最近は毎月一回旅に出ている。旅慣れしてきたのか、いい意味でルーズになってきたのか、直感が働くようになってきたのか、前日に「ここ立ち寄ってみたい」と予定を変更することがよくあるようになってきた。

以前はスタンプラリー的に行きたい場所を決めて回ることが多かったから、大きな変化だ。

 

松江に滞在したある日も、「お抹茶と庭が見たい」とふと思い立ち、松江でそれを同時に味わえる月照寺を訪れた。松江を訪れる前には一ミリも考えなかった場所である。

松江藩主の菩提寺である月照寺。ここは素晴らしい場所だった。

 

午前中の土砂降り後の午後(雨男なので旅の雨は慣れっこ)、素晴らしく澄んだ天気の中、庭を散策する。蓮が雨に濡れてきらきらと輝いている。墓に向かっていくと、蓮に載っていた大きめの蛙が飛び込み、その都度びくっとする。「古池や蛙飛び込む水の音」と詠んだ松尾芭蕉の気持ちにはなれない時間に苦笑い。

 

広々とした庭園に代々藩主の大きな墓石がある。それぞれの藩主の特徴も手書きのパンフレットに書かれていて、人柄を思い浮かべながら、過去に思いを馳せる。蛙の鳴き声、トンビやホトトギスなど鳥が何種類も鳴いている。頭上には雲が駆け足で流れて、太陽が照ったり隠れたり。その色彩のコントラストに、うっとりとたびたび佇む。

 

自然の中にいるのはとても心地よい。苔むすお墓は高野山奥之院を思い出させる。

すべての藩主のお墓を拝み、本堂で庭と抹茶を楽しむ。大きな庭園で精神をのびのびと広げて、こじんまりとした庭で抹茶と和菓子を楽しむ。

水の流れる音、風が葉を揺らす音を聞きながらうとうとと昼寝をする贅沢さ。近くの学校からチャイムが聞こえる平日に、自分はこんな時間をしている。

なんと贅沢なことだろうか。

 

行きたいところをしっかり決めるのも大事だけれど、ここだ!と思ったところにしっかりと立ち止まれることはやっぱり大事なこと。今回の旅では、それを大事にすることができて、いい出会いをいくつも出来た。

余白を作ったからこそ、真空を埋めるようにいろいろなものが入ってくる。

月照寺との出会いもそうだ。直感を感じたら、体を素直に動かすこと。だんだんそのリズムが自分の者になってきているのが好ましい。

松江に行かれる方。メジャーな場所ではないと思いますが、月照寺、かなりおススメです。