第二次世界大戦中の情報機関・特務機関であるOSS(Office of Strategic Services)と呼ばれる戦略情報局、戦略謀報局、戦略任務局、戦略事務局などと呼ばれるCIAの前身があります。米国のためのEspionage(スパイ活動)を行ったり、プロパガンダ・転覆・破壊などを任務としていました。ここが1944年に作った『簡易サボタージュマニュアル』というものがあり、先日その要約が朝日新聞に紹介されていました。
今でいえば敵性国における会議の生産性を低下させ、議して決せず、議論百出で何時までも纏まりがつかない状態を作り出す!このことにより、臨機応変で迅速な決断ができない状況にして、自国(米国)に有利にする環境を作るという深謀遠慮です。彼らのこの策謀に乗せられるまでもなく、都合の良い情報だけを使い、都合の良い様に分析し、負け戦が確実な戦争に駆り立てたのが指揮命令系統が硬直していた日本軍部でした。これはコロナ対策の厚労省を見れば分かるように、責任を取りたくない官僚達にも言え、結論を出すのを躊躇し、出した時にはタイミングを逸している官僚の悪しき伝統になっているのではないかとさえ思います。3回目のワクチン接種実施時期を見れば明らかです。
米国の謀略にそそのかされるまでもなく、戦前・戦後に拘わらず日本では官僚、役人のみならず、一般の会社でも同様でことは起きています。しばしば、会議室には会議十則が張り出されていますが、このスローガンは会議室の一つの備品(お飾り)になっていて何ら実効がないことは皆さん承知のことと思います。そもそも誰も見ていないし、気にしていません。
しかし、大中小を合わせた会議の数は少なくなく、何を決めようとして会議を開いたのか、何が決まったのか、誰がどの様な意見をし、提案側はそれにどう答えたかなど、決まる過程でどの様な議論が交わされ、その成果は参加人数、会議時間に見合うものなのかが検証されるべきでしょう。
私がある大学で都庁管理職教育の講師をしていた際、会議の生産性についても取り上げたことがありますが、昔在籍していた会社やその後移籍した監査法人や技術士事務所として独立して多くのクライアントの会議に参加した経験を踏まえて講義したことを思い出します。それらの会議は、以下の特徴がありました。
①議題がなんであるかを知らないまま出席する者もいる
②議題を理解しないまま出席する
③会議時間内では見切れない量の資料が配布される
④持ち帰っても見ない
⑤意見を述べない発言0の出席者多数
⑥不必要に参加を要請される部門もある
という現状でしたが、これはとりもなおさず、Σ(出席メンバi*メンバの時間単価i)に見合わない会議が多いということでしょう。会議には、次の様な種類があります。
・伝達会議
・調整会議
・決定会議
・創造会議
・それらの組み合わせ
なかでも一堂に会する必要のない伝達会議が最も多いというのが実態です。都下のある自治体から参加した研修生が調べたところでは、総勤務時間に占める会議時間の割合は、一般職で24%、管理職で58%とのこと。如何にも議して決せずの自治体体質を表す数字ですが、最も多いとされる伝達会議をグループウェアによる周知に切り替えたところ、金額換算で以下の効果が得られたという発表がありました。
・部内会議 △22,464,000円
(@3,000円×0.66時間×4回×12ヶ月×260人)
・課内会議 △21,600,000円
(@2,400円×0.5時間×1回×12ヶ月×1,500人)
業務上見ておくべき情報/職員として知っておくべき情報を伝えるという伝達会議に分類されるものを、グループウェアで周知させた効果です。4千万円を超える効果とは驚きですが、この時間を本来の住民サービスに振り向けることができれば、住民満足度を向上させることができます。しかもこの4千万円は自治体の住民が納めている税金です。会議費に消えてしまう税金を自治体の諸施策に使えるようになったという点でも評価できます。
御前会議と揶揄される質問するのも憚れるトップ主催の会議もありますが、自治体に限らず、医療機関や一般企業でも、一堂に会する必要がない“伝達会議”に分類される会議が少なからずあるはずです。上述の計算式で会議の生産性を金額に換算し、その額と効果を比較してみることを勧めます。 ただし、伝達会議をグループウェアに置き換えるには、
①誤解なく理解してもらえる文章を書く(書ける)
②それを短時間で書く(書ける)
という、ドキュメント作成能力が求められます。この能力は基本リテラシの一つですが、手紙(文章)を書かなくなったこと、およびLINEでのやり取りに見られるように、日本語とは言い難い文章(文章とは言えないが)を書くようになっていることが影響し、①、②ができる人が少なていることを示していると感じます。
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