八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

見学、入門随時受付中!
まずはご連絡ください。

休日の昼食は大抵外食する事にしている。

行く店は、その日食べたい物で決める。


行きつけの店は、大抵決まっているが時には、入った事の無い店で食べるのもちょっとした気分転換になる。


2年位前にある寺の山門近くにある小さな飯屋に入った。

昼も大分過ぎていた事もあって客は、少なく三つあるテーブル席の一つに高校生が3人グデェと座っているだけだった。


カウンター席には誰も居なかったのでおれは、カウンター席の一番奥の席に座った。


カウンターの向こうの厨房には、この店の女将が一人で料理を作っていた。


おれは、牛丼を注文してコップの水を飲んでいた。


次第にテーブル席の3人が騒がしくなって来た。

3人の内の1人がタバコを吸い出した。 

店内の空気と雰囲気が、たった1本のタバコで一気に淀んで来た。


その時おれの注文した牛丼が前に置かれた。

食べて見るとなかなかに美味い。

肉は米国産のバラ肉のようだが、甘さと辛さのバランスが良く玉葱の旨味も絶妙にマッチして飯がぐいぐい進む。

「美味いなぁ」とおれが小さな声で呟いた時 店の前に大きな排気音とともに1台のバイクが停まりそれに乗っていた2人が店内に入って来た。


この2人は、制服は着てなかったがテーブル席の3人の仲間のようで今度は5人になった奴らは余計に騒々しくなった。

ギャアギャア意味も無く喚いている奴や店内をウロチョロすら奴も居る。


おれは、こんな状況には慣れている。

おれの高校の頃の教室は調度こんな感じでもっと騒がしくもっと危険なムードに満ちていた。

そんな中おれは、いつも一人で黙々と飯を食っていた。

だから おれは、こんな状況で食事するのが何気に懐かしかった。

ただし 連中が、おれの食事中何か仕掛けて来たら透かさず対応する心構えは出来ている。

野良犬の食事の邪魔は、大怪我の元と言う事だ。


そう言う気配を発しているおれの間近には仲間同士で騒いでいるような奴らは近づかない。

恐らく本能的に危険を察知しているのだろう。


やがて牛丼を完食して女将に金を払う時「お騒がせしてすみません」と女将が頭を下げた。

「いや 別にいいですよ」とおれは言ってから「もしかして奴らの中の1人はここの子じゃないですか?」と聞いた。

女将は「申し訳ありません でもどうして分かったんですか?」と驚いたように言った。

「あの中の1人の顔が何処か女将さんに似てるような気がしただけです」とおれが言うと女将は「そうですか」と目線を落として動かなくなった。


そんな女将に背を向けながら「美味かったからまた来ます」と言うと女将が我に返ったように「ありがとうございます」と礼を言った。


そして店の引戸を開けて外に出たおれに「ありがとうございます!」と女将がもう一度大きな声で言った。