有限予算、有限時間の中でプロジェクトを支障なく進めるには、有形無形を問わず必要なリソースはじめ、利害が入り混じる中でのネゴシエーション、潜在を含むメンバの力量、性格、人間関係を把握しておかなければなりません。また、遂行中に発生した問題に対処するのはもちろん、できる限り早くその予兆を見つけ、芽を摘む能力の高さも求められます。この様なことを行うための力を養えると称する様々な研修や書籍がありますが、私は研修を受けたことはないし、書籍も読んだことがありません。なぜなら、わずかな経験を針小棒大に脚色して話す講師や著者がほとんどで、実戦経験豊富な人物が教えたり書いたりしていないからです。研修を受けたり、該当する書籍を読まなくても、それがために(知識・経験・手法を知らないために)、問題になったことはありません。大小、簡難を含み、自ら経験し、実戦で鍛えた結果、自然に培われたプロジェクトマネジメントのノウハウを持っているからです。友人のコンサルタントはほとんど持っています。そもそも1回や2回、数時間、数日の研修を受けたり、Howto本を何冊か読んだところで実戦で使えるノウハウが身につくはずがないという当たり前のことを考えれば自明です。以下は、ある大手SIerの研修案内ですが、1日で履修できるそうです!

多数の情報システム開発プロジェクトを取りまとめてきた経験を通して言えるのは、プロジェクトマネジメントのための目から鱗のような特別な方法や手法はなく、業務の第一線で仕事をしてきた者が実践を通して身につけた(ついた)有形無形な様々なリテラシと常識のなせる業=プロジェクトマネジメントということです。

 

もし、ポイントがあるとすれば、それはプロジェクトメンバからの信頼(人望)を得ること、メンバの力量・性格を把握する能力、必要に応じた教育(意識改革、基礎知識、基本リテラシ)できること、それにシステムが対象とする業務に関係する有形無形なすべての環境の理解(俯瞰力)といえるでしょう。この中で、無形だけれど重要なものは人望だと考えています。強権を振り回さなくても、強制しなくても、“この人なら信頼出来ると思わせる見識、姿勢、雰囲気を持つリーダ(人望あるリーダ)になってこそ、そのプロジェクトを纏めることができると言ってもいいかもしれません。プロジェクトリーダを命じられたら、まず、この人望があるか否かを自問自答しましょう。

 

問答無用、上意下達で有無を言わさず従えさせ、従わなければマイナス査定、降格、配置転換を含む強権で臨むという雰囲気を漂わせ、恐怖を背景に統制を図るのでは、プロジェクトのマネジメントができているとはいえません。権威、職位を背景にし、質問が憚れる状況下での押し付け主張、発言途中なのにそれを制してコメントしたりするのはその典型です。この種のタイプのリーダは、リーダとは言わず、立場を利用した唯我独尊の独裁者と言うべきで、ヒトラー、スターリン、フセイン、カダフィ、北朝鮮総書記はその代表です。国レベルでの問題ではないものの、創業者が仕切る中小企業、医療機関でも同様なことが散見され、実際に経験してきました。特に医療機関では患者さんの生命を預かるという美名の下で、絶対的な采配をふるう層がいます。誰も制御できず(手がつけられず)、往々にして専制君主(裸の王様)になっていると感じます。
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一方、良い方向にいけば、これほど統率がとれ、ロスの少ない効率的な指揮命令系統を持った組織、プロジェクトはありません。しかし、悪い方向にいけば顔色を伺う面従腹背の暗い雰囲気を持った組織、プロジェクトになってしまいます。取り巻きができて、彼らが虎の威を借りて振る舞うという事態も起き、更に陰湿になり、活性化されたプロジェクトとはほど遠い状況になってしまうこともあります。プロジェクトメンバが忌憚なくものが言える雰囲気が醸成されていて、リーダには意見を受け入れ正しく評価できる能力と、的確で具体的な指示ができる能力があってこそ、プロジェクトマネジメントが巧くいくと考えています。

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