コロナ騒動で世界的な規模で人と物の動きが止まり、経済が冷え込み、倒産する企業が相次ぎ、失業率も大幅に上昇しています。失業率が14%台になった米国では、トランプの再選が危うくなり政治の世界に影響を及ぼし始めています。Gallupの調査によれば、各国のリーダの支持率がコロナ対応に的確、迅速であったかが反映されていることがわかります。

そんな中、企業、特に脆弱な経営基盤の中小中堅企業は、生き残りをかけた対策が必要になります。経営計画は無く(作りようがなく)、独自の技術や製品もなく、ただひたすらに大手の下請けとして真面目にやってきたのが取り柄という企業が少なくありません。こういう企業でも、生き残り戦術として、ITとかAIとかを適用した作業効率の向上が取沙汰されています。政府が旗を振る生産性向上とか働き方改革も少しは関係するかもしれませんが、政府が中小中堅企業を大事にした施策は表面的にはあるものの、単なる補助金(ひも付き?)程度のもので体質改善などの根本的なものが根付くような支援策ではなかったのが過去の例です。有識者と称する現場の痛みを知らず、泥も被ったことがない机上の空論を重ねる先生方が出す案なのでそんなものかと思いますが、これでは血の通った政策など出てくるはずがなく、仮に出てきたとしても学者に輪をかけて現場を知らず、机上で考える下々の痛みが分からない官僚達によって都合よく書き換えられてしまうでしょう。

 

では、どうしたら良いのでしょう?簡単です。自分で考えるのです。そんなことができるはずがないと思いがちです。しかしそうではありません、日々の忙しさのなかで、せっかく持っている知識・経験・知恵を発揮していないだけです。長年の実務で培ったそれらを活かして少し考えれば、お金をかけずに有形無形な働く環境を改善することができます。ただし、パラダイムシフトが必要です。長年続けてきた作業を改めて見直すという気持ちになることはあまりありませんが、コロナ禍で少しは時間ができた今がそのチャンスです。事例を挙げて説明しましょう。

 

普段ニュース以外はテレビを見ませんが、ある時、“大企業の経験を中小企業に活かす”というタイトルに惹かれて見たことがあります。一般的には、大企業の経験をそのまま諸条件の違う中小企業に当てはめるには無理があります。歴史、仕事の仕方、組織、人材、教育などの違いを考慮せず、“コーすべき”、“アーすべき”に始まり、『どうしてコレができないの』となってしまいがちです。私の経験では、同じ目の高さどころか、一段下がって観察する気遣いが必要になることが多々ありました。今回の事例は、作業場のレイアウト変更/意識改革/組織を風通し良く/標準化といった、大企業ならではのノウハウではなく、極一般的な指摘と改善策でした。すなわち、当たり前のことをやっていなかった(やれなかった)ということです。やっていなかった理由は、創業者がトップにいることが多い中小企業特有の“言われるままにやっていた方が楽、角も立たない”、 “創意工夫や改善提案を提言すると生意気だと思われる”という日本人にありがちな意識が根底にありました。

 

紹介された事例では、現場経験豊富な大企業出身のコンサルタントがトップの悩みを聞き、作業現場を観察し、社員の動きをチェックすると同時に、トップには言えないが改善したいこと、問題と思っていることを社員から聞き出し、予算、時間、手間的に実行可能な案を提示し、トップの理解を得て実行していました。放映されているのは巧く行った事例だけなので、全てがこのように進むことはないと思いますが、参考にはなります。



総じて言えるポイントは、以下のとおりです。
①利用頻度が少ない機械が置かれ、狭い作業場が余計に狭くなっている
②作業の順序、内容を考慮していない作業場のレイアウト
③社内ルール、標準化ができていない
④製造業が発祥の5S(※)は、どの業界業種でも必要

 

①、②に共通しているのは、思いついた都度、屋上屋を重ねているうちに、このような状態になったということです。全体を俯瞰し、作業パスを考え、生産性向上、ES(社員満足度)を上げる施策をコンサルタントが指南していましたが、図中にも書いたとおり、専門家でなくても容易に考えつくことです。言い出せる雰囲気を作りだし、定着させるにはトップの意識改革が必要になります。③は上意下達の徒弟的な仕事の仕方の伝播方法が依然としてあることの裏返しです。また、標準化することの意味が理解されていないこともあります。④の5Sとは、整理+整頓+清掃+清潔+躾けの頭文字をとったもので、製造業では生産性向上が叫ばれ、CAD/CAM、CIMの整備と共に当時ブームになった考え方です。言わんとするところは、機械を導入し自動化したり、情報システム(IT、AI)を導入しても、基本中の基本であるこの5Sを守れない職場では十分な機能を発揮できないということです。

 

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