文部科学省が。小学生からの英語教育など、学習指導要領を改定しました。少し前のニュースですが、コロナ禍で休校している小学校があるので、今日はそれをブログのネタにします。

改定された中に、小学生からプログラミング教育を行うというものがありました。趣旨は、①順序立てて考え、②試行錯誤し、③ものごとを解決する力を養うための手段としてプログラミングを教えるとのこと。パソコンを操作するスキルを身に着けるという即物的ではないだけ良かったとは思いますが、順序立てて考え、試行錯誤し、ものごとを解決する力を養うのにプログラミング教育とは!誰が考えたのか分かりませんが、多分、現場でプログラムを作ったことがない有識者と称する机上の空論家、現場を知らず、机上から現場を想像しながら考える官僚ではないかと想像します。長年この世界でメシを食ってきた者が考えるに、順序立てて考え、試行錯誤し、ものごとを解決する力を養うには、プログラミングまでいかずにその前段階のフローチャートの方が適しています。

・物事を体系的に整理する
・物事を筋道立てて矛盾がないように考える

・理論に当てはまっていく様子

・筋道が通っているかを考える習慣を作る

には、フローチャートはもってこいです。これは取りも直さず、業務内容(仕事のしかた)そのものです。小学生に業務と言っても何もありませんが、SE一年生にフローチャートを描かせるのは、家を出てから会社に着くまで、会社が終わって家に帰るまでを描かせるというものです。交通手段だけを考えても、徒歩、バス、電車があります。バス停まで行くにも様々な判断があります。家を出るのが何時もより遅かった、歩行者用信号が点滅していた、バスの時刻を勘案し、早歩きで渡るか待つかを決める等々です。バス停についてからも、バスが来るまで待つ⇒渋滞で遅延する⇒駅まで歩くかバスが来るまで待つかを判断する(この時、電車の時刻、当日の天候、体調などを考慮)など、判断があります。これをフローチャートで描き表すことで、起こり得る場面を想定しつつ、必要な情報を得て、適宜判断するという、順序立てて物事を考える勉強になります。

 

小学生の場合でも同じです。家を出てから学校に着くまで、授業の開始と終わり、お昼休み、授業が終わって家に帰るまでを描かせてみるということになります。フローチャートの記号などは必要最小限にし、判定子の意味などを教えれば可能です。フローチャートを書かなくても、順を追って箇条書きで書かせるという方法もあります。これによって、やろうとしていることに順番があり、その順番を守らないと目的を達成することができないということが分かれば、基本的な理解はそれで十分です。あとは、入浴する際の順番、分からないことがあたった時の調べ方など、いろいろな場面を想定すれば数限りなく訓練することができます。面倒なプログラムミング言語の文法を覚える必要もありません。テンプレート一枚を与えれば済むので費用もかかりません。
製図・設計 テンプレート ―その他―井上製作所

そもそも、プログラミングを教えられる先生がいるのでしょうか?教員を教育して指導に当たらせるには時間が足りません。そもそも、付け焼刃の急ごしらえでようやく習得した知識で教えられるはずがありません。生徒が迷惑だし、先生はストレスが溜まります。では、現役プログラマを臨時講師に充てるか?教育の仕方、特に小学生に教える難しさを知らない臨時講師にできるはずがありません。そもそもテクニックを教えるのではないことに注意が必要です。教師を教育して教えるか、専門家を起用するかですが、いずれも一長一短があります。だからこそ、プログラミングなどではなく、視覚的にも常識的にも分かりやすいフローチャートがお勧めです。フローチャートだったら、設備(パソコン、タブレット、ネットワーク)がいらないし、教える側に専門的な知識も入りません。道具はホワイトボード、鉛筆と紙でOK!テンプレートの定規がなかったら手書きでも十分です。

小学生ではありませんが、私が病院の業務全般を処理する統合情報システムを構想した際に考えたのは、看護師、薬剤師、栄養士、臨床検査技師、医事会計課員など、現場の皆さんに、毎日やっている業務のフローチャートを描いてもらうことでした。毎日やっていることを改めてフローチャートで描き表すことに面喰っていましたが、無意識のうちにやっていたことをフローチャートで描き表すことで、無駄だったことや、属人的になっていたこと、判断基準が違うことなどが明らかになり、作業品質が向上すると共に作業の統一(標準化)が図られ、システムの仕様書に反映できるまでになりました。



このフローチャートを描くことによって、改善点を見つけることもできます。

フローチャートを描くことによって様々な効果を期待することができることが理解できたと思います。小学生でも同じです。学習指導要領に掲げる

・物事を体系的に整理する
・物事を筋道立てて矛盾がないように考える

・理論に当てはまっていく様子

・筋道が通っているかを考える習慣を作る
が身に付きます。プログラミング教育ではなく、設備も技術的なノウハウも入らないフローチャート訓練を勧めます。
 

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