コールセンタに寄せられるクレームは宝の山と言われるほどですが、建設的な意見・要望はもちろん、苦情から改善のヒントが得られることもあり、病院、自治体、スーパなどでは“ご意見箱”が設置され、吸い上げを図っています。よく出掛けるスーパでは、寄せられた意見・要望・苦情に回答を書いたうえで掲示しています。参考になるので見ることにしていますが、なるほどと思うことや、これは随分勝手な主張だなぁ、と思うものなど多種多様です。投書する方の性格の悪さ、品のなさを荒らしているかのような、“買ってやっている”、“他に行ってしまうぞ”的なものは、何だかガッカリしてしまいます。売る側は買う側のニーズを捉えて品揃えして提供し、買う側は適正な価格でそれを購入し、ニーズを満たすということですから、一方的に得したり、損したりすることなく持ちつ持たれつの関係ではないかと考えています。ちょっと横道にそれてしまいましたが、寄せられる苦情、意見、要望をの中に特定の人物がいることが多々あります。大勢ではなく、普遍性もないけれど、その方の感性というか視点からすると問題であるということなんでしょう。対応を誤ると益々エスカレートするので、『ご指摘の件、誠にごもっともです。今後改善に努めます』などと回答しているようですが、何をしてもクレームつけたがる人物の場合には、改善が見られないとして、しつこく畳重ねてくることもあるようです。性格というか、世間に認められないことへの憂さ晴らしな面が否めない文字通りクレーマです。

 

さて、情報システムを開発する過程をみるとどうでしょう。特に仕様を決める場合、中でもユーザインターフェイスを決める場合に趣味趣向が出てくることがあります。その趣味趣向のセンスが悪く、且つ全体の設計思想に反することがあります。この時、主張する人物が権限を持っている場合の対応は非常に厄介です。機嫌のいい時を見計らって幾度となく説明しても、自分の意向が反映されないとテコでも動かない(納得しない)という場合です。プライドというかメンツが保てない、沽券にかかわるといったところです。

仕様を決める際、この種の人物が持論を主張してきたために、仕様が纏まらず、困った経験をした方は少なくないのではないでしょうか。一家言を持ち、経験を活かしての建設的な要求や指摘なら問題なくむしろ歓迎が、この種の人物は往々にしてそうではありません。要するに、前述のクレーマに近い存在です。表だっては賛意を示すものの、裏では足を引っ張るという面従腹背な場合もあります。丁寧に対応しても、適切に反応しても、いずれもダメ。その主張を取り入れることがシステムにとって望ましくないことを理路整然と説明しても納得しないどころか、反論できないことから更に意固地になってしまうこともあります。処置なしですが、ここで妥協をすると将来に禍根を残す場合には、足を引っ張られることを承知でも、強行突破です。先方の意向を少し反映して足して2で割るなどという折衷案は避けないと、統一すべきユーザインターフェイスが不揃いになってしまいます。日ごろ使わないのに屁理屈をこね、理不尽な主張をする人物より、いつも使う医師、看護師、検査員が良い仕様にするのが私の方針です。現場感覚を尊重する友人のコンサルタントも同じ方針ですが、彼から送られてきたメールにもそれが書いてありました。

ユーザインターフェイスのみならず、システム化対象業務のBPRでも、今までの仕事を積み上げてきた皆さんから異論、クレームが出ることが往々にしてあります。頭をもたげてくるこれら守旧派層をどうさばくか。問われるのが、確固たるポリシーと使命感を持ち、硬軟両方で対応できるプロジェクトリーダの力量です。


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