ユーミンvs渡辺真知子(ユーミン・コウタロー リレーインタビューより) | Dear Miss M

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マチコ・デラックス・・・失礼!間違った。マチコ・プレミアム「Machiko Premium 1975~1982」 「Machiko Premium1983~2011」の発売を記念して、愛すべき歌姫「渡辺真知子」へのオマージュを込めて・・。チョットだけ辛口のレビューも、それは愛情の証しとお許しください。




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 これは1981、2年頃、週刊FMに掲載されたもので、ユーミン(松任谷由実)が様々なゲストを迎えてインタビューする形式の連載もの。

インタビューといっても、2ページ弱とかなり要約されたものだが、内容的にはユーミンからヒット至上主義のレコード会社(CBSソニー、当時)への痛烈な批判コメントもあるなど興味深い。

因みに、ブログタイトルの「vs」は当方が勝手に付けたもので、このインタビューの内容自体は『ユーミンから見た渡辺真知子』という視点で、そのアマチュアからプロデビューへの過程、売り出し方、といったものが語られている。作品自体への言及はほぼ無い。



 そもそも2人が親しく話すのはこの対談が初めてとのことだが、意外なことにユーミンは渡辺真知子がアマチュア時代の頃からの活動を知っており、アマチュア時代からプロデビューにかけての変貌ぶりに興味を持っていたと言う。その理由は渡辺真知子が「あの」CBSソニーからデビューしたから、というのもあると語る。


 ユーミン曰く『良いとか悪いとかではないが、CBSソニーはその驚嘆すべきシステムの総力をかけて取り組めば、絶対に「ヒット曲をとばせちゃう」という命題をシビアに追求している会社であったし、それがまた現実に着々と効果をあげていたことでもあったから・・・データ、ノウハウ、コンセプト・・・あらゆる成功のコンベアに乗っかって、そんなふうに「ヒット」してしまったら、すごく困ってしまうのは本人なのでは?そういう問題意識を働かせながら変貌していく「渡辺真知子」を私は気にしていたのだと思う。(以上、引用)


 さすがユーミン、当たり障りのないつまらないインタビューにしないところが面目躍如といったところか、まさに「核心」そのものを突いている。システムとしてヒット曲を量産するレコード会社への批判であるとともに、その状況を選択した渡辺真知子自身への批判、皮肉とも取れる。



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 確かに、渡辺真知子のデビュープロモーションは綿密に計算され、「売る」ためのノウハウも金も時間も注ぎ込まれたものだった。渡辺真知子自身が最初に創った原形を(恐らく)ほとんど留めていないほど手直しをした(させられた)デビュー曲「迷い道」こそがその象徴のように感じられる。

 

 ただ、この大がかりな売り出し方がその後の落ち込みの原因だとしても、見込みが甘かったと責めるのは酷だろう。売れなくてもいいと思ってレコードを出すレコード会社もミュージシャンもいないはずだ。最初は売れなくても徐々に売れて来るのが理想・・・などというのは結果論だ。売れない新人歌手に何枚もレコードを作らせるほど甘くは無いだろう。つまり、あの時点でCBSソニーに身を任せる決意したということはCBSソニーの「売れる曲を作る」システムの中に組み込まれることを受け入れたともいえる。それを本人がどれほど自覚していたかは分らないが、このインタビュー冒頭で、レコード会社のイメージづくりに対する抵抗について聞かれ、『いえ、「とにかく全部任せてみなさい」というのに対して、こちらも賭けてみようというのがあったし。だから自分の体をただ預けて、ファッションもメークも全てやってもらおうと。プロというものがどういうものか見てみたかったんです。』 と答えているがこれは明らかに、自分自身を納得させるための(やむを得ない)強がりに聞える。ヤマハで果たせなかったデビューという夢がやっと叶えられるという状況で、レコード会社のイメージづくり、コンセプト、立ち居振る舞いに至るまで、窮屈な制約を受け入れざるを得ないことを自分自身に言い聞かせ、納得させているコメントだ。


 結果、手に入れた充分過ぎる評価とレコードの売上。いきなりあまりにも売れてしまったことが不運だと言えなくもないが、前述したように売れるタイミングとか、売れ行きをコントロールすることは不可能だ。もはや、それは

運命だったとしか言いようが無い。


 ユーミンは渡辺真知子を、シンガーソングライターとしてはこのような売り方の「人柱」と評しているが、まさに的を射ている。レコード会社にとっては、セールス戦略の成功とその後の失速という2点において、特に失敗のケースの貴重なサンプルとなったことに違いないというのは言い過ぎだろうか。


 対談後のコメントとしてユーミンは渡辺真知子に対し「(レコード会社の)単発的、ノルマ主義の最前線で潰されずによく頑張り通した」とエールを送っている。実際はこの(1982年ごろ)以降も長らく苦悩の低迷期が続くのだが、当時はそんな未来を知る由もない。ただ、20年、30年と歌い続けてきた渡辺真知子のモチベーションを支えたのは、結局彼女の歌に対する強力な「執念」「執着心」に尽きるのではないだろうか?『後ろを向いている人を振り向かせるのがプロの歌手』と言い切ったデビューの頃から、いやもっと前のアマチュア時代から、持ち続けている「歌うこと」への人一倍強い執着へ、エールを送ろうか。