今月20日、歌手で俳優の西郷輝彦さんが75歳で亡くなられました。

 

 

 

ネットニュースで訃報に接した時は、あまりに突然のことで驚愕してしまいました。中学生の時に再放送を観て時代劇にのめり込んだ私にとって、西郷さんは大変思い出深い俳優さんの1人です。日が経つにつれて、遠い昔の思い出が蘇ってきます。

 

 

西郷さんの代表作は数多くありますが、中でも時代劇で初めて主演を務めた「江戸を斬る」(TBS系列)は西郷さんを語る上で外すことの出来ない作品の1つでしょう。

私は偶然にもこの作品の再放送を観て、初めて西郷さんを知ったのです。

 

西郷さんは「江戸を斬る」第2シリーズから第6シリーズまで5作に渡って主役を務め北町奉行・遠山金四郎を演じました。お白洲で桜吹雪の刺青を見せることで知られる「遠山の金さん」(テレビ朝日系列)と主人公は同じですが、個人的には先に「江戸を斬る」を観たこともあって、金さんと言えば西郷さんの印象が強いです。

 

 

「江戸を斬る」は先述した「遠山の金さん」との差別化の為もあって、初めのうちは桜吹雪を見せる場面が殆どありません。TBSが誇る名物時代劇である「水戸黄門」や「大岡越前」と同じ「ナショナル劇場」の枠で放送されていましたから、TBSらしいホームドラマの要素を取り入れ、温かみのある作品に仕上がっています。

 

最大の魅力は、何と言っても豪華な共演者です。金四郎の妻となるおゆき(松坂慶子さん)を始め、森繁久彌さん・春川ますみさん・松山英太郎さん・成田三樹夫さん・金田龍之介さんなどなど、時代劇を彩った名優が目白押しでした。当時中学生だった私は時代劇にあまり詳しくなかったこともあって、この作品を視聴したからこそ出会えた役者さんが数多くいます。夕方の再放送を毎日楽しみにしていました。

 

中でも第2シリーズで敵役として登場した金田龍之介さんの迫力満点の演技は、それまでの俳優さんとは一線を画した怪演で、大変印象に残っています。演じていたのは実在した南町奉行・鳥居耀蔵でしたが、やがて私はこの人物について色々と調べるようになり、思わぬところで大きな縁をもたらすきっかけになりました。そういった意味でも忘れることの出来ない作品なのです。

 

また、第4シリーズでは、世界に誇る時代劇スター・三船敏郎さんが千葉周作役で特別出演しました。僅か1話だけの登場でしたが、私は初めて観る三船さんの演技に圧倒されてしまい、その存在感とカッコ良さに衝撃を受けました。以来、三船さんの大ファンとなり、出演している映像作品を好んで視聴するようになりました。

 

そして勿論、西郷さんのファンにもなりました。西郷さんの声と醸し出す雰囲気が大好きで、出演していた時代劇作品も色々と探しては視聴しました。西郷さんは、多くの時代劇と私を出会わせてくれた恩人とも言うべき俳優です。

 

 

そのようなわけで、私は俳優という面から西郷さんの魅力を知ったわけですが、同時に歌手としての西郷さんにも惹かれるようになりました。「江戸を斬る」の主題歌である「ねがい」(作詞:山上路夫・作曲:いずみたく)は珠玉の作品です。

 

西郷さんと言えば、舟木一夫さん・橋幸夫さんと共に「御三家」と呼ばれていたことで知られています。もう10年以上前のことですが、西郷さんと「新・御三家」の野口五郎さんが共演した番組が放送されたことがありました。その中で、「星娘」や「君だけを」「星のフラメンコ」といった西郷さんの名曲を聞くことができたことも忘れられません。個人的には2011年に発売された「オリオン急行」がお気に入りです。

 

 

振り返ると語り尽くせないほどの思い出がありますが、テレビ画面を通して西郷さんと出会えたことに心から感謝したいと思います。

 

 

最後に。

 

西郷さんの御冥福を心からお祈り申し上げます。