1.はじめに
ITの世界では、パッケージとは“出来合いの業務ソフトウェア”という意味。スーツで言えばいわゆる“吊し”です。適宜選んだのち、ズボンの丈を直すのが一般的で、約30分程度待っていればできあがります。比較的安価で早く着用できるという特長があります。これに対してオーダは、一般的に高く、着られるまでに時間を要します。パッケージは“吊し”に相当し、業務分析から入って一から作る(スクラッチ開発)は、オーダに相当すると言えましょう。どちらが良いのか?単純に費用と時間で比較すれば前者の方に分があることは理解できますが、着心地という肝心の部分に相当する使い勝手は、明らかに後者に軍配があがります。

また、価格的に“万”のオーダのスーツに対し、ソフトウェアパッケージは“千万、億”と桁が違い、一度導入、運用されると後戻りは困難であることを考慮しなければなりません。スーツと違って保守、バージョンアップの費用も見込まなければならないこともあり、慎重な事前検討が必要です。 パッケージの場合、使い始めてから使えないことに気がつく不具合が見つかることが少なからずあります。電子カルテのパッケージでのフェーズ別の満足度調査では以下のようになっています。

価格と導入実績をみて、安易に決めてしまう傾向にありますが、導入実績は文字通り導入した件数のことで、費用に見合う効果をあげているところ、患者、医師、看護師などコメディカルが満足して使っている件数とは違います。ベンダが案内する成功案件は、うまくいっていると言わなければならない立場の人が応対することが多く、うまく回っているとしても、その成功要因が当てはまるかを検討しなければ損をしかねないことに注意が必要です。不具合を慣れでカバーしてしまい、問題を問題と思わなくなっている状態になっていると本物の効果は期待できません。

2.パッケージとは

ソフトウェアのパッケージとは、該当する業務を調査し、必要な機能を洗い出し、その機能をソフトウェアで実現したものですが、できるだけ適用範囲を拡げなければならないという宿命があるため、平均値の仕様で作らざるを得ません。そのため、帯に短し、タスキに長しになるし、痒いところに手が届かず、不足部分を手作業で補い、不要な部分は使わないという、スクラッチ開発ではあり得ないことが起きる。
その代わり、比較的出費が少なく、早期導入ができるというメリットがあると言われています。しかし、そのようなメリットを実感できるでしょうか。パッケージの機能をそのまま使う場合には、少なくても早期導入というメリットを感じることができますが、多かれ少なかれカスタマイズを行い、早期とはいかない場合を多々見受けます。
出費が抑えられるというメリットはどうでしょう。カスタマイズする範囲がパッケージの仕様を決める際、どこまで想定していたかで決まります。想定内の変更であり、簡単な操作で対応可能な場合にはパッケージのメリットを感じることができるかもしれません。例えば、指定できる術式が100種類あった場合、これに5種類の術式を追加する、あるいは用意されている術式を削除したり、術式の名称を変更したいという場合、それが容易にできるようになっているかです。クリニカルパスも同様で、 追加・変更・削除が容易にできるように考えて作られていなければなりません。そうなっているかをパッケージ選択の際に確認しておかなければなりません。再来受付システムの紹介を受けた際に経験しましたが、診察カードを挿入した際に表示されるメッセージの文面を変更するだけなのに、別途料金を取ってベンダが行うということで、唖然としたことを覚えています。メインの機能だけではなく、このような機能まで調べておかないと、安いと思っていたパッケージが高くつくことに要注意です。

3.屋上屋を重ねる

全体構想があり、これに沿って順次投入されるのではなく、必要になった都度、必要になった業務をカバーするパッケージを屋上屋を重ねるように提供してきたのが現状です。技術的なブレークスルーや、システムに期待されるものに大きな変化があった場合には、リセットして作り直すべきですが、継ぎ接ぎのバージョンアップで乗り越えてきたベンダが多いのが現状です。このため、業務種類毎のパッケージ対応にディスプレイが必要になり、狭い診察台に複数台のディスプレイが置かれたり、操作性が不統一であったり、情報の重複が発生したり、障害発生時の対応に時間を要するなどの多くの問題を抱えることになりました。

安易なパッケージの導入で首を絞めないよう、スクラッチ開発を含む十分な検討をしましょう。

 

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