2年前、韓国の裁判所が戦時中の強制労働させた日本企業に賠償命令を出したのに呼応する対抗策をだしました。それは、半導体製造に欠かせないフッ化水素など、韓国企業が必要としているものの輸出審査を厳しくする処置でした。

フッ化水素の輸出審査を厳密に行うという日本の決定の根拠はなんだったのでしょう?高純度のフッ化水素は、核兵器、化学兵器など、高度な兵器製造に必須なものだと言われています。日本から輸出したものが、輸入元の韓国企業で全数使われていないのではないか?という情報を掴んだのが何時の時点か分かりませんが、供給されたものが全て消費されていなければならないものが、生産数から逆算すると余っていて、その分をフッ化水素を必要とする兵器を製造している北朝鮮など第三国に横流ししているのではないかという疑念です。


説明を要求された韓国は、やましいことがなければ不正はないという証拠を揃えて説明すればいいものを、拒否するのでややこしいことになるわけです。お互いに非難応酬、制裁合戦をやっていては双方共に得になることは何もありません。しかし、謝ったり、言い訳するのが極端に嫌いなプライド高き国民性を持つ韓国に折れることを期待することはできません。政権の存続にも拘わることでなので双方の我慢比べが続いていますが、根底に戦前戦中の根深い怨恨があり今日に至っても落としどころが見当たりません。それどころか今は中国に頼る尿素の輸入に問題を抱えています。

BtoCとBtoB
物を作るメーカと製造に必要な設備、部品、素材を提供するサプライヤは、いわゆるWin-Winの関係が必要です。世界の半導体の大半を製造する韓国企業と、要求に応えて製造に必要な生産設備、部品、素材を供給してきた日本企業は、いわばWin-Winの関係にありました。家電製品、自動車など、企業から一般消費者向けのBtoC製品であれば、市場調査して顧客からの意見・要望を吸い上げ、製品に反映することあるでしょう。しかし、BtoCにはBとCの両者の間で意識的な共同開発という関係はありません。これに対し、半導体製造企業とその環境を提供する企業とは、いわゆるBtoBの関係になります。作る側の企業は、競争力のある製品を作るために、製造に必要な生産設備、部品、素材につき、機能、性能、品質、コスト面で厳しい要求をしてきます。これに応えることで生産設備、部品、素材を作る側の技術力が向上し、企業も成長します。特に、半導体や有機ELのような最先端技術を必要とする製品を作るには、Win-Winの良好な関係がないと長続きしません。


BtoBのWin-Win関係
日本電装は4兆5,271億円(2016年度)の世界トップクラスの自動車電装品メーカですが、BtoBの相手はトヨタ自動車です。魅力的な自動車を作り続け、業績を伸ばしている同社製自動車の電装品を一手に引き受け、機能、性能、品質、コストの厳しい要求に応えていく有形無形な環境が、基礎的な技術開発を促し、製品化技術を磨くことにつながったと思います。これにより、益々発注者側の信頼を増し、業績が向上してきました。日本電装は、トヨタばかりでなく世界の自動車メーカにも部品を納入していますが、要求の厳しいトップ企業との取引を通して、お互いに良い影響を与え合い、Win-Winの関係が成り立ってきました。言い換えれば、サプライヤにとっては、トップ企業との取引をすることで自社の競争力を向上させることができるということです。日本電装のみならず、トヨタ系例のアイシン精機も同様ですが、高い競争力を持つに至った背景には、トヨタとのWin-Winな取引があったはずです。

翻って、サムソン、LGなど韓国の世界的企業とフッ化水素など彼らの半導体、有機EL製造に必要な設備、部品、素材を供給してきた日本のサプライヤとの関係です。切磋琢磨するなかでWin-Winの関係を築いてきた日本のサプライヤは、今回の処置で販路が狭まるばかりでなく、腕を磨くチャンスを失うことになりかねません。輸出承認の厳格化を打ち出した経済産業省はこの辺の事情を考慮したのでしょうか?考慮したうえで、様々な事情があるにせよ、直情径行で国際間の約束を平気で反故にする韓国の所業に堪忍の緒が切れた?嫌韓で盛り上がる(メディアが盛り上げている)風潮を見て、イケルと政治判断したとしたら、あまりに視野が狭く、次元が低すぎるでしょう。

内製化の問題
今回の騒動を機に、韓国が内製化を志向することは十分考えられます。自国開発のフッ化水素を生産ラインに投入したというニュースもありますが、品質の高い半導体、有機ELを作るに必要な高純度のフッ化水素は、そう簡単には作れないはずです。しかし、必死になっている相手を侮ってはいけません。何年かかるか分かりませんが、プライド高き国民性を持つ韓国、国を挙げて自国生産を目指し、一定の品質を持つものを製造できるようになる可能性は0ではありません。その時、日本のサプライヤは・・・
 

お互いに相手が疲弊するのを待つ我慢比べでは、Win-Winどころか正反対のLose-Loseになってしまいます。我慢比べしている間に中国が漁夫の利を得るかもしれず、そうなりつつあります。

 

※質問はosugisama@gmail.comにどうぞ!

※リブログを除き、本ブログの無断転載、流用を禁じます。