MBAの資格を持つコンサルタントが書いた眼科向け電子カルテの説明を実務経験に基づき評価したことがあります。明晰な頭脳と並外れた努力で何千件もの事例を調査分析してそのエッセンスを身に付けたMBAならではレポートで、眼科は検査の種類が多いことなども理解していました。しかし、上面な知識・経験で書くと恥ずかしいことになるという結論にしました。深く現場に立ち入り、同士として現場の方と関わり、共に汗をかいて知り得た知識・経験と専門書や分厚い事例集を読み漁って得た知識とは、実用性が違うことを改めて認識した次第です。今回も、現場経験/実務経験が少ないと思われるコンサルタントの例を紹介します。

 

名前を言えば誰でも知っている有名なコンサルタントの書いた本を読みました。経歴をみると仰天するばかりで、彼我の差に愕然としますが、その中に、興味をそそる “常識の罠” という項目がありました。常に常識を疑ってかかる私の考え方を刺激するタイトル名でした。そこには、患者が病院を評価する指標を何にしているかにつき、3年間15病院の調査した結果として次のように書かれていました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
病院が受ける最も多いクレームは常識的には待ち時間の短縮だが、
そうではなく医師、看護師の言葉遣い、態度の改善が最大のポイント
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
とのこと。この方、3年間15病院での調査結果としていますが、その病院にコンサルで入ったのか、それともヒアリングしたのかが定かではないので何とも言えませんが、私の現場経験では、患者と直接接する看護師が受けるクレームは“待ち時間”が断然トップでした。旧くて新しい問題であり、画期的で普遍的な解決方法が見当たらないのが、この待ち時間です。どのレポートでも待ち時間の問題を取り上げていることから、同じ視点では注目されないのでこのコンサルタントはちょっと変わったところを見せたかったのかもしれませんが、机上の空論の誹りを免れません。現場を知らず、机上での座学と少しのヒアリングで分かったつもりになる傾向のある売れっ子コンサルタント特有の一方的な見解があると感じます。この本に書かれている内容によれば、待ち時間解消には病院側スタッフを増やすしかなく、それは病院経営を圧迫すると短絡的な書き方をしていました。このコンサルタントの見識を疑ってしまいますが、これが評論家的なスマートなコンサルタントの第三者的見解なんでしょう。

 

人を増やさず患者満足度(CS)を上げ、なお且つ待ち時間を短縮でき、来院者数も増やすことができるという、二律背反ならぬ三律背反は実現できるものです。ソリューション(解決策)は・・・BPRとそれを踏まえたシステム化です。私が指揮したシステムでは、混雑する午前中の時間帯で、2時間47分待ちが、1時間44分待ち(平均値)に軽減される効果がありました。

更に、当時の小泉改革で受診回避策が採られ、全国的に外来患者数が減っている病院が多いなか、来院者が増えました。もちろん、スタッフは増えていません。

BPRの結果を反映し、無理無駄、重複を省いた作業プロセスにすることが、待ち時間の減少に結びつくのみならず、様々な面で効果を発揮していることを実証しています。なおかつ、BPRを踏まえた仕様に基づくシステム化により、スタッフへの負荷が軽減し、患者に丁寧に接する時間的、精神的な余裕が生まれました月間クレーム数が数十件から数件に減ったということで効果は明らかです。この具体例を知ったらこの著名コンサルタントは何というでしょう?優秀な彼がどんな言い繕いをするのか楽しみです!
 

※教訓

誰かが書いた書籍、資料を参考にする際には、その筆者のきらびやかな経歴に驚くのではなく、どの程度広く、深く現場に入り込んで知り得た経験に基づいて書かれているかをチェックすることを勧めます。現場経験の少ないコンサルタントの見解を鵜呑みにし、誤った判断をしないよう注意が必要です。

 

※質問はosugisama@gmail.comにどうぞ!

※リブログを除き、本ブログの無断転載、流用を禁じます。