リウマチの治療を受けていた患者が自宅で倒れ、病院に担ぎ込まれました。血糖値を測ったところ・・・通常、空腹時で80~110mg/dl、食後2時間で80~140mg/dlが正常値の血糖値が、600という桁はずれな値を示しました。原因は糖尿病でしたが、糖尿病の既往症はありませんでした。この患者はリウマチの治療のためにプレドニンという薬を処方されていましたが、このプレドニンの添付文書を見ると32頁に副作用の章があり、糖尿病が挙げてあります。

ピンと来た読者もいると思います。プレドニンの様なステロイド系の薬は、炎症を抑える効能がある一方、長期間一定量以上を服用するとインスリンの働きを抑えてしまい、その結果、血糖値が上がるという副作用があります。製薬会社では、添付文書でその旨注意を促しています。この患者は、リウマチの症状を軽くするために服用していた薬のために、知らないうちに血糖値600超という重度の糖尿病になってしまっていたのです。危うく命を落とすところでした。その後、この患者は自宅を引き払い老人ホームに入居しました。ホームと契約している整形外科医の診察を受けた際、入居の経緯を聞いたこの医師が『糖尿病になったのは、プレドニンが原因かもしれない』と診断。ようやく糖尿病になった因果関係が分かりました。インターネットで調べると、リウマチ治療で糖尿病になるリスクについての情報が多数ヒットします。その一つを紹介します。

医師は、薬剤を処方する際には常に副作用に思いをはせなければなりませんが、リウマチの治療に当たっていた医師(当時の整形外科医)は、プレドニンの副作用に関する知識経験がなく、注意を払うこともなく長期間、漫然と治療を続けていました。これが知らず知らずのうちに糖尿病になってしまった直接的な要因です。医療ミスで訴えることができるほどではないかと思います。なお、薬の専門家であり、副作用にも気を配ることができるはずの薬剤師が、処方薬と服用期間をみて気付いてあげられなかったか?疑問が残ります。

 

今回は長期間に亘るリウマチ治療薬服用の副作用で糖尿病になってしまった事例ですが、私が長年服用している高脂血症治療薬で有名なエバデールにも、肝機能障害を起こす副作用があることが分かりました。ここ数年の人間ドックの結果に符号することが分かりました。

長期に亘って漫然と服用している薬剤がある読者の方は、その薬剤の添付文書の副作用の章を一読することをお勧めします。
 

医療情報システムでは、この様な医師の知識不足、注意力不足を補うための情報を提供することができます。例えば、薬剤処方時に当該薬剤の副作用情報を表示する機能です。今回紹介したものは糖尿病のリスクでしたが、このリスクがあってもリウマチ治療のためにプレドニンを処方する必要があったら、念のために定期的な血液検査をオーダできるようにガイドを表示することもできます。処理手順としては以下のとおりです。

①薬剤処方
②副作用確認要否確認メッセージ
③要⇒添付文書の副作用欄表示
④糖尿病リスクを確認
⑤検査オーダ一覧表示
⑥血液検査オーダ

次回来診時に、電子カルテ画面の検査欄に表示される結果を評価しながら、値の高低に応じて薬剤の種類を変えたり、用法容量を変えるなどの処置を取るようにします。
 

明日から5/8まで連休、ブログもお休みします。どちら様もコロナ感染に気を付けてお過ごしください。

 

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