森友問題で国会提出資料に改ざんがあったという前代未聞の事件がありました。森友の払い下げは14億分の1というあり得ない確率での特別扱いでしたが、加計学園設立の際に使われた獣医師不足データには見落としがありました。安倍首相は『岩盤規制を打ち破る!』などと勇ましいスローガンを掲げていましたが、内実が違うことは常識を持っている大多数の人には分かっていたことです。規制緩和という耳障りの良い言葉が盛んに叫ばれたのは何時の頃からか定かではありませんが、加計学園が計画する岡山理大の獣医学部の新設で俄然クローズアップされました。

一般的には、既得権にしがみつく皆さんと、改善改革を嫌うお役人の阿吽の呼吸もあって、規制緩和という言葉は守旧派を一蹴し、旧習を打ち破って改革するという魔法の言葉になります。これを唱えれば、庶民の味方だ!/、おぉ~仕事しているではないか!などという+の評価になる傾向にあります。しかし、冷静に評価をすることも大切です。例えば、2002年に行われたタクシーの規制緩和を見てみましょう。
①認可制届出制
②最低保持台数の60台10台
を始め、所有からリースに、新車ではなく中古車でもOKになるなど、参入条件が大幅に緩和されました。しかし、我々利用者に目立ったメリットがあったでしょうか?実感できない人がほとんどでしょう。利用しやすくなったはずなのに、グラフに示すように利用客は減少。台数が増えては、歩合制の運転手の給与は下がるしかありません。これでは働く気が失せ、お客の争奪戦となり荒っぽい運転にもなり、事故も増えてしまいました。

要は、数量規制を緩和しただけで、密接に関連する価格規制の緩和をしなかったという近視眼的で片手落ちの緩和だったということです。名ばかりの規制緩和で誰も得しなかったというバカげた話でした。マーケティングの基本的な考察をしていなかったということではないかと思います。

翻って、加計学園の獣医学部新設です。50年以上も新設されなかった理由はなんでしょう?限られたマーケットにこれ以上獣医が増えたら、タクシー業界のようになってしまうという保身、防御のために長年許可してこなかったのでしょうか。データを見てみましょう

安倍さんが声を枯らして必死になって強調する岩盤規制破壊ですが、この数字を見て(理解して)そう思う人はいるでしょうか?しかも、加計学園が計画している160名が全員が公務員獣医師になった(あり得ませんが)としても7717人いる公務員獣医師が2%増えるだけです。これで安倍さんの強調する大規模同時発生のパンデミックな状態に対処できるでしょうか?実際には、公務員獣医師になることを義務付けられているわけではなく、日大の獣医学部の進路割合を見ると安倍さんが絶叫する公務員獣医師のなり手は26%に留まっています

安倍さんのレクチャ原稿を作った官僚は、忖度優先で関係する数字群を俯瞰しなかったのでしょうか。岩盤のように硬い規制を破ることを強調していますが、この数字をみれば効果がないことは、このブログの読者の皆さんにはご理解いただけるのではないでしょうか。

では、何が目的だったのでしょうか?萩生田官房副長官、和泉洋人首相補佐官まで登場しての催促・・・これは規制緩和という美辞麗句を笠に着ての加計学園認可ありきの行動と思った方が自然です。森友学園の特別扱いの確率的おかしさと同じです。上述のように、evidenceとなるデータを分析すると否定のしようがなく空疎な主張であることは明白です。当時の内閣支持率は御用新聞の誉れ高い読売新聞の調査でさえ、12ポイントも落ちました。今回、森友学園の隠ぺい、改ざん問題が出ましたが、さてどれだけ落ちるか?日本の民度が問われていると思って間違いないでしょう。


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