最近旅づいている自分は、よくよくいいタイミングで興味深いものに出会うことが多くなっている。

先日、松江の小泉八雲記念館が素晴らしく、その近くにあった小泉八雲旧邸にも立ち寄る。雨は土砂降り。外を歩くよりも少し家の中で休みたかったのが正直なところである。

ただ、その立ち寄った家の庭が素晴らしい。こじんまりとした日本人的な庭園で、様々な樹や花が植えられている。自分好みの庭園。新緑の季節、そぼ降る雨に緑や花の色彩が鮮やかさを増していく。

 

いやあ、ここは穴場だ。庭を見ながらしばし胡坐をかいて休んでいると、奥から蛙が2匹鳴き始める。

雨は強くなり、蛙の鳴き声が2匹から3匹に、3匹から5匹へ。まるで競っているかのように。カスタネットを連打しているような激しさで、高音から低音のパートを担当する蛙たちが鳴いている。合唱を聴かせてもらっているような感じがする。風流とはこのことだ。

 

庭を見るともなしに眺めていると、蛙が唐突に鳴き止んで、3分20秒のコンサートは急に終了した。庭は雨の音だけを残して、静けさを取り戻す。5匹同時に鳴き止むだろうか。

まるで夢の世界にいるだ。そういえば、小泉八雲は蛙が好きだったという話を思い出した。その繋がりを思い出すと、ふと怪談的なタイミングで蛙が泣き出したのが不思議な世界に迷い込んだかのよう。ちょっとだけ背筋がすっとする。

 

先日紹介した月照寺でも、池から蛙の鳴き声がタイミングよく聞こえ始めた。

良くも悪くもこうしたタイミングが、旅の時にはよく起こる。嬉しい偶然、小さな奇跡は少しハッピーになれるもの。大体周りに誰もいず、一人でいる時におこるんですよねえ。不思議だな。