みずほ銀行は2002年の大規模事故というか、振り込みができない、二重に引き落とされるという銀行であってはならないシステムトラブルを起こしましたが、それ以降も頻繁にシステムトラブルを起こしてきました。特に今年に入ってからはご承知のように大小合わせて8回もの報道されるようなシステムトラブルを起こし、それでも都銀なのかと呆れるほどです。

みずほ銀行のシステムトラブルについては既に何回も取り上げていますが、最初の大規模システムトラブルの際、東洋経済から依頼されて寄稿したことがありました。

いささか食傷気味に近いみずほ銀行のシステムトラブルですが、興銀、第一勧銀、富士銀の3行のシステムを担当してきたベンダが作ってきたシステムの機能が、合併以降、4500億円もの巨費を投じて開発されたMINORIなる基幹システムとにどの様に引き継がれたのか、既存のシステムはそれとは別に運用されているのかは、情報がないので何とも言えませんが、下表を見ると合併前のベンダが、それぞれのシステムを動かしているようです。

3社の大きなベンダがそれぞれのシステムを担当している・・・戦略的なコンセプトがあっての意図的なマルチベンダなのか、意図せずというかみずほ銀行のシステム部門が御しきれず(=イニシアティブを執る能力がない)、なし崩し的にマルチベンダになってしまったのか定かではありませんが、どうしょうもない状態であることだけは確かです。しかし、これについては過去のブログでも取り上げてきたので、今回はそれには触れず、マニュアルの不備がトラブの原因だったという同行の見解と杜撰なガバナンスを取り上げます。

(1)マニュアル

保守マニュアルなのか操作マニュアルなのか分かりませんが、異常事態を知らせるメッセージに対する対応も書かれていなければなりません。極論すればそれさえ書かれていれば傷を深めることなく収束したのではないかと思います。みずほ銀行というか同行のシステム部門の丸投げ体質手配師体質をみると、運用を含め全てベンダにお任せでマニュアルをチェックしていなかったと思われます。ひょっとしたら見ることさえしなかったのではないかという疑問がわきます。ここまで来ると同行のシステム部門の位置づけが他行とは違うのではないかという気がします。マニュアルの書かれていることを理解できない操作員が問題なのか、開いても具体的な対応方法が書いてないマニュアルが問題なのか、マニュアルを検証していない責任者が問題なのか、もはや幼稚園並みとしか言い様がありません。

※余談
汎用機OSのスーパーバイザの設計に携わっていた頃の話ですが、当時まだあった紙テープ装置のマニュアルに書いた紙テープのリードミス発生の際のリラン処理手順を見たユーザから電話を受けたSEから連絡があり、『ここに書いてある面倒な作業をユーザにさせるのか』というクレームでした。書けば良いというものではなく、また専門家がやるような書き方をしていいのかという問題提起になりました。いつもそれを念頭にして書いてきたつもりが、マニュアル検査でも引っかからずにユーザに渡ってしまった苦い経験があります。昔のユーザは直接ベンダにクレームをつけてくるほど、今のユーザ(みずほ銀行)とは大違い!

 

(2)情報共有

上掲のロイター情報によれば、今回トラブルを起こした機器と同じものの故障が頻発していたそうですが、この情報が関連部署にフィードバックがなされていなかったということも信じられない出来事です。使えない人材ばかりのシステム部門はともかく、運用を任されていたベンダの責任は重大です。ベンダは銀行のシステム部門の無能さを理解していたはずですが、それならなお更のこと、同型機のエラー発生状況をチェックしなかったのではないかと思います。赤子の手をひねるようにして運用委託費を稼いでいた?委託側、委託された側共に、多くのお客に対する重要なサービスを提供しているという意識がないことが露呈してしまいましたが、この銀行、トップ以下、旧習に染まってしまった役員、上級管理職全員を放り出し、新しい血を入れ、ベンダも変えた方が良いでしょう。

 

(3)4500億の無駄遣いCIOの資質

上掲の最後に書かれている4500億もの巨費を投じて作った基幹システム『MINORIを使いこなせていない』とCIOが平然と記者会見で言ってしまったのには驚くしかありません。幼稚園児に高性能のパソコンを買い与えてしまったかのような感じですが、CIOなのに同行のシステム全体を俯瞰する立場を理解していないから言えるのでしょう。そういう人物をCIOに起用するという経営陣も銀行に於けるシステムが経営を支える戦略的位置にあることを理解していないのでしょう。とにかく。みずほ銀行の経営陣、上級管理職、システム部門は解体レベルだと思います。

 

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