インソーシング、アウトソーシングについては以前のコラムで説明したことがありますが、オフィスの生産性を向上させる工夫をし、旧習にとらわれずに仕事のやり方を見直したうえで、必然性があれば、アウトソーシングを採用します。アウトソーシングにはメリットがあれば、デメリットもあり、それを共著で出版した自治体のアウトソーシングに書いたことがあります。

具体的には下図のとおりですが、情報システムを例にとったものです。

ご覧になれば分かるように、情報システムという領域に拘わらず言えることです。専任部署を持たない自治体や医療機関に多くみられますが、委託する側がポリシーなく丸投げする状態である場合には、ノウハウの蓄積はおろか受託先の思うがまま(思うつぼ)になってしまう懸念があります。ランサムウェア攻撃に遭って電子カルテが改ざんされてしまった徳島県つるぎ町立半田病院がその好例です。専門知識がないことを逆手に取ってやりたい放題、ウイルス対策もしていませんでした。

 

情報システムに関する業務が本業ではない多くの業界業種企業にとっては、組織内で抱えておく必要はないという考え方もあります。しかし、情報システムの出来不出来が業績を左右することがあります。経営戦略を支える戦略情報システムと言われるものがそれです。過去にスシローや健保組合の例を引き合いに書きましたが、情報システムが持っている機能、情報を縦横に利用することで同業他社に伍して優位に立つことが可能です。その様な効果を発揮する情報システムを整備するには、丸投げのアウトソーシングでは困難です。とりわけプランニングについては、アウトソーシングすべきではないと思います。プランニングは勝ち残って行くための強力な武器になる戦略情報システムの根幹だからです。戦略情報システムとは一見無縁に思える自治体、医療機関も同様です。住民満足度、患者満足度を上げるために、情報システムでできることはたくさんあります。

患者が満足して再来院比率、新規患者の紹介をしてくれるようになれば、ある意味で客商売である医療機関の経営は安定します。しかし、患者が増加することでスタッフの負荷が増えるようでは従業員満足度は下がります。スタッフの負荷軽減も情報システム整備とその前段階で行うBPRによって実現することが可能です。同じスタッフ数で従業員満足度を落とさず、患者満足度を下げずに今まで以上の患者を受け入れることができれば、パフォーマンスは上がったと言えるでしょう。実際にそれをやってきた実績があり、表彰も受けています。


プランニングは業務をよく知っている自らが行い、モノ造りはそれを専門とする信用できるSIerに任せることで、他院より優れた情報システムが整備できるはずです。業務知識があり、現場からの要望を知る立場の委託側が仕様を作り、SIerはそれを理解して実装することで役割分担します。お互いに得意とする分野で協調して作り上げるということです。

なお、信用できるSIerとは、決して名の通った大きなところではありません。むしろパラダイムシフトできていない大手は、避けた方が無難な場合もあるので、注意が必要です。超大手の孫会社SIerに頼んで失敗したことがあります。孫会社でも、旧態依然とした重厚長大な発想は引き継がれます。パラダイムシフトできていない幹部が本体から天下り、やる必要のないカビの生えた指導をするからです。その結果、新たな発想で、ということができなくなってしまいました。
 

※質問はosugisama@gmail.comにどうぞ!

※リブログを除き、本ブログの無断転載、流用を禁じます。