外部のコンサルタントに『アレおかしい、コレおかしい』と指摘された経験を持つ方は多いでしょう。経緯を知らず途中から入った後出しジャンケン的コンサルタントは、特にこの傾向があります。依頼主の意向を受けてことさらに強調するのも特徴的です。教科書的というか、現場を知らずに、あるいは成功条件が違うのに、鬼の首をとったかのように持論を並べ立てるのには閉口します。20年前のことですが、クライアントである医療機関で当時としては珍しいグループウェアを導入したことがあります。このとき、このグループウェアの会社から事例紹介のためのインタビューを受け、その中でコンサルを引き受けた経緯につき質問され、以下のように答えました。
~~~~~~~~~~~~
一概には否定できない例外処理がたくさんあり、職能が明確に分離し、役割がはっきりしていて相互不可侵の状態だし、医師を頂点とした職能間の従属関係もきついと思っていたので、病院業務にBPRはなじまないと考えていました。ところが経営層と議論してみると、この病院ならBPRは可能ではないかと思うようになりました。ポイントは、病院の経営中枢が、”システムの前に、業務の改革が必要なこと、システム化はそれから取り組んでも遅くはないし、むしろ着実に浸透する”というポリシーを持っていたことです。『BPRとその結果を踏まえたシステム化により、職員の作業負担が軽減される。結果として患者様と接する時間が増え、患者満足度が向上し、病院に対するロイヤリティも上る』 というシナリオも、ITに対する付和雷同が多いなかで地に足がついていると感じました。何かと話題になっている電子カルテについても、現状では医療現場が使える状態ではないことで一致しました。また、業務改革には職員のマインドの醸成が必須ですが、そこの部分も含めてやりたいとのこと。我が意を得たりとして引き受けすることにしました。
~~~~~~~~~~~~
ポイントの一つは最初に答えた、“一概には否定できない例外処理”です。『~すべきだ』、『~に無駄がある』など、指摘できることはあるものの、日々の作業を続けるなかで工夫された現場の実行可能な最適解”であることが多く、一概には否定できない作業があるということです。これを、上意下達で一方的に修正させるのでは陰に回っての反発があり、業務改革にドライブがかからず、面従腹背が生れます。一方、経緯を把握したうえで、それでもやはり無理無駄と思われるものがあれば、どうオカシイかを説明し、納得してもらい、改革、改善に結びつけます。重要なのは説得ではなく、自主的な納得です。その過程で意識改革も可能です。その一つで分かり易い事例を紹介します。問診時に記入する連絡先の人物に関する情報を一新した例です。

《従来:入院時の必要となる連絡先(人)に関する情報として
・海外に住んでいるか
・同一敷地内に住んでいるか
・何親等か
これを聞いてどうするのか?と思うものですが、患者さんについて何かを連絡する際に考慮する情報とのこと。知りたいのは、何かあった時に連絡する際に考慮すべき患者さんとの間柄なので、次のように変えました。
《変更》
・家族
・親族
・友人
当たり前のようなことでしたが、この種のことは数え上げればキリが無いほどありました。それだけ、『前からやっているから』ということで、疑問を持たず現在に至っているものがたくさんあるということです。手間はかかるものの、その都度、どうしてそれがおかしいのか/どうすれば良いのかを根拠を示して丁寧に説明し、順次パラダイムシフトして変えてもらいました。


往々にして、質問に明確に回答(説明)できないもの、昔からやっているからというものは改革、改善対象になります。しかし、最も改革改善の対象になるのはトップの意識です。これを改革改善の対象から外してしまうと、やがて抜け殻になってしまいます。特に創業者が経営陣で居続ける中堅中小企業、民間病院ではそれが言えます。また、『良きに計らえ』で、意識改革、体質改善という意識からほど遠い経営責任の希薄な自治体立病院(の経営陣)にも言えます。しかし、トップの意識改革、言うは易く行うは難し⇒誰が猫の首に鈴をつけるか?北朝鮮のように銃殺刑になる可能性の高い組織の中では、外部のコンサルタントが一番言える立場です。ただし、ほどほどにしないと・・・

 

※質問はosugisama@gmail.comにどうぞ。
※リブログを除き、本ブログ内容の無断流用を禁じます。