静かなふたりの時間 10
夜、多少のお化粧をして家を出た。
約束の飲み屋は公園を抜けた先だ。
けっこう家から遠いけども、歩いていくしかないや。
車や自転車だと飲酒運転になっちゃうしねぇ。
春は近いがまだまだ寒い。
空の星をみあげれば、オリオン座がキレイに輝いてた。
そういえば小学生の頃、学校の図書室で星座の神話の本よく読んだなぁ。
あまりにも神話にはまりすぎて、星座見たさに父さんに天体望遠鏡を買ってもらったっけ。
あの頃いろいろな星座を覚えたなぁ。
カシオペヤ座やアンドロメダ座…
プレアデス星団があるおうし座が好きでよく探したっけな。
でも買ってもらった天体望遠鏡は星はあまりよく見えなくて、おもに月面専用だったよなぁ。
そうそう、のぶ連れ出して夜の海に行った、行った。
父さんも一緒だったなぁ。
3人で天体望遠鏡覗き込んで月しか見えない、て笑ったっけ。
あぁ…なつかしい。
夜の公園も案外いいもんだ。
都会だと女ひとりで歩くのはこわいけども、田舎だしな。
変な人もでないだろう。
てか、でたっていう話すらきかないし。
夜の散歩と思えば、ちと遠い飲み屋までの道も楽しいもんだ。
海岸からの潮風は冷たいけども気持ちいいし。
なんで夜になるとこんなに海の匂いってわかるんだろか。
不思議。
あれ? 今朝座ってたベンチに人影が…
おばけ? なわけないよなぁ。
こわい感じしないし。
近くに銭湯あるからその帰りに涼んでる、とか、かな?
ま、いいや。
無視して通りすぎるだけだし。
「遅い」
「ぁ、のぶ?」
「ん」
…人影って、のぶか。
急に声出すから驚いた。
「あんたよくそんな暗がりから私だってわかったね。
こっちは人が座ってるて思うだけで、ぜんぜん気づかなかったのに」
「歩き方でわかる」
歩き方ねぇ…
まぁ男子みたいなガサツな歩き方だとはよくいわれるけども…それだけでわかるもんだろか。
「そだ、のぶ。
カエちゃんは? ちゃんと誘った?」
「今日は無理だってさ。
真由によろしくって」
「そっか…カエちゃんこれないのかぁ。
残念」
「ん」
「で、のぶはここでなにしてるん?
さっさと飲み屋いけばいいのに」
「待った」
「私を?」
「ん」
「別にいいのに」
「一応、女だし」
「そこ、一応はいらない。
でもまぁ、ありがとう」
のぶが待っててくれるとは思わなかった。
でもさ、どうせ待つくらいなら家に迎えにこいよ、て感じ。
待っててもらってなんなんだけどもさ。
てか、ひとりで行けるから待たなくても良かったのになぁ。
「あーそうだ、のぶ覚えてる?
子供の頃さ、ここの海岸へ星見にきたことあるの?」
「ん」
「あの時さ、月しか見えない天体望遠鏡でさー
私とのぶと父さんの3人で大笑いしたよねぇ~」
「ん。
でも月キレイだった」
「うん、たしかに。
月面あんなはっきり見えるなんておもわなかったしね」
「ん」
あの頃はのぶ今なんかよりずっと小さい背だったから、父さんがのぶ抱えて見せてたな、望遠鏡。
のぶが小2か小3かなぁ、一緒に来たの。
そういやぁ父さん、のぶを可愛がってたっけ。
うちは姉妹だけだから、男の子欲しかった父さんはのぶを手なずけようとしてたの覚えてる。
休日に自分が入ってる野球にのぶも連れてったり、違う地区なのにのぶをうちの地区の祭りに参加させて太鼓叩かせたりしてたっけな。
はたから見たらもう親子だったな、のぶと父さん。
男同士仲良くやってたように思う。
家じゃ女3人に男1人の図式だったし、のぶが遊びに来てよく喜んでたのは父さんが一番だったかも。
もし父さんが生きてたら、今ののぶとお酒飲みたかっただろうなぁ。
私とも酒飲みたい、て言ってたし。
姉ちゃんはさっさと結婚しちゃったし、私は東京行っちゃったし…
うちらが成人した後の父さん、きっと寂しかっただろうなぁ。
「のぶ、父さんいたらさ…
きっとのぶとお酒飲みたかったと思うよ」
「うむ。
でもオジサンとはよく飲んでたし」
「えっ、まじで?」
「ん」
「うそー、そうなの?
知らなかった…」
「ん」
「それって私が東京に行ってからの話しだよね…
て、それしかないか」
「ん」
「なんだ、そうか…
あんたたちずっと仲良かったんだ」
「ん。
オジサンはオレにとっては父親みたいな存在だったし」
「そっか~
そうだよねぇ…父さん、あんたかわいがってたもんねぇ」
そういえば私がとっくに卒業してても父さんは中学とか高校とかの部活の遠征のバスの運転手に行ってた、て母さんが言ってたっけ。
よくよく考えれば、のぶが中学、高校にいた時期と合うじゃんか。
そっかー、のぶのためにドライバーのボランティアしてたのかぁ。
思い起こせばなんとやら、だね、こりゃ。
ただの若いもん好きで学校行事に参加してるんだと思ってたよ。
父さんも母さんも学生みるたび、「どこの子だい?」て興味津々な顔で声かける性格だし。
「のぶ、あんた父さんにすごく気に入られてたんだねぇ、なんかうらやましい」
「ん。
でもオジサン、真由のことを一番気にかけてたよ、いつもいつも」
「へ? そうなの?」
「ん。
飲みにいくたんびに真由の話がでてた」
「そうなんだ」
…父さんに私、なにも親孝行しなかったな。
反対押し切って東京でちゃったし。
行ったら行ったであまり帰らなかったし。
連絡してもひとことふたことで電話切っちゃってたし…
父さんがいた時はなんとも思わなかったことがなんだかすごく愛おしく感じてくる。
しとけばよかったことがたくさん思い浮かんできてしまう。
自分の親が早く死ぬなんてそうそう思わないもの。
うん、思わなかったもの…
父さん…
なんだか急に会いたくなってきたな。
夢でもいいから会えるといいな。
明日、お墓参り行こうかな…
仏壇に手すら合わせてなかったし。
本音言うと、今でも父さんの死を受け入れたくない自分がいたりもする。
こうゆうとこ、弱いな…私。
見たくないもの見ないようにしたり、苦手なこと避けてしまったり。
ちょっと寂しい気持ちになってきた。
飲み会行くのなんだかやめたくなってきた。
のぶがとなりにいなかったらたぶん、帰ってちゃってるね、きっと。
どうも私の悪いクセで、しんみりとしたこと考え出すとそのままずるずる気持もふさぎ込んでしまうとこがある。
根っからの気分屋、てことなのだろう。
…なおさなきゃ、これ。
あまりよくない性格だ。
約束の飲み屋は公園を抜けた先だ。
けっこう家から遠いけども、歩いていくしかないや。
車や自転車だと飲酒運転になっちゃうしねぇ。
春は近いがまだまだ寒い。
空の星をみあげれば、オリオン座がキレイに輝いてた。
そういえば小学生の頃、学校の図書室で星座の神話の本よく読んだなぁ。
あまりにも神話にはまりすぎて、星座見たさに父さんに天体望遠鏡を買ってもらったっけ。
あの頃いろいろな星座を覚えたなぁ。
カシオペヤ座やアンドロメダ座…
プレアデス星団があるおうし座が好きでよく探したっけな。
でも買ってもらった天体望遠鏡は星はあまりよく見えなくて、おもに月面専用だったよなぁ。
そうそう、のぶ連れ出して夜の海に行った、行った。
父さんも一緒だったなぁ。
3人で天体望遠鏡覗き込んで月しか見えない、て笑ったっけ。
あぁ…なつかしい。
夜の公園も案外いいもんだ。
都会だと女ひとりで歩くのはこわいけども、田舎だしな。
変な人もでないだろう。
てか、でたっていう話すらきかないし。
夜の散歩と思えば、ちと遠い飲み屋までの道も楽しいもんだ。
海岸からの潮風は冷たいけども気持ちいいし。
なんで夜になるとこんなに海の匂いってわかるんだろか。
不思議。
あれ? 今朝座ってたベンチに人影が…
おばけ? なわけないよなぁ。
こわい感じしないし。
近くに銭湯あるからその帰りに涼んでる、とか、かな?
ま、いいや。
無視して通りすぎるだけだし。
「遅い」
「ぁ、のぶ?」
「ん」
…人影って、のぶか。
急に声出すから驚いた。
「あんたよくそんな暗がりから私だってわかったね。
こっちは人が座ってるて思うだけで、ぜんぜん気づかなかったのに」
「歩き方でわかる」
歩き方ねぇ…
まぁ男子みたいなガサツな歩き方だとはよくいわれるけども…それだけでわかるもんだろか。
「そだ、のぶ。
カエちゃんは? ちゃんと誘った?」
「今日は無理だってさ。
真由によろしくって」
「そっか…カエちゃんこれないのかぁ。
残念」
「ん」
「で、のぶはここでなにしてるん?
さっさと飲み屋いけばいいのに」
「待った」
「私を?」
「ん」
「別にいいのに」
「一応、女だし」
「そこ、一応はいらない。
でもまぁ、ありがとう」
のぶが待っててくれるとは思わなかった。
でもさ、どうせ待つくらいなら家に迎えにこいよ、て感じ。
待っててもらってなんなんだけどもさ。
てか、ひとりで行けるから待たなくても良かったのになぁ。
「あーそうだ、のぶ覚えてる?
子供の頃さ、ここの海岸へ星見にきたことあるの?」
「ん」
「あの時さ、月しか見えない天体望遠鏡でさー
私とのぶと父さんの3人で大笑いしたよねぇ~」
「ん。
でも月キレイだった」
「うん、たしかに。
月面あんなはっきり見えるなんておもわなかったしね」
「ん」
あの頃はのぶ今なんかよりずっと小さい背だったから、父さんがのぶ抱えて見せてたな、望遠鏡。
のぶが小2か小3かなぁ、一緒に来たの。
そういやぁ父さん、のぶを可愛がってたっけ。
うちは姉妹だけだから、男の子欲しかった父さんはのぶを手なずけようとしてたの覚えてる。
休日に自分が入ってる野球にのぶも連れてったり、違う地区なのにのぶをうちの地区の祭りに参加させて太鼓叩かせたりしてたっけな。
はたから見たらもう親子だったな、のぶと父さん。
男同士仲良くやってたように思う。
家じゃ女3人に男1人の図式だったし、のぶが遊びに来てよく喜んでたのは父さんが一番だったかも。
もし父さんが生きてたら、今ののぶとお酒飲みたかっただろうなぁ。
私とも酒飲みたい、て言ってたし。
姉ちゃんはさっさと結婚しちゃったし、私は東京行っちゃったし…
うちらが成人した後の父さん、きっと寂しかっただろうなぁ。
「のぶ、父さんいたらさ…
きっとのぶとお酒飲みたかったと思うよ」
「うむ。
でもオジサンとはよく飲んでたし」
「えっ、まじで?」
「ん」
「うそー、そうなの?
知らなかった…」
「ん」
「それって私が東京に行ってからの話しだよね…
て、それしかないか」
「ん」
「なんだ、そうか…
あんたたちずっと仲良かったんだ」
「ん。
オジサンはオレにとっては父親みたいな存在だったし」
「そっか~
そうだよねぇ…父さん、あんたかわいがってたもんねぇ」
そういえば私がとっくに卒業してても父さんは中学とか高校とかの部活の遠征のバスの運転手に行ってた、て母さんが言ってたっけ。
よくよく考えれば、のぶが中学、高校にいた時期と合うじゃんか。
そっかー、のぶのためにドライバーのボランティアしてたのかぁ。
思い起こせばなんとやら、だね、こりゃ。
ただの若いもん好きで学校行事に参加してるんだと思ってたよ。
父さんも母さんも学生みるたび、「どこの子だい?」て興味津々な顔で声かける性格だし。
「のぶ、あんた父さんにすごく気に入られてたんだねぇ、なんかうらやましい」
「ん。
でもオジサン、真由のことを一番気にかけてたよ、いつもいつも」
「へ? そうなの?」
「ん。
飲みにいくたんびに真由の話がでてた」
「そうなんだ」
…父さんに私、なにも親孝行しなかったな。
反対押し切って東京でちゃったし。
行ったら行ったであまり帰らなかったし。
連絡してもひとことふたことで電話切っちゃってたし…
父さんがいた時はなんとも思わなかったことがなんだかすごく愛おしく感じてくる。
しとけばよかったことがたくさん思い浮かんできてしまう。
自分の親が早く死ぬなんてそうそう思わないもの。
うん、思わなかったもの…
父さん…
なんだか急に会いたくなってきたな。
夢でもいいから会えるといいな。
明日、お墓参り行こうかな…
仏壇に手すら合わせてなかったし。
本音言うと、今でも父さんの死を受け入れたくない自分がいたりもする。
こうゆうとこ、弱いな…私。
見たくないもの見ないようにしたり、苦手なこと避けてしまったり。
ちょっと寂しい気持ちになってきた。
飲み会行くのなんだかやめたくなってきた。
のぶがとなりにいなかったらたぶん、帰ってちゃってるね、きっと。
どうも私の悪いクセで、しんみりとしたこと考え出すとそのままずるずる気持もふさぎ込んでしまうとこがある。
根っからの気分屋、てことなのだろう。
…なおさなきゃ、これ。
あまりよくない性格だ。