人工知能領域で知名度の高いレイ・カーツワイル(Ray Kurzweil)氏が、『人工知能は人間の生物学的総知能と同等になり、2045年には人間を凌駕し、独自に考えるようになる。この時、社会は根底から覆る。これを特異点(シンギュラリティ)と呼ぶことにする』と宣たまわりました。

それだけではなく、人間の脳をそのまま人工知能に移し替えることも可能とも言っています。これができれば、自分が2人いることが可能になります。人工知能を動かす環境には人間のような寿命がないので、不老不死を手に入れたことにもなります。すなわち、もう一人の自分(脳)が人工知能環境の中で生き続けるわけです!話としては面白いものの、文字通り荒唐無稽という言葉がピタリ当てはまり、もはやアジテータに近いと言わざるを得ないと思っています!レイ・カーツワイル氏は、豊富な資金を持つGoogleと組んで研究をしているようですが、まーやってみたらいかが、お手並み拝見といったところです。

 

普通に考え付くシステムでも、AIがやったという形容詞を付けると目新しいように思えてしまいますが、メディアはそれを期待し、狙い、煽ります。その結果、AIは人間同等以上のことを人並み以上の品質でやってのけるという固定観念ができつつあるのも事実です。今問題になっている就職内定者が内定を辞退する確率をAIで予測した情報を有償で提供するというリクルートのサービスが物議を醸していますが、これはAIでもなんでもなく、単に確率統計処理です。A社から内定を得ていた者が、辞退する確率を過去のデータを統計処理して得られる確率を内定辞退率とするもので、AIでもなんでもありません。統計処理するデータは、大学、出身地、家族情報、アンケート回答結果etcであることは容易に想像できます。まさか、血液型、干支、星座情報はないと思いますが・・・

NHK、朝日など一定以上の信頼を寄せてるメディアでさえAIが予想する辞退率などという始末!不勉強の極みです。『AIで』がキャッチになり、それで視聴率が上がる、読んでもらえということかもしれませんが、最近の嫌韓本、報道も似たようなところがあります。なお、AI研究の第一人者で、東大に合格することを目指す東ロボ君プロジェクトの陣頭指揮を執っている国立情報学研究所の新井教授が、東大合格を諦め、且つAIではなく確率統計!と言い切っているのは救いです。

 

前置きが長くなってしまいました。今日のブログのタイトル名に掲げたユースレスクラス(無用者層)に話を移します。ユースレス(useless)は、ユースフル(usefull)の反対語で、役立たず、無用な、という意味です。それに分類される層が無用者層ということです。一体、誰がそのような判断、分類をするのでしょう?そもそも、優生思想に染まった者以外、この世に生まれてきた人間で、無価値な存在はないというのが常識人の理解です。LGBT、少数民族など、マイノリティの人権を尊重する最近では、益々そのような価値観が広まる傾向にありますが、これに反するのが、AI(という名の確率統計処理して作られたルール、判定基準)で人工的に選別するというものです。リクルートの内定辞退率予測サービスはその典型です。

そんな中、世界中で1800万部も読まれ、オバマ大統領など各国政治家、企業経営者が読む本の著者でイスラエルの歴史学者ハラリ氏が、人工知能(AI)が人を選別する世界を危惧しているという記事を見つけました。『AIとバイオテクノロジィ、生体認証などの融合により、歴史上初めて、独裁政府が市民すべてを常時追跡できるようになる(朝日2019/9/8)』というものです。ハラリ氏は、テクノロジーと独裁が融合した時に起きる危険性につき警鐘を鳴らしています。戦時中にナチスが行ったT4作戦(クリック)は、ユースレス(役に立たない)とみなした障碍者を安楽死(実際には毒殺)させるものでしたが、ユースレスとみなされた20万人(諸説あり)近くの国民が、ナチス(国)によって殺されてしまいました。日本のハンセン病患者に対する重大な人権侵害も同じような発想で生まれた施策だと思われます。ナチス、日本共に、その時代にはAIなどというものはなく、人が見て判断していたと思いますが、ハラリ氏が懸念するのは人ではなくAIに判断させ、その結果を利用するのが独裁側だった場合です。前述のようにAIでは確率統計と言いましたが、判断ルールの中に独裁者の意向を組み込むことは可能です。

例えば、犯罪者は元より、政府にたてつく者は無用とする判断を入れることが可能ということです。犯罪を犯したはずなのに、無罪とすることも可能です。例えば、森友加計の文書改ざんに関わった官僚が不起訴になったような判断ルールです。時の政権、独裁者がAIと言う名の意図体な判断基準を入れ込めば、反対派を効率よく駆逐できます。世界の独裁者、独裁国家がAIと言う名の道具を使わないよう願いたいものです。無理かもしれませんが・・・

参考:監視カメラ社会の功罪/中国の場合

 

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