どの様な仕様のシステムを考えているのかを記載した資料をRFP(Request For Proposal)と呼び、これをシステムを開発する複数の会社(SIer)に公開し、提案をもらいますが、システムを開発する際の手順はおおよそ、以下の通りです。

この流れを頭に入れたうえで・・・
システムの開発には、ウオータフォール型とプロトタイプアプローチ型と呼ばれる方式とがあります。前者は、仕様を決める上流工程に始まり、プログラムを作り、仕様通り出来上がっているかをテストする下流工程まで進めていく方式です。基本的に 開発工程が上から下に向かって不可逆に流れるので滝に例えられ、waterfallと呼ばれます。
これに対し、後者は完全な仕様ではない段階で実際に動くプロトタイプを作って機能、操作性をテストし、仕様の追加・変更・削除しながらスパイラル状に完成度を高めていく方式(スパイラルアプローチ)で、基本的に設計する際の条件が変わらないことを前提としたウオータフォールとは対照的です。
 

経済産業省の外郭団体主催のセミナに出席した友人から聞くところによれば、『これからはウオータフォールではなく、スパイラルアプローチ』との基調講演があったそうです。スパイラルアプローチは即ちプロトタイプアプローチのことで、基調講演者がいうような “これから” ではなく、以前から採用されてきた開発方法です。それと共に要求を纏めて公開して応札促すためのRFPの 意味にも変化が出てきました。安定していて先が読めて時代には、仕様をがっちり固めからシステム開発(プログラミング)に取りかかるウオータフォール型のシステム開発が主流で、団塊の世代の我々もその様な教育を受けてきました。

しかし、法改正、技術革新、景気変動、新サービスなど、変化が目まぐるしく、今の延長線上で先の見通しが立たなくなる時代になると、仕様をがっちり固めている間にシステム化要件が変わってくるようになってきました。ということは、ウオータフォール的にがっちり固めた仕様が出来上がった時には、最初に決めた仕様は既に変更しなければならない状態になっている・・・かも知れないということです。
 

開発期間が長い大規模システムになればなるほどその傾向があり、土木・建築のような細部に亘って最終形が決まっている(見えている)ものはともかく、情報システムでは従来の発想でのRFPが作れない時代になってきたのではないかと感じます。従来のRFPの定義とは違うかも知れませんが、RFPという名前や形式にこだわるのではなく、見通しがつく情報があれば、それでかまわないということではないかと思われます。この辺は、土木・建築業界出身者には理解できないことかもしれません。実際にそういう人がいて、混乱させられたクライアントを知っています。

過去そうやってきましたが、1件をのぞき、問題ありませんでした。その1件とはRFPの問題ではなく、パラダイムシフトできない旧態依然とした姿勢が色濃く残る大手SIerに由来する案件でした。仕様通り作れず(作らず)、品質の安定したモノ造りもできなかったのには閉口しました。大手SIerだからと言って、信用できる時代ではなくなったのかもしれません。歴史と伝統があり、パラダイムシフトしにくい大手よりも、知名度はないものの、古びたパラダイムがなく、進取の精神に富む気鋭の新興SIerの方が理解が早いかもしれません。ご参考まで。

 

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