日本の電力会社の供給する電気の周波数は99.9999%の高い精度を保っているそうです。これは、同期式モーター(Synchronous motor)のように、周波数が一定の範囲内(精度内)で安定していることを前提とした器械があったからと言われています。しかし、いまや多くの機器が供給される電気が必要以上に精度の高い周波数であることを必要せず、また内部で電圧の自動調整を行う回路を備える電気製品が主流となり、少しくらいの周波数の変動、電圧の変化は多くの機器では全く影響しないような設計になっていると言われています。もちろん、精度が高いことに越したことはありませんが、状況が変わり、もはやそれほど必要とされていない昔のパラダイムをそのまま引き継ぎ、誰もそこまで要求し、期待していないのに頑張っている皆さんがいます。律儀な日本人の最たるものですが、費やす手間と得られる効果を見比べるべきことだと思われます。
 

ある病院の大規模システムをスクラッチで開発するプロジェクトを指揮を執っていた際、その作業の必然性が不明確なまま昔から引継がれた作業が散見されました。医療過誤を起こさないために必要と判断されたもの以外は、その必然性があるのかどうかをヒアリングしながら見極め、不要と判断したものは仕様から外し、システムに反映しないことにしました。これはBPR作業の一環ですが、この作業の難しいところは、今までやってきたからという意識を変えてもらうことです。BPRの前に意識改革が必要な所以です。本当に必要か、電力の周波数や電圧変動のように、かつて必要だったものが環境の変化によって不要になっていないかどうか?これらを指示される前に自問自答できるまでになっていることが望まれます。しかし、自治体、医療機関など、役人体質、権威のピラミッド構造、旧態依然とした指揮命令系統が色濃く残っている組織では、総論賛成、各論反対や、面従腹背があり得ます。問答無用の上意下達で上から押さえ込み、主旨、意義を理解する間もなく、無理矢理従わざるを得ないということもあるのがこの組織の特徴です。

 

サラリーマン川柳に “無礼講、新人だけが本気にし”というものがありますが、忌憚ない意見をと言いながら、都合の悪い意見がだされると突然機嫌が悪くなったりする上司やトップがいます。“物言えば唇寒し”でもあり、自由闊達な意見交換ができない雰囲気になっている組織が往々にしてありますが、この様な組織で最初に行うべきは、トップをはじめとする経営層の意識改革でしょう。

関係者が強制されずに積極的に理解し、無意味なことだと判断したら、廃止できるようになって欲しいものです。私の関与したプロジェクトでは、このようにならないような雰囲気を醸成することに注意して臨みました。

 

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