そもそもイージスシステムとはなんでしょう?レーダーなどのセンサーシステム、センサが捉えた標的を迎撃するための方向、角度などを高速に計算するコンピュータと、その指示従ってミサイルを発射する装置から成る迎撃システムです。この装備は一般的には軍艦に装備され、イージス艦として呼ばれているのでおなじみです。

《健康への影響》

この設備を軍艦ではなく、陸上に置いたのが陸上配備型イージスシステムと言われるものですが、陸上配置型のイージスシステムのレ-ダは生命に危険を及ぼすほどの推定2GWもの超強力な電波(電磁波)を発生させるので、人家までの距離については相当気を遣わなければなりません。ロシアが発射するミサイルを迎撃するためにルーマニア、ポーランドには既に配備されている陸上イージスシステムでは、人家から4~9km以上離れて建設されています。

これに対して日本は10分の1以下の230m。防衛省は安全と主張する定量的根拠を示すべきでしょう。もちろん、使った数式、計算項目に代入した値を公表すべきです。何しろ携帯電話でさえ耳に当てて通話している際の頭への影響が懸念されているのだから!宇都宮大学の上村教授が測定した結果で分かっています。SAR(※)値の分布は以下のとおりです。※人体がある電波を発する機器から、一定時間にどのくらいのエネルギーを受けたのかを表す指標

米軍が運用しているXバンドレーダーが運用されると、周辺を飛んでいる航空機、ヘリコプタは影響を受けることは知られていますが、実際にドクターヘリが飛べない事態が起きています。急患時は実際に米軍に運用を一時止めてもらう処置をとってもらいますが、なかなか止めてもらえず、患者搬送に時間を要する事態も起きています(クリック)。陸上配備型イージスシステムでこれと同じ状況が起きることは容易に想像でき、秋田県では対策を検討していますが、そもそもこの様な事態が起きることが想定される場所に設置すること自体が間違いではないかと思うのが普通です。

《陸上イージスではなくイージス艦》
そこまでして陸上にこだわるのは何故かわかりませんが、6千億円もの巨費を投じ、適地を選んで建設しなければならない、緊急性はどこにあるのか?国防上の必要性を強調するのが常ですが、場所は固定され、相手に分かっている陸上イージスシステムは、相手方の標的になることが確実です。飽和攻撃を受ければ瞬間的に迎撃機能を失います。これに対して海上を自由に移動し、偵察衛星でも使わない限り、位置が特定されないイージス艦は攻撃対象になりにくいことは誰でも理解できることです。


適地選択に困り、万が一の際には最初の攻撃対象になる陸上配備ではなく、6千億円で一隻約1700億円と言われるイージス艦を3隻建造した方がはるかに抑止力になります。どうしてこれができないか?防衛省の苦しい言い訳は、艦船の運用に人が必要になる、補給のための入港、定期点検のためのドック入りする期間、迎撃能力が落ちる。陸上イージスにはこれがないので、運用面で楽になるとのこと。
一見なるほどと思いますが、住民説明会の席上、『攻撃対象になりやすく危険ではないか』という住民の質問に、防衛省官僚が『防ぐのための要員を増やします。対策を立てます』と言ってしまいました。陸上では施設の守りをするための保安要員はイージス艦乗組員と同等、あるいは上回るが200~300名となります。通常勤務の隊員を兼務させるという案もありますが、それでは従来の業務に支障がでます(手薄になります)。人員的に問題という防衛省の説明は根拠のないものとなってしまいました。入港、ドック入り間に迎撃能力が落ちるという主張は、3隻増加すれば、既存の6隻と併せて9隻の布陣となり、迎撃能力を落とさずローテーションができることで一蹴できます。
 

《迎撃成功率》

それに何より重要なポイントは迎撃するタイミングです。北朝鮮がミサイルを打ち上げていた際に話題になったロフテッド軌道の場合には着弾時のスピードは非常に高速で、迎撃が難しいとされています。これに対して上昇中は比較的遅いので迎撃できる可能性が高いことは知られています。つまり、着弾範囲にある陸上イージスからではなく、より発射位置に近い海上に移動できるイージス艦の方が迎撃に適しているということです。

迎撃を主眼に置くなら、イージス艦にするべきだということが素人にも分かります。

《搭載迎撃ミサイル数》
さらに、イージス艦と陸上イージスが搭載可能なミサイルの数に問題があります。陸上配備の方がスペースに余裕があるので、予算の許す限り幾らでもミサイルを用意できると思いますが、イージス艦が約90発に対し、陸上は24発です。北朝鮮が持っているとする数百発のミサイルが同時に襲来した場合には、秋田山口の2ヵ所合計で48発。全ミサイルを撃墜したとしてもとても間に合いません。陸上イージスの予算6千億円で3隻建造し8隻体制になったうち、3隻がドック入りし、5隻が運用中とした場合には、450発の迎撃ミサイルを用意できます。実効ある防衛を考えるなら、イージス艦を増やした方が良いことは自明です。

 

《搭載ミサイル数》

90発搭載できるミサイル(SM3/射程1000km以上)は一発16億円もします。予算の関係で8発しか積んでいないとのこと。これでは、飽和攻撃に対抗できるはずがありません。現状6隻のイージス艦全てが90発用意すると1440億円/隻なので、8640億。陸上イージス予算6千億円を充当してもまだ2640億円足りません。陸上イージス建設どころではありません。国防を考える防衛省は制服組の意見を聞き、商売人トランプに迎合して媚びを売る安倍首相を使命感を以って説得し、予算の使い方を自主的に決めるべきでしょう。

 

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