的でないところで疲れる話でした。


過去の経験を纏めて図にすると以下のようなことになります。ご参考まで。

※質問はosugisama@gmail.comにどうぞ。

※リブログを除き、本ブログの無断転載、流用を禁じます。

明日から今週2回目の3連休、本ブログもお休みします。どちら様も楽しい連休でありますように!