業界業種によって省略語があります。特にコンピュータ用語はその成り立ちから英語をそのまま使うようになりました。リラン(re-run)は、やり直しのこと、デバッグ(de-bug)は、コンピュータプログラム(情報システム)中のバグ(欠陥)を発見および修正し、動作を仕様通りのものとするための作業のことですが、見直し、修正とは言わずデバッグと言い、今でもそのまま使われています。そもそもコンピュータ黎明期の昭和40年代は、コンピュータではなく、電子計算機と呼んでいましたが、いつの間にかコンピュータになり、電子計算機という言葉は聞かれなくなりました。コンピュータのように発祥が英語圏である場合はやむを得ませんが、もう20年くらい前から日本語で言えばいいものを英語ではない和製英語のカタカナを使う場合は多くなっています。特にここ数年は、その傾向が強くなっています。

 

 コロナ禍で店内で食べずに持ち帰って食べることが多くなり、これを持ち帰りとは言わず、テイクアウトと言っていますが、これは和製英語。持ち帰りは、米国ではto go 、英国では take awayと言い、take outを使う場合には、後ろに食べ物の名前をつけ、take out pizzaのように形容詞として使うのが普通で、英米でtake outと言っても通じないとのこと。もっとも、食べ物を買っている場面でtake outと言えば、日本人(外国人)ということもあり、意図を理解してくれるようです。キャリアやスキル、ノウハウなども、もはや日本語化してしまい、知識、経験、技術などと言い換える方が不自然になってしまっています。

 

なんだかその方がスマートな気がするせいもありますが、かっこ良く見せるという面もぬぐえません。ケースバイケースも似たようなものですが、これを普段使っている場合によるという意味で使うと英米人には伝わりません。彼らネイティブには、It depends on~というべきでしょう。オッと、ネイティブと言ってしまいました。その言葉を母国語とする人たちという意味で使っていますが、これも日本語化してしまった英語単語の一つです。

 

しかし、クレーム同様、かなり浸透している言葉ではあります。苦言、苦情、文句という意味で使っているクレーム(claim)は、要求する/バッケージ主張するという意味で、苦言、苦情という意味では、complaintを使わなければなりません。claimを苦言、苦情、文句という意味で使っていると、空港などの手荷物を引き取る場所をいうbaggage claimの意味が分かりません。この場合のclaimは、機内も持ち込めずに預けておいた荷物を渡してもらう返還を請求をする場所という意味になります。日本ならクレームをつけると言う日本語になっているので通じますが外国ではclaimではなくcomplaintを使わないと意図が伝わりません。

 

この他、アジェンダ、アライアンス、フィードバック、アサイン、ベンチマークなどもコンピュータ業界のみならず、一般化して使われていますが、新しくリリースされるOSの性能評価をしていたことがある私は、ベンチマークテスト用に極端にI/O回数の多いジョブ、I/Oを発行せずCPUだけを使うジョブ(CPU利用率100%ジョブ)、スタートしてすぐ終了するスタートストップジョブなど何種類かの評価用標準ジョブ(ベンチマークジョブ)を作った記憶があります。この時は、株の指標にもこのベンチマークという言葉が使われているとはつゆ知らず、ベンチマーク、ベンチマークと連呼していましたが・・・あまりにも一般化したこれらはともかく、マター(matter)、イシューissure)、となると、会話の中ではあまり使ってこなかったこともあり、誰かが話しているのを聞くとしっくりきません。まず、マターから。

 

マター(matter)・・・

For us it is a matter of life and death. われわれにとっては死活問題/She had an urgent matter to discuss with me. 彼女は、私と話す急を要する件があった、などと使われ、案件、事柄、問題、原因などの意味があります。日本では『これ○○君マター』などと使われ、『○○君の担当』という意味に使われていまが、無理して使う必要のない際たる言葉の一つで、日本語で『○○君の担当』、『××君の問題』、『営業一課の案件』などと使えばいいだけのこと。日本人同士の会話なので敢えてマターなどと使わない方がベター!!です。

 

イシューissure)・・・
Prime Minister Suga issued several orders/The trouble issued from Sinzou Abe lack of his knowledge/today's issue of Asahiなど、他動詞、自動詞、名詞などとして使われ、命令する、起こる、出来事を意味します。一般会話で使われることはありませんが、コンサル系の友人と話をする場合、時々彼から発生られることがあります。どうしてわざわざイシューという言葉を使うのかを聞くと、その様な言葉を発するとを歓迎する雰囲気がある顧客がいるとのこと。いつの間にか、普通に使うようになってしまったと言っていました。イシューではありませんが、私にも経験があります。それは国鉄民営化直後のJRと意見交換の際、基本設計や設計思想を意味するアーキテクチャという言葉を使ってしまいました。本来、建築、土木の領域で使われるこの言葉ですが、コンピュータや情報システムでも盛んに使われており、それがいつの間にか染み付いてしまい、門外漢に対して無意識のうちに使ってしまいました。JR九州の当時の社長に、『我々はアーキテクチャと言われても分からない!』と注意されてしまいましたが、誰に向かって話すのかを話す前に心しておかなければならないこと、適切な日本語がある場合には、それを使うことを改めて認識した次第です。

 

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