高齢者による交通事故多発が取り沙汰されていますが、事故は高齢者よりも免許取り立てで、運転未熟&乱暴な運転をする傾向がある10代の若者の方が多いということを意外に知られていないようです。ただし、単純に件数や死亡数ではなく、加害者となったか否か、自動車運転中だったのか、自転車に乗っていたか、バイクなのか、あるいは歩行中に巻き込まれたのかなどの条件を加味しないと、正確に評価することはできません。

 

この様に、発表された数字(表)、グラフを見るときには、どの様な属性のデータを使い、どの様な切り口で統計処理したのかを理解してから評価する必要があります。例えば、表、グラフのタイトル名、項目一覧、縦軸横軸に使ったデータをチェックし、どの様な素性のデータを使っているのかです。できれば原データを見て自分で処理することを勧めます。医療統計なら厚生労働省、交通事故関係なら警察庁のホームページを見れば、そこにExcelで利用可能な形で掲載されているので、それを使って自分の見たい切り口で統計処理し、自分の理解で論評することが望ましいと思います。この辺のことは、統計のうそ/統計値を見る際の注意として既にブログに書いてあります。関心のある方はご覧ください。

 

今回は・・・ある料理学校の先生が発表し、メディアでも取り上げられた、牛乳摂取量の少ない日本人の方が、牛乳をたくさん飲む北欧の人よりも骨折が少ないこと=牛乳を飲むと骨が丈夫になるというのは間違いという件につき調べた結果を紹介します。

北欧のスウェーデンやデンマークでの牛乳、乳製品の消費量は日本の3倍以上ありますが、北欧に限らず、欧米のそれは多いようです。通常、牛乳、乳製品は骨を丈夫にすると言われていますが、牛乳摂取量と骨折との関係のデータを見た料理学校の先生が、摂取率が低い日本人の方が骨折(大腿骨けい部)が少ないと主張しました。本当にそうなのでしょうか?結論・・・この先生は、単純に乳製品と大腿部の骨折との関係との相関を見るだけで、元となる数字の背景、条件を吟味していませんでした。
平均的な骨密度は北欧の人の方が高い
➁北欧の人に大腿骨けい部の骨折が多いのは、脚が長く体が大きいことが原因の一つ

北欧は寒いので、道路が凍って転倒しやすい

④日照時間の少ない北欧では、カルシウムの体内への吸収量が減少 

などという環境の違いを考慮していない考察の浅い結論を出してしまったということです。北海道など日本でも寒い地域との比較をすれば、差が縮まるはずです。これを乳製品摂取量と骨折のグラフを見て単純に関係ありとしたこの料理学校の先生の浅学が分ってしまいます。なお、本件に関し、上述の比較条件に上げたもの以外で考慮すべきことは以下のとおりです。


・女性の方が骨密度が低いということを考慮した性別のデータ
・年齢層別データ
-骨密度は年齢と共に減少傾向にあることを考慮
-老化と共に動きが緩慢になり、転倒の際にとっさの回避できない

 

下図は、性別の骨密度の年齢による変化を示すグラフ(道南勤医協のホームページからの抜粋)です。これを見れば明らかなように、男性は女性よりも骨密度が高く、且つ女性は40代後半から急激に骨密度が低くなっていることが分ります。これを考慮しないと既述の料理学校の先生のような誤った結論を出すハメになってしまいます。

以上述べてきましたが、単純な比較、相関をみて安易な結論を出すと失敗するということことです。発表された統計を見る我々は、その数字が出た背景、条件を吟味しなければなりません。イギリスの首相ベンジャミン・ディズレーリは、うそには3つあり、嘘、大嘘、そして統計とのこと。弱い論証を支えるために統計(数字、表、グラフ)が使用されることを言い表したものですが、疑似科学の特徴でもあります。

 

統計値を見る際に考慮すべきことで随分評価が違ってきますが、アンケートも同じです。医療機関では患者満足度、民間企業では顧客満足度などの調査(アンケート)を行うことがよくありますが、明日は、このアンケートにつき、書く予定です。
 

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