体調が優れなかったものが、市販薬を飲んだり医師の診察治療を受けていないのに、自然に症状が失せ、治ってしまうことがあります。どの様な因果関係で改善されたのかは分かりませんが、一般に医療の効果には、実際に治療したことによる効果の他、にホーソン効果、ビグマリオン効果、プラセボ(プラシーボ)効果というものがあります。どの様な治療した結果、治ったのかの因果関係(機序)は医師などの専門家に任せておき、過去経験してきた中でいえるホーソン効果、ビグマリオン効果、プラセボ効果につき少し考えてみましょう。


~~~ホーソン効果(Hawthorne effect)~~~
特別な計らいを受けると、いつもより高いパフォーマンスを発揮することを言います。一般的に人は自分に関心を持つ人や期待する人に応えようとする傾向があり、無意識のうちにいつも以上に効率を上げる傾向にあるとされています。簡単に言えば、相手に注目されていると思い込むと能力(パフォーマンス)が向上するというものです。ただし、問題もあります。例えば、患者が新米医師ではなく上位の医師、例えば教授に『どうですか?』などと言われると、あまり変わらないのに『良くなった気がします』などと言ってしまう場合などです。治験の際には十分気を付けなければなりません。


~~~ビグマリオン効果(pygmalion effect)~~~
教師期待効果などとも呼ばれていますが、指導する側の期待によって指導される側の効果(成績)が上がることです。別の言葉で言えば、人は期待されたような成果を出す傾向があるです。相手に期待すると、相手がその期待に応えようとして能力を向上させる現象です。 例えばプロジェクトを編成する際、『君は見どころがあるので、今回のプロジェクトにメンバに選んだ』という話をした凡人レベルの者が、他の有力メンバに伍して成果を出してくれることがあり、病院の統合情報システムの開発をする際に実際に経験しました。
 

ピグマリオン効果とホーソン効果、似たようなもの・・・期待に応えようと思うことで成果を上げることはどちらも同じです。しかし、前者はこちらが(自分が)期待した成果を相手が出すことに対し、後者は他者からの注目を浴びることで自分が成果を出すという違いがあります。

~~~プラセボ効果(placebo effect)~~~
患者に信用されている医師が、その患者に砂糖を新薬と偽って飲ませると、本当に症状が改善されることがあるそうで、これをプラセボ効果と言っています。特に、被験者の期待が大きいと、良い結果を生む場合が報告されています。従って、新薬の効果を確認する際、このプラセボ効果と新薬の効果とを切り離して評価しなければならず、二重盲検をするなど治験の際には十分注意します。プロジェクト進捗におけるプラセボ対策は、技量人望共に優れた人物が投入されたから、このプロジェクトはうまく行くに違いないと思わせるような人材を投入することです。あの人が入ったから大丈夫という気にさせる効果が期待できます。

 

以上が各効果の説明ですが、このうち、プロジェクト管理、人材発掘・育成に直接的に関係するのは、ホーソン効果、ビグマリオン効果です。私は、ある病院で全国初となる、注射など人手を介さないとできない作業を除いた院内全ての業務を一気通貫にシステムで処理する院内業務総合電子化プロジェクト/統合情報システム開発プロジェクトを発足させたことがあります。この時、プロジェクトが発足することを院内に周知し、そのプロジェクトのメンバになってやってみたいと思ってもらうような雰囲気の醸成を図りました。プロジェクトメンバとしては、ある意味でマンネリ化した作業を繰り返す毎日ではなく、刺激が欲しいという気概を持ったスタッフを募りました。優秀でやる気のある人物を一本釣りして集める方法もありますが、公募することにし、グループウェアに下記のような文面で掲載しました。
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当院では、予約業務を主体とする有形無形な院内リソースを総合的にマネジメントするシステムを開発し、日経コンピュータの情報システム大賞を受賞する栄誉に輝いたことがあります。あれから3年経ちましたが、この間にハードウェア、ソフトウェア、通信環境には格段の進歩があり、機能的コスト的に懸案であった電子カルテの開発環境が整ってきました。当院では、この環境の変化を踏まえ、電子カルテを中核とした院内業務の総合的な電子化を図ることにし、プロジェクトを発足させることにしました。

つきましては、院内スタッフからプロジェクトメンバを募ることにします。勉強してみたい、日頃思っている問題点を解決してみたい、アイデアを実現したいという秘めたる熱い思いを持った皆さまの参画を期待します。参画の意向は、上長経由はもちろん、直接私に申し出ても結構です(大いに歓迎)。一緒に取り組みましょう。

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優秀か否か(できるかできないか)については、過去の経験から一定レベルの組織にいる者は、能力においてそれほど差がないいう経験知を持っていますが、コンサル経験豊富なNRIの友人も同じ意見でした。

磨けば光る原石(能力)を持っていることに本人が気付いていない場合もありますが、『やってみたい』という好奇心があり、応募してくるくらいの人物なら磨いて(教育して)戦力になると思ってのことでした。そして、実際そのとおりになりました。

 

以上、ホーソン効果、ビグマリオン効果を意識したわけではありませんが、過去実践してきたことが、ホーソン効果、ビグマリオン効果と呼ばれていることを紹介しました。

 

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