前回、千葉大学病院で起きた人為的(医師)な情報連係ミス、注意力散漫による患者死亡事故につき、同種の原因で起きた慈恵病院、名大病院で起きた事故につき、紹介しました。名大病院の事故の件は以前、割と詳細に調べたことがあるので、本日はこれをブログにします。皆さんにも起こり得ることなので、参考にしてください。なかなか症状が改善されないとき、治療方法、方針がおかしいと感じたとき、担当医が不誠実と感じたときには、セカンドオピニオンを聞きましょう。

《経緯》
①2014年1月、重度の貧血で救急搬送されてきた
②胸、腹部をCTで撮影
③読影した放射線科医が『大腸がんの疑いあり』」と判断
④画像診断報告書を作成
⑤撮影を依頼した医師らは報告書が作成されていたことを知らなかった
(読まなかったという情報もある)
⑥④は見られることなく放置されたため、がんを特定するための精密検査をしなかった
⑦症状が治まったため改善したと判断、男性は退院
⑧退院7ヵ月後の2014年8月、再度体調不良を訴え受診
⑨CT検査を受けた
⑩がんは大腸以外に肝臓やリンパ節などに転移していた(ステージ4)
⑪抗がん剤などで治療をしていたが、昨年9月に自宅で死亡。
 

この病院、過去にも定期的に通院していた患者のCT検査画像に肺がんを疑う陰影が認められていたにも拘わらず、担当医が4年以上も見過ごし、気が付いた後継医師が慌てて治療したものの時既に遅し。その患者は、肺がんのために死亡する事故を起こしています。この経緯を見ると、下記に示すように今回起きたミスとよく似ています。
 

①患者さんは名大病院ではない別の病院で腎がんの手術を行った
②2007年11月、術後フォロー名目で名大病院泌尿器科を受診、通院開始
(術後フォローを手術した病院ではなく名大病院にした理由は不明)
③定期的に外来通院、CT検査も定期的に行う
④通院4年7ヶ月後にCT検査で肺がんを疑う影を発見した
(読影した医師が肺に影があることに気づいた)
⑤過去のCT映像を見返すと、2009年5月から肺の同じ場所に影があることが分かった
⑥数年間見過ごしてきたことが判明
⑦病院の医療の質・安全管理部に報告
⑧肺がん治療を開始
⑨2014年3月、肺がんで死亡
⑩2009年5月の時点で気が付いていたらこの事態は防げた可能性がある
 

この2つの経緯で共通しているのは見過ごしですが、今回の問題は放射線科の医師が読影の結果分かった大腸がんの疑いを記した診断報告書を作ったにも拘わらず、担当医は自分がオーダした検査なのに、その結果を確認しなかった(見なかった)ことです。重度の貧血で救急搬送されてきてCT検査が必要として検査を受けさせた患者なのに!

多忙を極めている中で、常に生死に関わる正解を求められる医師は過酷な職業であることは確かですが、自分がオーダした検査結果をフォローしないという初歩的というか基本動作を怠ったことは、弁明の余地がありません。しかも、同院では直近に類似の事例があったにも拘わらず、気にかけなかったルーズさには呆れます。また、同種の事故を繰り返すこの病院の医療スタッフへの教育、業務プロセス、モラルが問われます。
 

同院の院長が『情報共有不足がもとで患者の死亡事故を繰り返し、申し訳ありません』と謝罪したそうですが、天下の名古屋大学病院がこれでは、どこを信用して治療を受けていいのか分かりません。同病院が今年2月に設置した外部専門家らによる調査委員会は『病院が(報告書の)確認漏れを防ぐ体制を構築していない』と指摘したとのことですが、過去に同じ原因で見逃しによる死亡事故が起きていたのに、今頃?とのそしりは免れません。調査委員会は機能を発揮せず、責任を問われない評論家達の集まりだと評されても仕方がないでしょう。

今回の場合、重度の貧血で救急搬送されてきた原因を追求するための検査なので、検査結果は出来上がり次第、検査をオーダして医師がログインしている画面にポップアップして表示させるべきです。

緊急検査、処置のオーダはすべて作業完了をこのような形で、結果を待っている医師にいち早く、確実に伝える機能を提供するシステムを設計するのが、システム設計者の役目です。

 

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