先日の朝日新聞夕刊に、東工大の中島岳志教授の活動が紹介されていました。その中で『水俣病から考える』という講座が紹介され、先生が『水俣病の被害拡大において、私たちの大学には加害性がある』と発言していたと紹介されていました。

どんなことかと言えば、この記事の中に次のように書かれていました。

当時、風土病のように限定された有明海沿岸の地域で起きていた病気を患者を治療してきた熊本大学医学部が調査した結果、水俣病の原因は有機水銀であることを突き止め、問題になりました。

それまで自社の工場が垂れ流す有機水銀説を否定してきたチッソ水俣工場と、チッソを後押ししてきたは通産省、国は苦しい立場に追い込まれました。この時、国側に都合のよい調査結果を出す御用学者もいましたが、患者を診てきた熊本大学の調査結果を覆すほどの内容ではなく、国とチッソは立ち往生。そこに、水俣病は有明海の魚が死んで腐り、その体からアミンなる有害物質が出ることにより起きたとする学説を出したのが東工大の清浦教授でした。影響力の大きな有力大学の教授の説は熊本大の説を打ち消すだけの力があり、せっかく有機水銀が原因だとつき止められたのに、最終的な結論がでるまで10数年もの間、チッソ水俣工場から有明海に水銀が垂れ流され続け、有機水銀中毒患者は増え続けてしまいました

 

実際に患者を診察していて有機水銀しかないとした医学部をはじめとする熊本大学の研究者に対し、チッソ、国、御用学者はその説どのようにして打ち消してきたのでしょう。

 

①原因は有機水銀ではない
チッソは企業の存続に関わり、国は産業界の浮沈に関わるものとして御用学者を動員し、何が何でもチッソの有機水銀犯人説を打ち消そうとしてきました。しかし、患者の症状から見て有機水銀に由来する神経系の症状であることが否定できなくなり、また熊本大学の入鹿山教授らが、アセトアルデヒド酢酸工場の水銀滓と水俣湾のアサリから原因物質と考えられる塩化メチル水銀(CH3HgCl)を抽出したと発表。更には原因物質である有機水銀が抽出され、有機水銀説が否定できなくなると、次の弁明は・・・
②有機水銀かもしれないが、水俣湾の有機水銀濃度は大阪湾など他と比べて特別濃度が濃いとは言えない。

そもそもチッソは製造過程で有機水銀を使っていない無機水銀しか使って使っていないので、有機水銀はうちではないと言い出し、有機水銀の出どころは当初どこか見当がつきませんでした。ところが、チッソ社内の病院にいた医師が、無機水銀を使っているアセトアルデヒド製造工程と塩化ビニール工程の排水を直接餌にかけてネコに投与する実験を会社には内緒で独自に実施していました。その結果、(可哀想でしたが)そのネコは有機水銀の中毒症状である神経系の症状を発症し、医師は会社幹部に報告。しかしこの都合の悪い情報は公表されず隠ぺい。これはもう犯罪レベルですが、どうして無機水銀が有機水銀に変わる因果関係が分かりませんでした。ところが、しばらくしてからスウェーデンのエルネレフ(Jernelov)博士によって、無機水銀イオンがメチル化されることを発見し、無機水銀の有機化のメカニズムが解明されてしまいました。また、チッソの最大の水銀使用場所はアセトアルデヒド工場でしたが、熊本大学の入鹿山教授らは、メチル水銀が水俣工場のアセトアルデヒド製造工程で生成され、それが流出していたことを突き止めました。

 

工場関係者、漁業を所轄する農林省など関係各省庁の担当者レベルでは、気がついていたはずのひどい話ですが、中央の権威ある研究者を御用学者に起用し、その権威を以って黙らせようとしたチッソと国の対応の経緯をみていると、企業の利益、国策の前には、国民を見殺しにしてもかまわないという奢った論理が見え隠れします。

 

なお、チャットGPTの回答は以下のとおりです(2023/4/30追加)、ご参考まで。

 

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