八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

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北海道犬アクを飼っていた頃あいつを連れてよく山に行った。

猟犬の血を受け継いでいるアクにとって町中をリードを着けて散歩するだけでは、運動不足だと思ったのでたまに山に連れて行くのが習慣になっていた。


ある日 珍しく一家全員揃ってアクを山に連れて行った。

その日は親父が、京丹波の方にアクの喜びそうな所があると言うので車の運転を親父に任せて出掛けた。


確かにその山は、人気は無く雑木林や谷川も流れていてアクも走り回って嬉しそうにしていた。


やがて夕方になり帰路に着いたが運転している親父が「おかしいなぁ」と

首を傾げているのでどうしたのか尋ねると「こんな所来た覚えが無い ここ何処かな?」と言う。

おれが「それって平たく言えば道に迷ったって事か?」と聞くと親父は黙って頷いた。


季節は秋で夕方になりそろそろ薄暗くなり始めている。

こんな山道で夜になったら益々帰り道が分からなくなる。

「おいおいこんな所で夜明かしか?」とおれが言うと姉が「ここはヤバい気配を感じる 呑気に夜明かしする所じゃない」と低い声で言った。

それについては、おれも姉と同意見だった。


お袋が「とにかく諦めずに冷静に帰り道を探そう」と言ったので全員で帰り道を考えた結果とりあえず今走っている道を引き返す事になったが道が狭くてUターン出来ないので少し広い場所までそのまま進んで行った。


Uターン出来る場所を探したがなかなか見付からず「まいったなぁ」と親父が呟いた時道路の右前方に小さな店を発見した。

どうやら焼肉屋のようだ。

「こんな山奥に焼肉屋か?」「誰がこんな所まで焼肉を食べに来るんだ?」

おれ達一家全員が、そんな疑問を抱いた。


今考えると看板も出ていないのに何故それが焼肉屋だと思ったのかそれも妙な話だが窓から見える店内の様子が何と無く焼肉屋のようだった。


とにかく その時は、深く考えている余裕が無く店の小さな駐車場に入ってUターンする為に親父は一旦車を駐車場に前から突っ込んだ。


駐車場に入ると尚更異様な気配が濃くなった。



後編に続く