小渕さんが総理大臣だった時にブチ上げた電子自治体。当時、大本営発表的官製成功事例がNHKはじめ、新聞などで紹介されていましたが、実態は成功どろこか予算と時間を費やした挙げ句、ほとんど使われないシステムや、業務の一部をシステムに載せたためにかえって手間がかかるという代物が多くありました。

業務を分析しないでシステムに載せようとするところに無理がありました。業務を整理整頓し、業務の目的にかなった作業になっているか、作業順になっているかを検証せずに、該当する業務パッケージを捜し、当てはめる(使う)というのだから論外な話です。前回はその典型例を紹介しました(クリック)。

 

山形県は、外務省のパスポート申請支援システムは電子申請システムと言いながら、本人確認や面接が必要なことなど、一連の申請プロセスの実態を踏まえない仕様になっていることが問題だと喝破しました。申請資料を送ったり、パスポートを窓口に受け取りに行かなければならないことを考慮しない部分的な電子化をやってしまったのが外務省。もっとも外務省ではなく、請負ったSIベンダの企画力、提案力のなさが問題なのかも知れません。予算がつき、指示通り作り、動けば問題ないという姿勢が問題ではないかと思います。山形県は、局所的に見る外務省のやり方とは違い、県庁内に散在する業務を分析し、費用対効果に優れた業務は何かを洗い出しました。その結果、パスポート申請支援システムは申請に必要な全手続きの一部しかサポートしていないため、電子的に処理できない作業が多すぎ、部分的に電子化しても全体として評価した場合、効果が少ないと判断しました。



効果を定量化するためには、作業の結果出来上がった成果物の価値を定量化する必要があります。前者は作業時間を積み上げれば容易に分かりますが、後者は難しい作業です。その成果物が何に使われ、その頻度はどのくらいか?また、その成果物がなければどの部門(業務)がどの様な場合に困るのか、困る度合いは?など、評価するルールを決め、調べなければなりません。これはとりもなおさずBPR(原点に立ち返って業務を見直す)を行うことになります。


この時に庁内のステークホルダー同士のせめぎ合いが起き、調整が難航するのは必至です。本来調整すべきことではなく、事実は1つしかありませんが、日本的ではあるものの、“根回し(ネゴシエーション)”が必要になるかもしれません。特に業務を知りつくし、今の仕事のやり方に自信を持っているベテラン職員(いわゆる牢名主)との調整は大変な作業となることは容易に想像できます。この分布図を作った(作れた)山形県の場合、県のCIO的な役割を担う方の指導力と、知事、県幹部の強力なバックアップがあったと思います。この様な費用対効果、実現容易性を業務別に定量的にプロットした図を作ることは、どの自治体でも参考になることでしょう。もちろん、自治体だけではなく、一般企業でも同じことです。

 

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